レトロ映画館で宇宙のいたずらに浸かる


最近、仕事終わりにレトロ映画館へ向かうのが趣味になりつつある。

定時ダッシュをキメて、私だけの時間が始まる。

そもそも私のなかでレトロ映画館の定義は、①劇場数が少なく、②売店が最小限、③なんといっても見た目が懐かしい雰囲気の映画館である。

私がうまれ育った九州の田舎町では、バスセンターにぼろぼろの映画館が併設されていた。今はもう廃墟になってしまっているその映画館に、子どもの頃にはよく母にアニメ映画を観に連れて行ってもらったものだ。思えば私と映画の出会いはレトロ映画館での出来事だったのだ。

学生時代は、吉祥寺のバウスシアターに通った。チケットは紙切れで、どの映画を見ても同じというローコスト。椅子は壊れかけていて、落ち着かない。そういえば染谷将太との出会いもバウスシアターだった。

丸の内TOEIやシネスイッチ銀座もたまらない。テアトル新宿や、新しいがシネマカリテの親しみやすい雰囲気も最高だ。

レトロ映画館は、美しい街東京で暮らす私にとっては誰にも邪魔されない異世界だ。結婚してからも、ひとりでしか行かない。


話は変わり、先日観た素晴らしい映画の話をしたい。

「37セカンズ」という映画をみなさんはご存知だろうか。小児まひで肢体不自由の少女が、自らの人生を自らの意志でデザインしていくための奮闘を描いた映画だ。

恋愛に憧れ、化粧やおしゃれ、酒を知りながら、素晴らしい友人との出会いの中で少女が自我を得ていく過程に、心が震える。

私は日々、当たり前のように好きな人と好きなものを食べ、手をつなぎ、街を散歩をしたりする。好きな服を着て、自らの存在価値を知らせてくれるような、心躍る仕事との出会いも今後幾多もあるだろう。

でもそれが当たり前ではない人もいる。気づいていないだけで。

しかし、如何なる障害とともにあっても、「できる」と自らを信じる者もいる。「やりたい」という思いも必ず存在する。彼らが自立できることに目を向け、私は可能性を信じ続ける人間でありたい。

劇中、少女が「自分の人生は宇宙人にとっては夏休みの課題なのだ」といった発言をする。

「目を背けたくなるようなもの」か、はたまた「いつか必ず解決しなければならない課題」か。

ずっと頭をめぐっている。

見た方はどのように感じただろうか。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所