ストーリーで学ぶ交通事故案件処理マニュアル②


【新たな登場人物】
5.加藤京子(女性)
  交通事故の被害者。初めての事故でとても不安に思っている。

第2話 電話聴き取り

早速,福島は,受話器を取り,問い合わせメールに記載された携帯電話へ連絡をした。

※以下の電話は,令和元年11月1日にしているものとする。

(トゥルルル・・・トゥルルル・・・ガチャ)

福島「加藤様のお電話でお間違いないでしょうか?」
加藤「・・・はい・・・どちら様でしょうか?」
福島「失礼したしました。初めまして。ワイルド法律事務所です。この度は,当事務所にお問い合わせいただきまして,ありがとうございます。」
加藤「あぁ~!事故の件ですね。」
福島「はい。先日,交通事故に遭われたとのことで,お体は大丈夫でしょうか?」
加藤「ありがとうございます。幸い,骨折などはなかったですが,痛みはあります。」
福島「左様でございますか。当事務所で加藤様の何かお力になれることがあればと思い,ご連絡させていただきました。今回の交通事故の件で詳細をお伺いしたいのですが,10分ほどお時間大丈夫でしょうか?」
加藤「はい。大丈夫です。」


福島「ありがとうございます。まずは,お名前をフルネームで教えていただけますか?」
加藤「加藤京子です。」


福島「生年月日は?」
加藤「昭和61年3月26日です。」

福島「失礼ですが,現在おいくつでいらっしゃいますか?」
加藤「33歳です。」

福島「事故に遭われたのは,いつになりますか?」
加藤「10月20日です。」

福島「では,現在も治療中ということでお間違いないでしょうか?」
加藤「はい。病院に通院しています。」

福島「治療費は窓口で負担されてますか?」
加藤「いえ,お相手の方の保険会社が対応してくれています。」

福島「病院の診断はどのようになっておられますか?」
加藤「なんか,診断名はよくわからないんですが,むちうち?って医師から言われました。」
福島「左様ですか。では,診断書には頚椎捻挫とか腰椎捻挫とか書かれてましたかね?」
加藤「あっ,そうです!そうです!そんな感じでした!」

福島「承知いたしました。続いて,事故の状況についてお伺いしたいのですが,どんな事故でしたか?」
加藤「車で交差点を進んでいたら,対向車が突然右折してきて,私の車の右前方と相手の車の左前方が衝突したんですよ~」

福島「そうなんですね。ちなみに,お車の修理はどうなってますか?」
加藤「今,修理工場で修理してもらっているところです。」
福島「では,物損についてもまだ示談はされていないということですね。」
加藤「はい。」

福島「加藤様のお車の保険に,弁護士費用特約という特約はついておられますか?」
加藤「私が乗っていた車は旦那名義の車で,弁護士費用特約には入っているとは旦那に聞いたんですが,私が運転してても使えるんですかね~?」
福島「左様でございますか。弁護士費用特約が使えるかどうかは面談時に弁護士にご確認いただけると確実かと思いますので,旦那様が加入されている保険会社を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
加藤「損保アメリカです。」

福島「ありがとうございます。今,困ってらっしゃることはございますか?」
加藤「なんか,お相手の方の保険会社の担当者から色々電話が来るんですが,難しい言葉ばかり並べられて,よくわからないんです・・・事故に遭ったのも今回は初めてですし。」
福島「左様でございますか。それは,不安になりますよね。当事務所には交通事故に精通した弁護士がおりますので,ご安心ください。ちなみに,お相手の方の保険会社はどちらになりますか?」
加藤「大阪海上です。」

福島「ありがとうございます。では,弁護士との面談を設定したいと思いますが,ご希望の日時はございますか?」
加藤「どうしていいかわからないので,できれば早めにお願いしたいです。仕事も調整できますので。」
福島「承知いたしました。では,少々お待ちください。」

(保留中~エリーゼのために~)

福島「川口先生,面談の日程ですが,早めがいいとのご希望で。いかがいたしましょうか?」
川口「そんなことより,聞き耳立ててたけど,聴き取り素晴らしいよ!また,あとでフィードバックするね。日程は,今日の午後は空いてるし,江頭くんも午後には来るだろうから,江頭くんの勉強のためにも私と一緒に相談に入らせよう。」
福島「承知いたしました。ていうか,江頭先生まだ来てないんですね。もう11時ですよ。とりあえず,相談は,本日の14時に入れますね。」
川口「うん。ま,いつもの寝坊だろうね。相談の件,よろしく頼むよ。あと,初回の面談は無料ってことも伝えてあげてね。安心すると思うし。」
福島「はい。」

