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【特許から見る】パエリヤに関する国内出願動向は?-「パエリア弁理士」商標出願記念-

「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

イーパテントYoutubeチャンネルにも出演いただいているMarkstone知的財産事務所の中村祥二さんが「パエリア弁理士」を商標出願されていました。

中村さんは各種資格も取得されていて、パエジェロ(パエリア職人)としても活動されています。

そんな中村さんが「パエリア弁理士」を商標出願した記念に、パエリア関連の国内出願トレンドについてまとめてみました。

1 パエリア関連の母集団検索式

最初、J-PlatPatを用いて全文=パエリアで検索すれば良いかな。。。と思っていたのですが、

よくよく見てみると、結構ノイズが含まれていました

特開2022-017378「洗剤組成物」

特開2021-193085「殺有害生物組成物」

というわけで、パエリア(同義語も追加)の上、パエリアに関連するキーワード群を近傍検索すると同時に、パエリア関連キーワードに食品関連特許分類A23をAND演算した検索式に修正しました。

[パエリヤ/(TI+AB+CL+SP)+パエリア/(TI+AB+CL+SP)+パエーヤ/(TI+AB+CL+SP)+パエージャ/(TI+AB+CL+SP)]*[A23/FI] +[(パエリヤ+パエリア+パエーヤ+パエージャ),99N,(米飯+加工米+吸水米+炊飯+調理+食品+食物+食材)/(TI+AB+CL+SP)]

ちなみに最近知ったのですが、

パエリア/(TI+AB+CL+SP)

のようにカッコ書きの中に検索項目(TI=発明の名称、AB=要約など)をまとめて記載することができます。

キーワード同士の検索はAND演算でも良かったのですが、可能なかぎりノイズが含まれないように順不同の近傍検索で、間に入る文字数は最大の99文字にしました。

これでヒットしたのが168件。

こちらの168件をベースに出願トレンドを見ていきます。

2 パエリアに特徴がある出願は?

まず最初にパエリアに特徴がある出願があったのかを確認していきます。

実は発明の名称に”パエリア”または”パエリヤ”が含まれている出願は以下の2件だけでした。

特開2001-145557
パエリア用強誘なべ
【課題】 1つのパエリア用なべによって複数種類のパエリアを同時に調理することができ、かつ1つのなべによって複数種類のパエリアを同時に食卓に提供することを可能にする。
【解決手段】 パエリア用なべ1は、底面3および側面4を板状部材で囲まれた食材収容部を備え、当該食材収容部が複数の領域に隔てられたことを特徴とする。食材収容部を複数の領域に隔てるため、仕切り板5を備える。前記側面4は、前記底面3付近から上方に向かって大径となるように形成されているので、なべの上部開口が大きくなる。

特開平01-043162
予め料理したパエリヤの製造方法
【特許請求の範囲】
1)(a)パエリヤ用の種々の調味料を含むソースを調整し、
(b)該ソースをソースに対して適切な比率の米と混合し、
(c)ソースがすべて米に吸収されるまで混合させた米とソースとを煮込み、
(d)パエリヤが持つべき味に応じて選択した葉菜、肉、魚、シーフードから成る成分を加えて真空又は急速冷凍を介して製品を包装する工程とから成る予め料理したパエリヤの製造方法。

ちなみに、要約・特許請求の範囲に”パエリア”または”パエリヤ”が含まれている出願は、上記のパエリア鍋を除いて11件ありました。

特許6873635 膨化米 キッコーマン
特許4949320 電子レンジ加熱用容器入り冷蔵食品 キユーピー
特開2007-215455 低付着性で耐老化性の米飯又は米飯加工品及びその製造方法 農業・食品産業技術総合研究機構
特表2008-528153 講義形式の料理容器 ホルヘ ガルシア ノルベルト
特許4300161 加工米飯、加工米飯調理物および加工米飯の製法 ヱスビー食品
特開2003-051377 誘導加熱調理器 パナソニック株式会社
特許3183292 米飯類の製造方法 味の素
特許3836591 機械的包皮米飯食品及び半包皮米飯食品 アイカ
特開平05-176696 無菌包装米飯の製造方法 明治
特開平04-244520 加熱調理器 パナソニック
特開平03-198756 米飯食品 石田幸男

