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緊張の夏、コロナの夏、マスク怪談四話 第二夜「ワタシキレイ?」

今年の夏は梅雨から猛暑、酷暑、しかもコロナ禍で妙な暑さでしたね><

確かに感染者は増えましたが、インフルエンザと実は大差なく、死亡率も0.2%しかも亡くなるのは80歳以上の人がほとんど。なのに相変わらずアオリマクリ。

一番恐ろしいのは、疫病より、無知無能な人間かも。。。そんな恐怖の現代の怪談を、オムニバスでお届けします。。。

* * * * * * *

ヨシオは平凡な、稼ぎが良くも無い、サラリーマンだった。大学も中流だし、実家も中流。だけど悪いことはしたことも考えたことも無い、当然、善良なる小市民なのだ。ヨシオはそして今日も真面目に社畜として働き続けるのだ。国民には労働の権利いや義務があるし、奨学金の返済もあるからだ。毎日毎日、泳げたいやきくんのように通勤し、鉄板なありがちな仕事をこなしていくのだった。

レイコは平凡な、特段の学があるわけでもないが、頭が悪いほどでもなければ悪いことするわけなどない、自営業の家庭の娘だった。親のルックスは普通、だからレイコのルックスも普通。とはいえ、お年頃、肌は奇麗だし、レイコも女子だからファッションもメイクも人並みにしている。デブでもないしガリガリでもない、ちゃんとセルフメンテくらいする普通の女子。振り向くほどではないが、呑み会で隣になったら、普通に仲良くして、口説いちゃってもいいかなー、くらいの娘だった。

そんな二人にも、出逢いはやってきた。
猛暑通り越して酷暑の夏。とある交差点で。二人はすれ違った。その時!
レイコに、急いでいるのだかなんかわからんが、誰かがぶつかった。そして、レイコのハンドバッグが衝撃で落ちて、中身が交差点にぶちまけられてしまったのだ! これは大事件だ!?
そこに鉢合わせしたのが、ヨシオである。交際経験も無いヨシオだが、鈍くはない。とっさに、自分の足元に飛び散ったレイコのバッグの中身のいくつかを、拾って、そしてレイコに渡した。他にも何人か手伝ってくれて、そして信号が赤に、、、

鈍くはないヨシオはレイコに「危ない、渡りましょう!」と促し歩道に。そして拾ったものを渡そうとして。蓋の取れたリップクリームが、なにかのはずみでヨシオのズボンをこすってしまった。鮮やかなコーラルピンクの軌跡。

「あああ、ごめんなさい」レイコが少しうろたえる。
「イヤイヤイイですよ洗えば落ちるでしょう」ヨシオは言うが。
「いや、これ、洗濯だけでは、、、」とハンカチを出してぬぐおうとするレイコだが、逆に塗り広げてしまい。そして場所が悪い、股間直近。なんか妙に膨れてきた気がしなくもなく!?
「あの、大丈夫ですよ」「いえ、その、申し訳ありません」
そこで都合よくヨシオの腹時計が鳴った。
「あ゛、すみません。昼飯まだだったんで」
そこでヨシオの何かスイッチがオン! そうだ、人生ではそんな瞬間もある、無いと困る!
「あの、よかったら、まだだったら、一緒にランチしませんか」
妙にスルスルとAIがしゃべってるかのように言葉が出てしまうヨシオ。
妙にウルウルしてうなづいてしまうレイコ。
そうだ、それでイイのだ、それが恋なのだ愛の始まりなのだ少子化解決なのだ、マンセー^0^);/

(ry

詳細略、その後半年ほどの交際を経て、二人はめでたく結婚することとなった。ちゃんちゃん。

で終わるほど世の中甘くないのである。

新型コロナ禍、二人とも、出逢った時からプロポーズその他まで、ずっとマスクしていたのである。二人とも小市民、真面目一徹、デートで食事のときも「マスク飲食」しかも互いに恥じらって口元をみせないように、それはそれは慎ましやかにしていたのである。ちなみに、二人とも実に真面目で、「結婚するまでは、いたしません、ということにしましょう」実にイマドキ、ヤッタ、デキタ、ジャマダ、遺棄した虐待した殺した、みたいな親の資格ゼロのろくでもない連中とは無縁な、真面目過ぎるほどの善良なる小市民同士だったのである。だからこそ意気投合したのである。