(~エリーゼのために~・・・ガチャ・・・)

福島「加藤様,お待たせいたしました。」
加藤「いえ。」
福島「本日の午後,弁護士の予定が空いておりましたので,本日の14時からはいかがでしょうか?」
加藤「今日,いいんですか?とても助かります。よろしくお願いいたします。」
福島「承知いたしました。では,本日14時お待ちしております。では,相談の際には,身分証明書,認印,保険証券・診断書などの今回の事故に関係しそうな資料をすべてお持ちください。また,初回の面談は無料ですので,ご安心ください。」
加藤「はい,わかりました。ご丁寧にありがとうございました。」
福島「いえ,とんでもございません。では,14時にお待ちしております。場所がわからないなどございましたら,こちらの番号にご連絡ください。」
加藤「わかりました。ありがとうございました。」
福島「こちらこそ,ありがとうござました。では,失礼いたします。」

(そっと,受話器を置く。)

福島「ふぅー」
川口「お疲れさん!どうだった初めての聴き取りは?」
福島「緊張しました。けど,面談まで入れられたので,よかったです。」
川口「声も明るくて,ちゃんと話せてたし,聴き取り事項もほぼ漏れなく聞けてたね。初めての聴き取りでは十分合格点だよ!」
福島「ありがとうございます。」
川口「よくできていたから,もっとよくなるためにいくつか注文をしてもいいかな?」
福島「はい。是非お願いします!」

川口「事故状況を聴き取るときなんだけど,過失割合がどうなるかっていうのも,できれば相談前に検討したいから,事故現場を特定してくれるとより助かるな。もちろん,相談で聞いてGoogleマップとかで確認するんだけど,その場で聞いて,その場で過失割合を考えると相談の時間が長くなっちゃうからできれば事前に聞いてほしいな。もちろん,追突事故とかで過失割合が問題にならないような場合は大丈夫だけど。」
福島「なるほど。ちなみに,どう聞けばいいですかね?」
川口「一番簡単なのは,交差点だったら交差点名かな。あとは,近くの目立つお店を教えてもらうとか。びっくりドンキーの麻布店のある交差点とかね。」
福島「麻布にびっくりドンキーってあるんですか?」
川口「知らないけど,例えばね,例えば。」
福島「例えばですね。わかりました。」

川口「あと,弁特が使えるかどうかを聞かれてなかった?」
福島「聞かれました!ちょっと焦りました。」
川口「対応としては,面談で弁護士に聞いてくださいで問題なしだけど,豆知識として次のことは知っておくと便利だよ。」

【弁護士費用特約の一般的な範囲】
①記名被保険者
②被保険者の配偶者
③被保険者またはその配偶者の同居の親族
④被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
⑤搭乗者

福島「へぇ~保険の契約している人以外も使えるんですね!」
川口「そうなんだよ。自分が保険の契約していないから弁特は使えないって思いこんでいる人もいるからね。今後,この辺も踏まえて聴き取りができるとよりいいかな。」
福島「いくつか質問いいですか?」
川口「どうぞ。」
福島「④って具体的にどんな人ですか?」
川口「一番多いケースは,一人暮らしの大学生の子どもとかかな。この場合,両親の自動車保険に弁特がついていれば,子どもも使えるんだ。」
福島「へぇ~!今回の加藤さんは,②に該当して,弁特使えますね!」
川口「そのとおり!」
福島「では,今,ご指摘いただいた点は,先ほど教えていただいた聴き取り事項に追加しておきますね。」
川口「うん,ありがとう。」

【聴き取り事項】※追加分
□氏名,年齢,連絡先
□事故日
□現在の状況(入院中,通院中,提示ありなど)
□傷病名
□治療費対応について(窓口負担しているかどうか)
□事故状況(どんな事故だったか)
→事故現場を特定する。交差点名や近くのお店などを聞く。
□物損についての状況(解決済みかなど)
□弁護士費用特約の有無
→保険の契約者以外も使える場合があるので注意。
□相談内容(困っていることなど)

川口「じゃあ,聴き取りシートは,江頭くんに渡しておいて。相談までに相談方針をまとめてもらうから。」
福島「わかりました。しかし,江頭先生遅いですね・・・」

(ガチャ・・・)

川口「噂をすれば・・・だな。」
福島「そうですね。ハハハ・・・(苦笑)」

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