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Meta(旧Facebook)の目指すMetaverse関連の特許出願状況は?

「知財情報を組織の力に🄬」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

先月末にFacebookが社名をMetaに変更しました。

会社名をMetaに変更してメタバースの実現を目指すとのことですが、このメタバースは

メタバースは、現在のさまざまなオンライン上でのソーシャル体験を掛け合わせたようなものになります。時には3次元に拡張され、時には現実世界に投影される、それがメタバースです。そこでは、離れた場所にいる人とも没入体験を楽しみ、さらに現実世界では不可能なことも一緒にできるようになります。これは、ソーシャルテクノロジーの長い歴史における次なる進化です。

のように説明しています。

今回は、このメタバース関連特許出願状況がどうなっているのかマクロ的に分析してみました。

1. メタバース関連特許は?

メタバースは

SF作家・ニール・スティーヴンスンによる1992年の著作『スノウ・クラッシュ』の作中で登場するインターネット上の仮想世界のこと(出所:ウィキペディア

とありますが、バーチャルリアリティーや仮想空間など様々な概念を含んでいるキーワードなので、今回はシンプルに”METAVERSE”または"META VERSE"で検索を行いました。

グローバル特許検索データベースであるPatbaseで調べると、

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161ファミリーヒットしました(2021年11月13日現在)。ちなみにGoogle Patentsで調べると

約340件(2021年11月13日時点)がヒットします。Google Patentsの場合は、キーワードと完全一致していないものもヒットしますので件数が多くなっています。

2. メタバース関連特許のグローバル出願状況

まずはファミリー数推移です。

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実はメタバース関連出願は2008-2009年にかけて急激に増加し、その後緩やかに減少傾向にあります。今回のMeta(旧Facebook)の社名変更で出願が急増することは容易に想像がつきます。

今回はMETAVERSEまたはMETA VERSEというキーワードのみで検索を行っているで、バーチャルリアリティーや仮想空間関連の出願も含めるとまた異なったトレンドが確認できるかもしれません。なおバーチャルリアリティーなどを含めたXR関連出願トレンドについては日本弁理士会パテント誌へ「特許から見たXRテクノロジートレンド」を寄稿していますのでご参照ください。

つづいて発行国別の状況です。

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トップはアメリカで2位の韓国や国際出願(WIPO)を大きく引き離しています。

日本においても27ファミリーの出願がありますが、最近に発行されているのは

JP2009217387A
メタバースにおけるオブジェクトの真贋判断システム、方法及びそのコンピュータ・プログラム
【出願人】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【課題】ユーザによる自由なメタバース内でのオブジェクトの作成やメタバース外からのオブジェクトの持ち込みを前提としつつ、簡単なシステム構成でオブジェクトの真贋を判断することができる手段を提供する。
【解決手段】サーバ・コンピュータ1は、あるオブジェクトについて当該オブジェクトを特定するオブジェクトIDと当該オブジェクトが真正であることを示す真正情報とを関連付けてオブジェクト情報として記憶する記憶部と、各クライアント・コンピュータ3A〜3Nと通信する通信部と、あるクライアント・コンピュータから対応するオブジェクトIDを含むオブジェクトの照会要求を受信することに応答し、当該オブジェクトIDに対応する真正情報が記憶部に記憶されていることを条件に、通信部に真正情報を当該クライアント・コンピュータに対して送信させる照会部とを備える。

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でIBMの出願でした。ちなみにこの特許は登録になっていますが、現在の権利者はアクティビジョンとなっています。

それではメタバース関連出願を積極的に行っている企業はどこか?出願人・権利者ランキングを見てみましょう。

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トップはIBMで、上述のようにIBMからメタバース関連出願を買っているアクティビジョンが2位、3位がマイクロソフトで、4位に韓国のETRI(韓国電子通信研究院)となっています。

5位にMonument Peak Ventures, LLCという企業がランクインしていますが、こちらの企業はNPE(いわゆるパテントロール)でした。

当然NPEは今後市場成長が見込める領域を狙っていますので、既にメタバース関連分野においても特許を買い取ってポートフォリオ化していると考えられます。

メタバースというキーワードが特殊であったことも起因すると思いますが、(私にとっては)結構見慣れない企業が上位にランクインしています。

ちなみに上位20社の中に唯一ランクインしている日本企業がリコーです。どのような出願か見てみると、

JP2011217352A/JP5703748B2
管理システム、管理方法および一時保管文書サーバ
【課題】複数世界にまたがって存在しえる電子文書等を一元的に管理する。
【解決手段】ネットワーク上に接続されたクライアントに存在する電子文書などを所定のメタデータと共に受領する文書管理サーバ32と、メタバース世界に設けられた電子鞄と情報通信でき、メタバース世界で作成され、または受領した電子文書などを所定のメタデータと共に一時保管する一時保管文書サーバと、一時保管文書サーバに存在する電子文書等とメタデータとを文書サーバに送信する送信手段と、クライアントから送られてきた検索書誌データを基にメタデータおよび/または電子文書等を検索対象として該当する電子文書等をクライアント側に送信する送信機能を有し、クライアントに一時的に文書を保管する場合、その文書の所定のメタデータを取得するメタデータ取得手段を一時保管文書サーバが有する。

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JP2011216073A/JP5625882B2
情報管理装置
Abstract
【課題】三次元仮想空間を活用してビジネスを行う場合に、アバターの有する固有の静的情報および行動履歴などの動的情報を収集して、それらの情報を分析してマーケティングに利用可能とする。
【解決手段】メタバースにおいて存在する各種のアバターの情報を管理する情報管理装置であって、アバター自体が保有する静的情報を取得する静的情報取得手段107と、アバターの行動を基にした動的情報を取得する動的情報取得手段108と、取得された静的情報および動的情報をアバターと関連付けて記憶するプライベートオブジェクトDB25とを有する。

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のようにオフィスにおけるメタバース空間内におけるドキュメントや情報マネジメントに関する出願です。10年以上前にこのような特許出願を行い、権利化しているというのは驚きです。

最後に引用ネットワークマップを見てみると、Leviathan Entertainmentという会社が非常に多くの企業の出願に引用されていることが分かります。

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このLeviathan EntertainmentはEnvoyというオフィス向けの来客受付プラットフォームなどを手掛ける米国のスタートアップの傘下に入っています。

おわりに

FacebookがMetaに会社名を変更したことにより一気に注目が集まっているメタバース。そんなメタバースというキーワードを含む特許についてマクロ的に分析してみました。

冒頭でも述べた通り、今回の記事はあくまでもメタバースというキーワードを含んでいる特許なので、仮想空間・バーチャルリアリティーなども含めたメタバース全体の特許出願トレンドについては別途取り上げたいと思います。

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