ストーリーで学ぶ交通事故案件処理マニュアル⑦

第7話 法律相談②

※今回は,相談者へわかりやすく説明することを念頭に置いているため,一部詳細な説明を割愛しています。そのため,厳密には不正確な記述もあります。


江頭「では,今後の見通しも含めて,ポイントを説明していきますね。まずは,人身から説明しますね。こちらの図をご覧ください。」


交通事故流れ図

加藤「はい。」
江頭「この図は,交通事故の全体の流れをお体の健康度と時間軸を使って表現したものです。縦軸が健康度,横軸が時間軸です。まず,事故に遭うと,今回の加藤様のように体に異変が生じます。つまり,健康度がドーンと下がる訳です。そうすると,当然ですが,お体を事故前の状態に戻すために我々は,病院に行きます。そして,健康度を回復させていきます。この行為が【治療】です。そして,【治療】を継続して,事故前の健康度に戻れば,それが【完治】ということです。まずは,この【完治】を目指して,今後治療を続けてください。」
加藤「わかりました。」


江頭「しかし,場合によっては,【完治】しない場合もあります。一生懸命治療をしても残念ながら【完治】せずに,症状が残ってしまう,この状態のことを症状が固まるという意味で【症状固定】と言います。図で行くと,健康度の推移が横ばいになったタイミングです。一般的に加藤様のような頚椎捻挫や腰椎捻挫のようなおケガの場合,6か月間治療を続けて改善しない場合は【症状固定】と判断されることが多いです。」
加藤「そうなんですね~症状固定になったら,その後はどうなるんですか?痛みに耐えて生活するしかないんですか?泣き寝入りですか?」
江頭「いえ,そういう訳ではありません。当然,症状固定は,治療をしても回復の見込みがないことを言いますので,その後痛みに耐えながら生活する必要は生じます。しかし,症状が残ったために生ずる加藤様の精神的苦痛や家事労働への支障についてしっかりと補償を得る必要があります。そのための概念が,【後遺障害】です。加藤様に残存した症状を法的に【後遺障害】と評価されれば,先ほど申し上げた補償が得られます。」


加藤「後遺障害として評価というのは具体的にどうすればいいのですか?」
江頭「加藤様のお体に残存した症状が後遺障害か否かは,まずは相手方の自賠責保険が判断をします。こちらから,加藤様のお体に残存した症状を後遺障害として評価してくださいと申請をします 。そうすれば,自賠責保険は,こちらが提出した書面を元に審査を行い,後遺障害と評価できるかどうかを判断してくれます。」
加藤「なるほど。そこで,後遺障害と認定されれば先ほどおっしゃってた補償が得られるということですね。」
江頭「大まかに言うと,そういうことです。」


加藤「症状固定を境に損害費目が大きく変わっていますが,これはどういうことでしょうか?症状固定後に治療費は請求できないのですか?」
江頭「いい質問ですね!」


(「池上彰か!」心でツッコむ川口)


江頭「先ほどお伝えしたとおり,症状固定というのは治療をしても改善の見込みがない,つまり治療の効果がない状態です。ですから,法律上は,原則として,症状固定後の治療は必要性がないため請求できません。」
加藤「そういうことですね。」
江頭「逆に言うと,治療の必要性が認められれば治療費の請求はできるということです。この図を見ていただくとわかるとおり,治療の効果が出ている状態,グラフでいうと右肩上がりの状態になっていれば,相手方に治療費は請求できるということです。」
加藤「ということは,相手方が治療期間は3か月と言っても,右肩上がりであれば,そうはいかないといういうことですか?」
江頭「そうです。ただ,右肩上がりであることをこちらは証明しないといけません。基本的には主治医の先生が右肩上がりかどうか,治療の効果が出ているかどうかを判断します。ですから,加藤様は主治医の先生に治療の効果が出ていることをちゃんと伝えてほしいんです。」
加藤「具体的にはどう伝えたらいいですか?」
江頭「治療を続けていけば,お体はよくなっていきますので,その状態を数字で表現してほしいです。」
加藤「数字で?」
江頭「例えば,事故直後の痛みを10とした場合に,今,いくつなのかを主治医の先生に伝えてください。」
加藤「なるほど,そうすれば,数字の推移で右肩上がりを表現できるということですね。」
江頭「そうです。」


川口「ここまでで,何かご質問はありますか?」
加藤「特にないです。非常にわかりやすい説明で助かります。」
江頭「ありがとうございます。では,次は,後遺障害のポイントを説明しますね。」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?