パエリアのもとである米やその加工食品、調理器具関連など多岐にわたっていますね。また出願人・権利者、も大手企業から個人発明家まで、業界・業種も幅広くなっています。

3 パエリア関連の国内出願トレンド

それではパエリア関連の国内出願トレンドについて見ていきましょう。

まずは件数推移から。

期間限定しないでヒットしたパエリア関連出願が168件なので、出願規模が大きくない領域です。

とはいえ、1980年代から1990年代後半までは低調だった出願が、2000年代前半以降になって徐々に増えてくる傾向にあります。

Googleトレンドで「パエリア」、「パエリヤ」と「冷凍食品」のキーワード検索ボリューム推移を見てみると、

「パエリヤ」以外の2つのキーワードとも2004年以降徐々に増加しています(冷凍食品の方で数年に1回ピークが立っているのですが、これはなんなんでしょうか。。。新製品発表ですかね。

原因については特に確認していません)。 ここ2年強は新型コロナウイルス感染症の関係でなかなか外食ができなかったので、冷凍食品に関する検索回数が増えているのではないでしょうか。

パエリア関連出願も冷凍食品関連が多いのではないかと思って検索してみたのですが、実はキーワードとしては

「パエリア レシピ 人気」などに注目が集まっているので、冷凍食品関連で注目が集まっているというよりも、むしろ家でパエリアを作りたいという方がGoogleで検索しているようです。

とすると、特許出願も冷凍食品というよりも、パエリアの素のような出願が増えている関係で、上記のような件数推移になっているかもしれません。

通常の分析であれば、実際の特許分析に入る前にマーケット情報や製品情報などを収集してある程度の予備仮説を設定してから分析に着手するのですが(仮説検証型分析)、本記事ではとりあえず特許分析から入っています(仮説検証型ではなく、特に予備仮説を持たず情報集・分析を通じて仮説を設定していくという意味で探索型分析)。

続いて出願人・権利者ランキングです(出願人・権利者名は名寄せ、J-PlatPatを用いているため筆頭出願人・権利者)。

三菱電機が三菱電機ホーム機器と三菱電機に分かれてしまっていますが、三菱電機グループとしてまとめると、1位のパナソニックを抜いて1位になります。

パナソニックや三菱電機グループの出願をAIテキストマイニングのワードクラウドで見てみると、

いずれも加熱調理器であることが分かります。ちなみにパナソニッククッキングのサイトではパエリアのレシピが紹介されています(我が家はヘルシオ)。

味の素やJ-オイルミルズの出願もパエリアそのものではありません。J-オイルミルズの出願を見てみると、

・粒状物、それを用いた飲食品および粒状物の製造方法
・米飯改良剤、それを用いた米飯食品および米飯改良剤の製造方法

というタイトルで、出願・権利化していますが、パエリアそのものというよりも

本発明における粒状物をたとえば生米と粒状物との合計に対して0.3重量%以上7重量%以下添加して炊飯することにより、米飯食品が得られる。粒状物を米飯食品の製造に用いることにより、炊飯後の常温保存、流通時に劣化するご飯のつやや粘りを維持、向上させることが可能である。そのため、コンビニエンスストアやスーパーストアに陳列するようなお弁当用のご飯、おにぎり、炊き込みご飯、炒飯、パエリア、リゾットなど幅広い米飯食品に利用することができる。

特許5198692より

のように「でん粉を含む材料の分散性を向上させる」ための技術で、パエリアそのものではありません。

パエリアの素みたいな出願はないのかな~と思い、次のテーブルマークの出願を見てみると、発明の名称が

・血糖値低下用又はGI値低下用の組成物又は組み合わせ
・デンプン含有食品用添加剤
・血糖値低下用又はGI値低減用の食品組成物又は組み合わせ
・たこ焼き用成形タコ及びこれを使用したたこ焼きの製造方法

