ストーリーで学ぶ交通事故案件処理マニュアル①


【主な登場人物】※全て架空の人物です。
1.福島りえ(女性)
 新人事務局。ある日,突然,事務所から交通事故専門事務局になってくれと頼まれたが,交通事故案件を担当した経験はない。これから色々勉強しようとやる気に満ち溢れている。
2.川口正博(男性)
 弁護士。交通事故案件が得意。事務所から福島さんを交通事故の敏腕事務局に育ててくれと頼まれ,どうやって教育していくべきか日々頭を悩ませている。また,新人弁護士の江頭の指導も任されている。
3.伊田弘典(男性)
 弁護士。この事務所のボス弁。普段は,寡黙だが,たまに鋭い指摘をする。
4.江頭淳(男性)
  弁護士。新人。よく寝坊する。


第1話 問い合わせ対応


2019年11月1日。いつもの朝・・・

川口「ふわぁ~・・・(あくび)」
福島「川口先生,おはようございます。」
川口「あっ,おはよう。」
福島「眠そうですね。」
川口「昨日は,営業先のおじさんと遅くまで飲んでて・・・気づいたら場末のスナックで寝てしまってね~。」
福島「先生も好きですね~」

(ガチャ・・・)

伊田「おはよう。」
川口・福島「おはようございます!」
伊田「川口くん,早速で申し訳ないんだけど,昨日の夜,メールで来ていた交通事故の問い合わせの対応はどうなってる?」
川口「・・・いや,ちょっと・・・まだ・・・(汗)」
伊田「問い合わせへの対応は早いに越したことはないんだけどね。」
川口「あっ・・・はい,すみません。すぐ対応します。」
伊田「ま,せっかくだし,福島さんに聴き取りやってもらおうか。川口くん,交通事故案件の聴き取りから福島さんに教えてあげてよ。案件を通じて指導した方がやりやすいでしょ?」
川口「私もそう思って,今朝までこの問い合わせを寝かしておいたんです!」
伊田「君は,どうせいつものように場末のスナックで寝かされてただけだろ。」
川口「うっ・・・てことで,福島さん!この案件,まずは受任を目指して行きましょう!受任したら,一緒に対応していきましょう!」
福島「はい,全然わかりませんが,よろしくお願いします!ただ・・・とりあえず,川口先生,寝ぐせ直したらどうですか?」
川口「・・・」

(トイレで寝ぐせを直した後・・・)
川口「さぁ~早速だけど,交通事故案件での聴き取りのポイントから教えていくね。ここでの聴き取り内容をもとに弁護士が相談方針を立てるからその点でも重要なんだけど,もっと重要なのは,事務所と相談者のファーストコンタクトであるという点なんだ。どんな相談者も法律事務所に連絡するってとても勇気のいることだし,不安だから最初に丁寧に対応して安心してもらうことが必要なんだ。まずは,内容よりも声のトーンや言葉遣いなどをしっかり意識してね。」
福島「はい,わかりました。第一印象,大切ですもんね。相談にきて,出てきた弁護士に寝ぐせついてたら嫌ですもんね~」
川口「いじるね。嫌いじゃないよ。寝ぐせは置いといて。中には,最初の電話対応がよかったからという理由で依頼してくれる依頼者もいるからね。」
福島「そうなんですね!私もそう言われるように頑張ります!」
川口「よし,じゃあ,心構えはこの辺にして,次は内容に入るよ。聞いて欲しいことをまとめてみたから,見てみて。」

【聴き取り事項】
□氏名,年齢,連絡先
□事故日
□現在の状況(入院中,通院中,提示ありなど)
□傷病名
□治療費対応について(窓口負担しているかどうか)
□事故状況(どんな事故だったか)
□物損についての状況(解決済みかなど)
□弁護士費用特約の有無
□相談内容(困っていることなど)

福島「結構いろいろ聞くことあるんですね~」
川口「けど,聴き取りシートっていうシートを作っているから,それを使ってもらえれば大丈夫だよ。暗記はしなくていいからね。」
福島「そうなんですね。安心しました。ただ,いくつかわからないので教えてください。傷病名って何ですか?」
川口「これは,ケガの内容,ま,診断名のことと思ってもらったら大丈夫だよ。最初のうちは,聞きなれない診断名が出てくるけど,案件をこなすうちに沢山の診断書を見ることになるから徐々に慣れていこう。今の段階では,頚椎捻挫,腰椎捻挫,外傷性頚部症候群あたりは知っておいてもらえればいいかな 。」
福島「わかりました。それと,治療費対応ってなんですか?」
川口「交通事故でケガをした場合,当然病院に通うよね?その時の治療費を誰が負担しているかって話だよ。加害者の保険会社 が払っていたり,被害者自身の保険会社が払っていたり,はたまた労災保険が払っていたり・・・治療費を負担する人が色々いるから誰が負担しているのかを確認してほしいんだ。」
福島「へぇ~そうなんですね。交通事故って治療費だけでも複雑なんですね。」
川口「ま,保険については,後から詳しく教えるから今回は,被害者本人が窓口で負担しているかどうかだけの確認してくれたら大丈夫だよ。」
福島「はい。あと,弁護士費用特約ってなんですか?」
川口「これは,弁特 ってぼくらは呼ぶんだけど,自動車保険には,弁護士に依頼した場合の費用を保険会社が払ってくれるっていう特約が一般的についているんだ。つまり,この特約を使うと被害者は自分で弁護士費用を負担しなくても弁護士に依頼ができるんだ。」
福島「へぇ~そうなんですね!ステキな特約ですね!」
川口「そう。この特約のおかげでぼくらも安心して被害者救済のために活動できるんだ。」
福島「じゃあ,この特約があるかどうかはとても重要ですね!」
川口「そうだね!他に質問はないかな?」
福島「はい,とりあえず,大丈夫です!やってみないとわからないので,まずは,やってみますね!メールで問い合わせの来ていた方に早速連絡してみます!」

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