そして、、、慎ましいながらも祝福された結婚式を終えて、慎ましい国内旅行ながらも二人だけの新婚旅行、そしてトキメク!初夜を迎えたので、ある! さあ、いよいよだ、愛のクライマックスーーー!!

嗚呼、二人のトキメキ、興奮、熱情、欲情、性欲、愛欲、情欲、それらの湧き上がるマグマのような想いを描写できる言葉など、この世に存在するのであろうか!?
そして、二人の運命の瞬間が訪れた。そう、マスクを外して、愛の接吻を、、、

ちなみに、二人は、「どこか知らない西洋の神様に愛を誓うのって、変だよねー」と意気投合、神社で神式結婚式、それもコロナな時世だからマスクして、だったのである。愛の誓いの接吻など、清く正しい神道では人様にお見せなどしないので、していないのである。

そして、マスクを二人して外したとき、、、

「えええ゛!」「あああ゛!」

真っ白いシーツに、二人のほぼほぼ絶叫が、反射した!!

ヨシオは、子供のころから甘いもの大好きで、虫歯だらけ、まだ若いのに歯抜け、しかも今も虫歯なう、な黒い穴ぼこ空いた歯が、笑うと歯抜け爺状態だったのである。コロナでマスクして良かった、と安心いや気を抜いて歯医者通いもいい加減になり、虫歯絶賛大増殖中だったのである。ついでに、しっかりマスクしていたので今までバレなかったが、ボテっとした鼻。ハンサムとは無縁。

レイコは、もうこれは遺伝だから仕方ないが、ハプスブルグ王家も真っ青なバッチリ受け口しかもタラコ唇だったのである。いや、受け口やタラコ唇が悪い理由はない、ただ、ヨシオが声を上げるにはヨシオなりの理由がまあ、あるというか、なんというか、好みの問題というか、うーんなんというか、差別するつもりは当然ない。鼻筋が通って奇麗な二重だけに、マスクしていれば美人だったが、口元とのギャップがかーなーりー強烈、なのでコロナでマスクするようになり内心喜んでいたレイコだった。マスクしないときはメイクを工夫して、タラコ唇が目立たないよう、むしろ奇麗に見えるよう気を使っていたのだが、マスクのおかげでノーガードだった。。。

。。。人生色々、男も色々、女も色々。演歌がちゃんとそう教えてくれている。が、彼らは演歌なんか聞いたことも無い。少子化、若者の低所得化でそもそもデートなんかする金もないし車も無いしフレンチをおごる金もないし、だから結婚なんかよほどの御縁でもなければ考えない。しかもコロナ禍。そんな中で、ヨシオとレイコは奇跡的に出逢い、結ばれた、、、はずだったのだが。。。

とはいえ、初夜である。滅茶引きまくり、ヨシオが唇を寄せるとレイコは思わず顔をそむける、そうだ虫歯で口臭も寄るとはっきりなのである。ヨシオはそんなレイコのせめて首筋に口づけし、何とか結ばれようと努力する二人ではあったが、何しろマスク取ったときの衝撃で、立つものを立てられず結べるものは結べず、二人は背を向けて眠れぬ一夜を過ごすことになったのだった。

なお、我が国の離婚率は明治時代からほとんど一定して、結婚した夫婦の3割ほどが離婚する、変わらない、そうである。
ヨシオとレイコがどうなったかは、、、

なお、容姿については、単に個人の趣味嗜好の問題であり、特別な容姿をとやかく差別する意図ではないことを明記しておきます、医学的に問題とされる状態、あるいは歴史的に取り上げられる表現型を取り上げただけですので、悪しからず。。。

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