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『ダリの繭』の感想 - 2024年7月19日の日記

今朝4時頃に目が覚めてしまい、その後一切寝付けず仕事もできる状態にならなかったので午前中は休ませてもらっていた。必要な時に休める職場でよかった…。まあ、夜は20時過ぎまで働いてたのでトントンかもしれない。

睡眠下手癖は抑えていきたいね。

一睡もできない間、開き直って有栖川有栖の『ダリの繭』を読んだ。読み切ったので、パラパラめくりながら感想を書いていきます。

以下、内容に触れるので注意









・作家アリスシリーズってめちゃ面白いな!有栖川有栖作品全体がそうなのかはしらないけど、文字を目で追ってて世界観に浸るのが気持ちいい。

・作中で各登場人物に取っての繭 (=心が真に休まること?もう忘れてるな…) が幾つか挙げられていたが、読んでいる最中の私にとっては間違いなくそれは読書だな、と、そう思わせる力がある。

・P.354 作中のアリスの繭は小説を書くことらしい。カッコイイな…。創作すること、アウトプットすることで心を休められるなんて憧れる。これは芸術活動・創作活動ができる全ての人に向けた羨望だと思う。ゲーム制作やプログラミングのアウトプットは肌に合わないし、ギターもピアノも手を出したものの身につかずなかったことにした過去がある。

・P.346 火村とアリスの他者を理解するスタイルは人生の指針にしたい。相馬の女装趣味という共感しがたい行為に対しても「考えは成立する」という点において理解すること、理解しようとすることは必要だ。今の御時世で何を今更と思う気もするが、平成5年に書かれた本なんですよ。私は好きな創作の登場人物の思想に影響を受けることが多々あるので、この思想もインストールされるだろう。具体的に腹落ちする表現でこの観点に言及されたの初めてかもしれない。

・数々の謎が綺麗に結末に結びつく構成、すごくない?「堂条秀一のダリ髭が剃られていたのはなぜ?」「フロートカプセルのタイマーが40分ではなく50分にセットされていたのはなぜ?」「犯人が吉住の衣服を血で汚して、靴を持ち去ったのはなぜ?」「堂条秀一の衣服が持ち去られていたのはなぜ?」「堂条秀一がフロートカプセルの中で発見されたのはなぜ?」こんなあたりか。事件の全容が明らかになるにつれ不思議な点ばかりが浮き彫りになって収束していくカタルシスがこの上ない。

・それでいて登場人物それぞれに動機があり、容疑者たりえたというね。こういうことすると無理矢理な設定が鼻について冷めることがおおいんだけど、今作にはそれがない。動機が女性絡みの恋愛で、その女性「鷲尾優子」に私自身が魅力を感じてたからかもしれない。想像上の「鷲尾優子」は若く、美しく、気品があって知的で温和で愛嬌があり筋の通った女性になってる。そんな人いないんじゃないか?

・「鷲尾優子」が宝石を好きだと話すシーンも魅力的だな。私は宝石に縁のない人生だから想像つかないが、好きなものを好きと臆面なく言える人は好きだ。そのシーンが印象的で心に残っている。

「宝石がお好きなんですね?」
「だってきれいじゃないですか」彼女は屈託なく言った「ただきれいなだけじゃなくて、その輝きは永遠です。永遠の美というのはやっぱり尊いでしょう」

ダリの繭 P.316

これだ。理解したというより、「宝石なんて人間が希少価値を付けて高値でやりとりしているだけの鉱物じゃないか」という気持ちに反論され、腹落ちしたからだろうな。こういう考えも、ある。

・他にも火村が犯罪捜査を行う動機やアリスの小説を書くきっかけとなった少女の話、隣人の真野、シリーズ的に拾うべき点が多いようだが、それは将来の私に任せる。現時点で刊行済みの作家アリスシリーズを読み進めていかないと。

・P.431 以降の、ラストシーンが今読んでも美しい。情景がありありと浮かぶ気がするがそれを具体的に説明しようとすると落とし込めない。映像作品には超えられない想像力の壁を感じる。彼ら彼女らは、決して他者に共有できない私の頭の中だけの完璧な存在として記憶に残り続けるのだ。

・ラストシーンはここか……。人生で一度は行ってみたいな。好きな人を連れて。ドライブで。

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