Antaa Academia_第5期DAY1開催レポート「イシューからはじめよ」
こんにちは、Antaa運営です!先月7月23日、Antaa Academia第5期の記念すべきDay1が開催されました。本記事では、当日の講義内容をレポートにしてお届けします。
「前回の内容をおさらいしたい!」というアカデミア生はもちろん「Antaa Academiaではどんなことが学べるの?」という方は、本記事を参考にしてくださいね。
Antaa Academia について
Antaa Academiaは、次代の医療機関経営/運営の中核を担うマネジメント層の育成を目的に、約半年間にわたり医師向けのマネジメント•リーダーシップに関する講義をお届けするオンライン学習プログラムです。
環境や立場によって、組織を率いたり経営に携わったりする医師の方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、「どのようにチームを引っ張ればいいのか」「どのように考え意思決定し、どう振る舞えばいいのか」一人で悩むこともあるのではないでしょうか?
Antaa Academiaは、こうした悩みを抱える医師同士で集まり、共に学び、共に成長する機会を提供しています。
経営マネジメントの全体像
講義の内容に入る前に、まず『経営/マネジメントの全体像』のお話をします。経営にはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)が大切ですが、それらを支える基本骨格として、会計・財務・診療報酬・医療制度に関する知識、分析・ファシリテーションするスキル等が必要です。そしてその上に「戦略/ビジネスモデル」「マネジメント」があります。
「戦略/ビジネスモデル」とは、MVVを実現するための道すじ、市場におけるポジションの取り方、提供する付加価値等を決めるための部分。一方「マネジメント」は、それらをどう戦略・実行するかというHow Toの部分です。Antaa Academiaでは、後者の「マネジメント」を医療機関に焦点を当ててお話していきます。
医療経営に置き換える「イシューからはじめよ」
それでは、本講義の課題図書『イシューからはじめよ』を解説していきます。イシューとは著書によると、以下2つを満たすものだと定義しています。
<イシューの定義>
2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
根本に関わる、もしくは白黒はっきりしていない問題
課題の答えを出す必要性の高さは「イシュー度」と呼ばれます。では「問題」と「イシュー」の違いは一体何でしょうか?この2つはとても似ていますが、異なる性質を持ちます。前者は今困っていることであり、後者は解決すべき具体的で本質的なことです。イシューから始める考え方の例では、以下が挙げられます。
<イシューから始める考え方の例>
「問題を解く」より「問題を見極める」
「解の質をあげる」より「イシューの質を上げる」
「知れば知るほど知恵が沸く」より「知りすぎるとバカになる」
「一つ一つ早くやる」より「やることを削る」
「数字の桁数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
問題を問題として捉えたままだと、よい解決に結びつかないことが多いです。課題解決のためには、まず問題をイシューに転換する必要があります。
続いて、医療現場で想定される課題を「問題」と「イシュー」で考えてましょう。例えば、退職希望者に対して本人を説得するとか、繁忙期に人を増員して解決しようとすることはコインの裏表の対応と呼ばれます。一時的に解決できても、根本的な解決とはなりません。イシューとして捉えることは、退職希望者を前に、本人や組織のコミュニケーションの改善を検討したり、繁忙期の場合も増員だけでなく業務効率化やシフトの配置、教育などと発想を切り替えたりします。
踏み込んではならない犬の道
じつは、世の中にある「問題かもしれない」とされるものの多くは、ビジネス・研究所で本当に取り組むべき必要のある問題ではない、と言われています。世の中で問題とされるものの総数を100とすれば、本当に白黒はっきりさせるべき問題は、せいぜい2,3個程度だそうです。そのため、問題の解決策をいきなり考えようとするのではなく、そもそもの問題設定が正しいかをまずは考えるべきです。それが、イシューからはじめる考え方です。
イシューからはじめる考え方をしない場合、たちまち犬の道に踏み込んでしまうでしょう。
ここでは、医療やマネジメントにおける犬の道度の高い対応をまとめていますので、日々の行動を振り返ってみて、犬の道度が高くなっていないか確認されてみてください。
イシューを活用して、組織マネジメントに活かす
では、イシューを特定するためにはどのようにアプローチすればいいのでしょうか。本の中では、一次情報に触れて、基本情報をスキャンすると書かれています。また情報を集め過ぎない・知り過ぎないことも重要です。以下は、医療経営に置き換えた場合のイシュー特定のためのアプローチ方法です。
続いて、イシューの特定方法をご紹介します。まずイシューを考える上では、『MECE(ミーシー)』というフレームワークに基づいて考察するとよいでしょう。MECEとは、「相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」を意味する言葉で、要するに「漏れなく・ダブりなく」という意味です。では早速、例題を一緒に考えてみましょう。
まずはMECEに基づく考え方で、”本当に足りない”あるいは”本当は足りているが現場の不足感は高い”に分類されます。前者の場合、患者増に対して人が少ないとか、医療安全等の業務が増えている、残業頼みになっている、産休・育休・病欠が多いといったことが考えられます。後者の場合、スタッフの役割分担やシフト、スキルに課題がある、非効率な業務が残っているなどと考えられます。
ヒントでは、患者数は横ばいで残業はほとんどなく、業務フローは問題ないとあるため、スタッフのスキルに問題があるのでは?ということが考えられます。更に紐解いていくと、ベテラン勢が減って新規採用者のスキルが低いなど「教育や育成の課題」であることが明らかになります。つまり、本当の要因は採用基準の見直し・即戦力の雇用・スタッフへの教育/育成なのです。
次に、イシューを特定した後の解決策の考え方を、『空・雨・傘』のフレームワークを元に考察していきます。これは、「空」を事実、「雨」を解釈、「傘」を行動と定義し、要因を当てはめていくものです。例題をもとに見ていきましょう。
よくやってしまいがちなのが、ただ「困った、困った」と言っているだけで解決の糸口を見出していないことです。『空・雨・傘』のフレームワークでは、自分の視野だけで問題を考えずに、ロジカルに様々な角度を組み込むことが大切です。以下は、考え方の例です。
このように、解釈をイシューとして分けて考えていくと、物事がより進めやすくなるのではないでしょうか。あとは、『PDCA』(計画・実行・評価・改善)の考え方を元に、繰り返し実行していきます。
問題を解くのではなく、イシューを見極める
本講義のポイントとしては、問題をまず「解く」のではなく、本当に解くべき問題、すなわち「イシュー」を見極め、”犬の道”に入らずにバリューのある仕事をするべきだということです。日々忙しく業務に当たっていると、つい目の前のことに精一杯になってしまいます。人間とは忘れやすいもののため、課題図書を繰り返し読むことで、目の前の事柄にだけに捉われず、「あれ、これって犬の道じゃないか?」と振り返る機会を設けましょう。
おわりに
次回8/27Antaa Academiaでは、「イシューからはじめよ」の実践と、『マネジメント[エッセンシャル版]・基本と原則』を読み解いていきます。
講義の最後では、参加者一同で写真撮影!これから半年間、皆さんと一緒に学べることをアンタ―運営一同楽しみにしております!