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ステロイド外用薬を使うタイミングがわかるスライド3選

病棟では皮膚科以外の先生が、当直帯や軽度の皮疹の診察を依頼されることがあります。しかし、どのような皮疹にステロイドを使うべきか、選択するステロイドの強さなどが、わかりにくいです。

今回は、漫然と処方されることが多くなってしまっているステロイド外用薬の基本をおさえられる3つのAntaa Slideを紹介していきます。

どんな場面でステロイド外用を使うのか理解しよう

まず、病棟で「皮疹をみてください」と言われた時にどんなことをイメージしますか?臨床で皮疹をみる時、ほとんどの場合は赤い皮疹です。赤い皮疹の鑑別疾患をあげる時に最初に読んでほしいスライドが、青柳直樹先生の赤い皮疹の見方/考え方/鑑別〜炎症、腫瘍、血管分けて考えるです。
スライドでは、赤い皮疹を炎症(感染、非感染)腫瘍血管異常に分けて考えるように解説しています。それぞれの病態によって治療は異なります。

  • 炎症(非感染性):ステロイド外用

  • 炎症(感染性):抗菌薬

  • 腫瘍:切除

  • 血管に異常:経過観察、原病の治療

臨床では特に、炎症(非感染性)が最も多く出会う病態です。スライドでは写真とともに、よくみる炎症(非感染性)の疾患と初期対応が学べます。

  • 刺激性接触皮膚炎:接触物による刺激が原因で、接触源を避けることが重要

  • アレルギー性接触皮膚炎:接触物によるⅣ型アレルギーが原因で、接触源を避ける

  • 蕁麻疹:真皮の浮腫が原因で、治療は抗ヒスタミン薬の内服

  • 薬疹:薬剤に対するⅠ型・Ⅳ型アレルギーが原因で、原因薬剤の中止が必要

これらの疾患を除外した後に、湿疹という病名が初めてつけられます。赤い皮疹をみた時に安易に湿疹と判断して、治療してはいけないことがわかりますね。
赤い皮膚疾患にはBowen病や乳房外パジェット病など、悪性腫瘍も紛れ込んでいます。ステロイドが効かない時は、何か変だなと疑問に思うことが大切です。スライドでは豊富な写真が載っていますので、ぜひご覧ください。

ステロイド外用薬の選び方を学ぼう

炎症(非感染性)の疾患に対するステロイド外用薬は、非常に多くの種類があります。その中からどのような剤形の種類、ステロイドの強さを選択するか難しいと感じていませんか?ステロイド外用薬の選び方で迷った時には、皮膚科に頼れない人に贈る ステロイド外用剤の選び方、使い方のスライドで疑問を解決しましょう。

スライドではステロイドの剤形の種類と選び方、ステロイドのランク、ステロイド外用薬の注意点を解説しています。ステロイド外用薬の剤形には軟膏、クリーム、ローションがあります。基本的にはどれを選んでも構いません。剤形ごとの抗炎症作用とべとつきは、以下の通りです。

  • 抗炎症作用:軟膏>クリーム>ローション

  • べとつき:軟膏>クリーム>ローション

剤形の特徴から、発毛部はローション、それ以外は軟膏が選択される場合が多いです。びらんや傷口がある場合はクリームやローションだと染みる可能性があるため、特に軟膏が使いやすいです。
ステロイド外用薬は強さに応じて、5つのランクに分類されます。

  1. ストロンゲスト:デルモベートなど

  2. ベリーストロング:アンテベート、マイザーなど

  3. ストロング:リンデロンV、フルコートなど

  4. ミディアム:リドメックス、キンダベートなど

  5. ウィーク:プレドニゾロン

ステロイドを使用する時には、どこに、どのステロイドを塗っていいか選択に困る場面もあります。体にはストロング、顔・首・陰部にはミディアムを外用することをおすすめします。

ステロイド外用薬には副作用があるため、漫然と使用を継続しないようにしましょう。スライドでは、ステロイド外用薬の注意点が以下のようにまとめられています。

  • 2週間以上の長期使用は控える

  • 外用過多は副腎皮質機能抑制のリスクがある

  • 外用する部位に感染症や潰瘍がある時は外用を避ける

  • 女性の顔面、高齢者の前腕への外用は慎重におこなう

  • 顔周囲への外用は慎重におこなう

  • 妊婦・授乳婦への外用は基本的にはOK

ステロイド外用薬を使うべきでない時は?

ステロイド外用薬を使うべき場面もあれば、使わない方がいい場面もあります。最後に皮膚の構造と加齢による変化に基づく、疾患別スキンケアのスライドで基本的なスキンケアを学びましょう。
皮膚には角質という構造があります。角質の役割は、水分の蒸散を防ぎ、保持することで外来抗原から身を守ることです。加齢で皮膚も変化していくため、正常な皮膚の機能が低下していきます。
痒いと訴えている場合、ステロイド外用薬をまず処方したくなります。しかし、ステロイド外用薬は効果は高いですが、副作用もあります。まずは洗浄・保湿・遮光など、基本的なスキンケアの指導を考えてみてください。
保湿薬は2種類あります。

  • エモリエント:水分の蒸散を防ぐ作用。ワセリンなど

  • ヒューメクタント:水分を保持する作用。ヘパリン類似物質、尿素など

剤形によっても油分・水分の比率が異なります。自分のお気に入りのパターンをスライドの表から決めておきましょう。保湿薬は1日2回、少しテカテカする程度に外用することで十分な保湿が狙えます。入浴の時にナイロンタオルなどでゴシゴシ洗っている場合は、自分で肌を傷付けてしまっています。保湿と同時に洗い方の指導もできればよいですね。
スライドでは、老化や基本的なスキンケアに関して網羅されています。ぜひ目を通してみてください。

Antaa Slideでステロイド外用薬について学ぼう

今回はステロイド外用薬の使い方に関するスライドを紹介しました。Antaa Slideでステロイド外用薬について学んで、皮膚科を専門にしなくても、必要な場面で適切な外用薬を選択できるようになりましょう。
ステロイド外用薬を処方したままにするのではなく、自分の目で効果を確認することが大事ですね。ぜひ、今後もAntaa Slideを活用し、学んでいきましょう。

執筆 :豊田光@皮膚科