となっているのでパエリアじゃなさそう。。。気を取り直して次のハウス食品の出願を見てみると、

特開2021-023253
流動状調味組成物
【課題】本発明は、加熱の後に硬質化した糖質を含む穀物食品に適用しても、その特有の硬質な食感の低下を抑制することができる流動状調味組成物を提供することを目的としている。
【解決手段】水溶性糖質を含有し、かつ水分活性の低い流動状調味組成物を使用すれば、加熱の後に硬質化した糖質を含む穀物食品において、それ特有の硬質な食感の低下を抑制することができる。

お、なんかシーズニング関連なのでパエリア関連出願か。。。と特許請求の範囲を確認すると

1.水溶性糖質を含有する流動状調味組成物であって、水分活性(Aw)が0.79以下であり、前記水溶性糖質の固形分の合計含有量が、前記流動状調味組成物の全質量に対して35質量%以上である、流動状調味組成物。
2.加熱の後に硬質化した糖質を含む穀物食品を調味するためのものである、請求項1に記載の流動状調味組成物。
3.水溶性糖質を含有する流動状調味組成物であって、水分活性(Aw)が0.79以下であり、加熱の後に硬質化した糖質を含む穀物食品を調味するためのものである、流動状調味組成物。
4.前記穀物食品が、焼き目を有している、請求項2又は3に記載の流動状調味組成物。
5.非濃縮タイプである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の流動状調味組成物。
6.油脂含有量が、前記流動状調味組成物の全質量に対して4質量%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の流動状調味組成物。
7.食塩及び/又は味噌をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の流動状調味組成物。

となっていて、焼き目を有している穀物食品を念頭に置いている出願であることが分かります。そこで実施例を見ていくと、

本明細書に記載の「穀物食品」とは、穀物を主原料とする食品のことをいい、例えば、炊飯米、餅、パン類、麺類、点心用皮、饅頭用皮、又は焼き菓子などが例示され得る。加熱の後に硬質化した糖質を含む前記穀物食品は、特に限定されないが、例えば、お焦げ又はそれを含む炊飯米(石焼ビビンバ、石焼チャーハン、焼きおにぎり、及びパエリアなど)、中華おこげ、揚げ餅、ラスク、トースト、かた焼きそば、皿うどん、焼き餃子、焼き饅頭、にら饅頭、かりんとう饅頭、パンケーキ、及びベルギーワッフルなどであってもよい。

とパエリア発見。

他にもざっと特許を眺めてみましたが、パエリアそのものに特徴がある出願というよりも、米飯の1つの例としてパエリアを挙げているもの、加熱調理器などで調理する例としてパエリアを挙げているものがほとんどでした。

4 パエリア関連の意匠・商標出願は?

最後に、念のためにパエリア関連の意匠・商標(パエリア弁理士以外に)があるのか確認してみました。

まずは意匠ですが、【意匠に係る物品の説明】に「パエリア パエーヤ パエージャ」のいずれかが含まれているかで検索してみました。

すると1件ヒット。

パエリア専用の鍋かと思ったら、そうではありませんでした。ただパエリア関連意匠は1件ありました(あくまでもキーワードベースで)。

次に商標。まずは称呼(類似検索)で検索してみると、

まずはドンピシャのパエリア。

ただし、これは食べ物ではなくインターロッキングブロックの製品名として使われているものです。

食べ物のパエリアで商標あるかな。。。と探していくと、

2つ目はパエリアレストラン

3つ目はPaellaManiaで、

特定非営利活動法人全日本パエリア連盟のウェブサイトで利用されていますが

商標権者はスペイン料理屋アノカドレストランを運営しているエルカミーノという会社でした。

そして、「パエリア弁理士」の商標出願した中村さんの名前で調べると。。。

近所のスペイン料理レストランのシェフが、全日本パエリア連盟という団体で、パエリャの正しい知識・技術を広める活動をされていたのです。
全日本パエリア連盟では、パエリャの知識を順を追って深めていく「パエリャ検定Ⓡ」という検定を主宰しており、ものは試しと思って参加しました。

のようにPaellaManiaの全日本パエリア連盟とも関係があったということが分かりました。

おわりに

今までパエリア食べたことはありますが、本格的なパエリアを食べたことないので、ぜひMarkstone知的財産事務所の中村さんに指南いただいて美味しいパエリアを食べに行きたくなりました。

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