見出し画像

心不全とは

心不全(heart failure)とは、心臓が十分な血液を送り出すことができない状態をいいます。すなわち心臓のポンプ機能不全です。心不全は突然死リスクの高い予後不良な疾患で、日本における心不全患者数は50万~100万人といわれています。原因となる基礎疾患としては、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、心筋炎などがあります。最終的には収縮機能低下から肺うっ血や浮腫を引き起こします。心臓の心臓の収縮期サイクルに対応して収縮期心不全(systolic heart failure; SHF)と拡張期心不全(diastolic heart failure; DHF)がありますが、
発症機序からは急性心不全慢性心不全に分けられます。

収縮期心不全

収縮期心不全は、心筋の収縮力が低下することで、心拍出量つまり血液の駆出量(ejection fraction; EF)が50%以下に低下した状態です。

拡張期心不全

拡張期心不全は、心室筋の肥厚などにより拡張期に十分な量の血液が流入しないことで、駆出される血液量が減少した状態です。拡張期心不全によるうっ血性心不全の発症は高齢者と女性に多いです。コントロール不良な高血圧が基礎疾患としてあります。

1980年代以降の疫学調査によると、実際には左室駆出率が正常と判断される症例がうっ血性心不全患者の30~50%を占めることが明らかとなり、左室の拡張機能障害が原因と推測され、この病態を拡張期心不全と呼ぶようになりました。これをHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)と略します。現在では、拡張期心不全が起こり、それに収縮期心不全が続き、うっ血性心不全に至ると考えられています。

左室拡張期は、次の3期に分類されます。
1.大動脈弁閉鎖から僧帽弁閉鎖までの等容性弛緩期
2.僧帽弁解放直後の急速流入期
3.心房の収縮による心房収縮期
左房-左室圧格差の減少する左室拡張障害は、左房圧の上昇すなわち肺うっ血を発症する直接的な原因です。

急性心不全

急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全をきたし、それに基づく症状や徴候が急性に出現、あるいは悪化した病態をいいます。

慢性心不全

慢性の心ポンプ失調により肺と体静脈系のうっ血や組織の低灌流が継続し、日常生活に支障をきたしている病態をいいます。

現在では明らかな症状や兆候が出る以前からの早期治療介入の有用性が確認され、この急性心不全と慢性心不全の分類の重要性は薄れました。左心室の駆出機能(ejection fraction; EF)の評価をもって心不全を分類することが行われています。

(参考)

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?