「ビジョナリー・カンパニーZERO」Antaa Academia supported by MEDIVA第4期DAY8開催レポート
このnoteでは、「経営やマネジメントを学ぶ」Antaa Academia supported by MEDIVAの講義内容を抜粋してご紹介します。
2022年2月26日開催の第4期DAY8は、「ビジョナリー・カンパニーZERO~ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる~」ジム・コリンズ ビル・ラジアーの解説です。課題図書の内容を医療機関に結びつけた講義の要約を、レポートにしてお届けします。
日本の医療機関運営を「ビジョナリー・カンパニーZERO」から考える
日本の医療機関は、その多くが中小規模の病院・施設です。
医療機関を運営するにあたり、マネジメント・ロジック・プロセスが重要であることは通説的なお話ですが、中小規模の病院・施設では、通説的な手法だけでは立ち行かないこともあるでしょう。
今回取り上げる「ビジョナリー・カンパニーZERO」は、どちらかというと中小企業やスタートアップ向けのマネジメント手法の総集編となっています。
そのため、中小規模の病院・施設を経営・運営する立場の方にとって、大変示唆に富む内容となっています。今回は「ビジョナリー・カンパニーZERO」を題材に、実際の医療現場にまつわるさまざまな事例を引用しながら解説していきます。
講義内容
・マネジメントの全体感を振り返る
・改めてマネジメントの各要素で大事な点を理解する
・明日から臨床の現場で活かすための方法を考える
最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない
まず冒頭で小松先生は、『組織の重要ポジションに、適材適所な人材を配置することこそが事業成功の秘訣だ』と述べられました。組織をマネジメントする上で、まず最高の人材が揃っていることが大切です。ここで敢えて優秀な人材と定義していないことがポイントで、全てにおいて優秀な人材を仕事や組織で揃えてしまうと、かえって失敗するということはよくあるそうです。事業成功の秘訣は最高の人材にかかっているのです。
最近、数十年のお付き合いのある方とビジネスの話で実を結んだ経験があったそうですが、人との出会いはのちの人生で財産となることがあります。そのため、常にアンテナを立て、来るべきタイミングで「この人だ!」という方に声をかけられるよう、日頃からコンタクトを取り続けることが重要です。
なお、事業を経営する立場にいると、つい金銭的なインセンティブで人材を囲いがちです。もちろん、金銭的インセンティブは本人のやる気を鼓舞し組織の雰囲気を良くする効果もあります。しかし、あくまで一時的なものでり、持続可能な術ではないと念頭に置いておきましょう。
リーダーシップ・スタイル
リーダーシップは以下の図のように、「機能」と「スタイル」を両輪で回していくことで確立されていきます。
また、メンバーに対して上から「やれ」と命令するのではなく、いかにメンバーが自発的に「やってみよう」となるかがリーダーの手腕が試されるところ。小手先のテクニックだけで相手を動かそうとするのではなく、相手との信頼関係やコミュニケーションの取り方、それら全てがリーダーシップには重要です。リーダーシップは「サイエンス(理屈)」ではなく「アート(技能)」なのです。
以下は、小松先生が出会った院長先生の中で「理想的なビジョンを掲げている」と感じた方のビジョンスタイルです。ぜひ参考にしてみましょう。
幸運はあきらめない者に訪れる
何においてもそうですが、よくない事象が起こったとしても前に進んでいることが重要で、失敗ではなく次のステップなのだと思うことです。”成長”するか”成功”するかのどちらかであれば、世の中から失敗の概念はなくなるのです。
偉大な企業をつくるための地図
医療に関して言うと特に、事業を考える際は、やる内容よりもまずは人を選ぶ事が大切です。「こういうことをやりたい」「どこかにいい人はいないだろうか」という漠然としたアイデアは中途半端に終わってしまうことが多く、それよりも「この先生、看護師と出会えたからこのサービスにトライしてみよう」というほうが、事業がうまく進むことは多いのです。
また、なにか思考をする際についAかBかの二項対立でとらえがちですが、「A且つBとは?」とANDの発想で考えることです。二項対立の考え方は0か1かの思考停止に繋がってしまうため、例えば「コロナ患者を受け入れるor受け入れない」ではなくて、「コロナ患者を受け入れつつどう対策すべきか?」などの発想を持つことが大事です。
そして、うまくいったことに関しては再現性を持ちましょう。ガイドラインに従うことはもちろんですが、それを再現しつつより良い治療方法は何かを突きつめていく作業が大切です。なお、リーダーである立場の人間が次の課題を予見出来るようになったら、都度KPIを示していきましょう。そうすることで、スタッフ側で先手を打って課題を解決する仕組みが構築されていくでしょう。その方が組織としては堅いのです。
効果的戦略を策定するための4つの基本原則
次に、効果的に戦略を策定するための基本原則のお話です。
戦略の要諦としては、”どこで賭けに出るか”です。
例えば「時間」に関していうと、外来の先生が新しく事業をしたいと思った際に、週5日の診察を週3日にした場合における想定リスクや対処法をきちんと考えることです。院内組織だと政治的な要素も絡んできますが、やはり”どうなっていくべきか”をきちんと知ることが大事です。また開業医の先生であれば、市場の動向をよく見ておくようにしましょう。
先日、在宅医療をわずか3年で8倍の患者数へ急成長させた先生にお話しを伺ったそうです。その先生いわく「医師やスタッフの稼働率が80%を超えそうになったら、迷わず次のスタッフを雇う」そうです。現場のスタッフは、非日常の最前線で稼働しており、臨機応変な対応を求められることが多々あります。そんな中、稼働率が80%超えてしまうと大概現場は回らなくなります。
受け入れ側の問題で患者さんを断ってしまうと、途端に事業の動きは止まります。そのため、スタッフがキャパシティを超えてしまう前にどんどん新しいスタッフを入れることで、安定稼働を促すのです。これはどの病院でも同じことが言えるでしょう。
イノベーションは失敗こそが重要
組織をイノベーションするにおいて、失敗はつきものです。むしろ失敗こそが重要で、大ゴケさえしなければ大丈夫というマインドを組織として持っていることが大切です。そして、個々の多彩な才能をのばしながら信頼や尊敬、勇気を持ち、彼らのクリエイティブを評価するのです。
卓越した戦術の遂行
最後に、スタッフの採用・目標設定・測定・評価等の流れにおいて、実際に”卓越した戦術”を遂行されている病院をいくつかご紹介されています。取り入れられそうな要素は参考にし、理想的な組織を構築していきましょう。
次回第9回「かのこの部屋」3月26日(土)19時~
次回は、スペシャルなゲストにお迎えし、「かのこの部屋」をお届けします。
※「かのこの部屋」とは?
㈱メディヴァ代表取締役大石佳能子氏が毎回ゲストをお迎えし、対談形式で医療に関するさまざまな知見をお届けします。
◆Antaa Academiaについて
次代の医療機関経営/部門運営の中核を担うマネジメント層を育成することを目的として、30代〜40代前半を中心とした若手医師を対象に、経営やマネジメントにおいて、翌日からすぐに活用できる実践的なノウハウや考え方を身につけることを目的としています。毎月第4土曜日の19:00からZoomで開催される月例会では、各回ごとに課題図書が設定され、課題図書の振り返りレクチャー、講師小松さんの課題図書を医療機関に結びつける講義、参加者同士のディスカッションなど、書籍をもとに全体での学びを行っています。
>>Antaa AcademiaのHPはこちら
◆講師紹介
小松大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。コンサルティング事業部長。
150箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、200箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。