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【特許から見る】アパホテルのチェックイン&チェックアウトシステム

「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

新型コロナウイルス感染症が流行してから在宅勤務・テレワーク中心で働いている方も多いかと思うのですが、私は基本的に新橋にあるオフィスに通っています。

とはいえ、社員は私1名、ずっとオフィスで働いていても刺激がないので、たまに働く場所を変えたくなります。

そんな時に見つけたのが、アパホテルの日帰りプラン。最大朝8時から夜19時までのプランがあるのですが、結構便利で結構利用させてもらっています。おそらく昨年20回ぐらいは日帰りプランを利用したのではないでしょうか。

それはさておき、本題に。

本日のタイトルにもありますが、アパホテルに宿泊(正確にいうと泊まってはいないのですが)すると、アプリチェックイン専用機とチェックアウト時に利用するエクスプレスチェックアウトポストが気になります。

というのも、いずれもプレスリリース等で共同研究開発や特許出願に言及しているんです。

チェックインの方はこちら。

チェックインについては、

専用機はアパホテルが掲げるお客様の時間を大切にする“Time is life(時は命なり)”のコンセプトに基づき、「待たない」「並ばない」チェックインを実現する為、オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社と協業開発した。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000362.000018265.html

オムロンと協業開発したとのこと。一方、エクスプレスチェックアウトポストについては、

1秒チェックアウトは追加清算のないお客様はフロントに立ち寄らずにエクスプレスチェックアウトポスト※⑥にルームキーを入れるだけでチェックアウトを完了することができる。

※⑥業界初(自社調べ)、ルームキーを投函するとリアルタイムでチェックアウト処理が行われる。特許出願中。未導入のホテルにはフリーチェックアウトポストを導入している。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000410.000018265.html

ということで、特許出願中である点に言及しています。

このアパホテルのチェックイン・チェックアウトシステムに関する特許がどのようなものか調べてみました。

まずは、Google PatentsでAssigneeをアパホテルにして検索してみると1件ヒットしました。

タイトルは「ルームキー回収ボックス及びこれを用いたチェックアウトシステム(Room key recovery box and checkout system using the same)」なので、チェックアウトシステムに関する出願です。

ヒットしたのはWO特許(PCT出願)ですが、Wordlwide application(パテントファミリー・対応特許)を見ると、JPがあります。

内容は変わらないと思いますが、JPのリンクをクリックすると、公報番号はJP2020154435A(特開2020-154435)

出願日は2019年3月18日なんですが、これは新型コロナウイルス感染症の流行に踏まえて非接触化を図ってこのエクスプレスチェックアウトポストを考えたわけではなく、新型コロナウイルス感染症の前からこのようなシステムを考えていたんですね。

宿泊客にとって、短時間でチェックアウトしたい、わざわざフロントでスタッフと話をせずにサッサとチェックアウトしたいという課題を解決しようとこのエクスプレスチェックアウトポストを考えたと思うのですが、結果的に人と人の接触を減らすという新型コロナウイルス感染症対策にもつながっていたのは偶然の一致とはいえ素晴らしいですね。

さて、アパホテルが出願人の特許は上記の1件しかありませんでした(正確にいうと日本・PCT出願の1ファミリー)。


もう1つのアプリチェックイン専用機ですが、これは協業開発したオムロン名義で出願されていると考えられます。まずはオムロンソーシアルソリューションズ株式会社で検索してみましたが・・・・

ヒットしませんでした。そのため、出願人・権利者(Assignee)をオムロンにして検索してみます。

当たり前ですが、8万件以上ヒットしてしまうので、キーワードで絞り込んでみます。

まずは、チェックイン と ホテル だけでキーワードで絞り込んでみます。すると、1件目に「施設利用管理システム、施設利用管理方法、及びプログラム」という関連する特許が見つかりました。

JP6614291B1(特許第6614291号)
施設利用管理システム、施設利用管理方法、及びプログラム
【課題】施設の利用許可手続きを円滑に行うとともに、利用者の旅券情報や身分情報などの本人情報の入手状況を容易に確認することが可能な施設利用管理システム、施設利用管理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】宿泊施設チェックインシステム100において、宿泊施設のチェックイン手続きに用いられるチェックイン端末20から他の利用者の旅券画像が入力されなかった場合に、予約情報における他の利用者の旅券読取状況の欄に未入力情報「未」が登録される。また、チェックアウト手続きの際に、入力されなかった旅券画像の入力が受け付けられる。これにより、宿泊施設の従業員は、管理装置10の記憶部12内の予約管理データ121を確認することにより、宿泊者のうち、旅券画像を取得していない者を容易に特定することができる。

図面を見ると、アパホテルにおいてあるものとは少し違いますが

https://www.apahotel.com/hotel/syutoken/tokyo/hirakawacho-hanzomon/

全文中には

読取部25は、読取面に接触されるように対向配置された旅券を読み取って、旅券のイメージ画像(旅券画像)を取得するものであり、所謂スキャナー装置である。また、読取部25は、予約情報を含む前記QRコードを読み取る機能を備えてもよい。読取部25によって読み取られた旅券画像の画像データは、管理装置10に送られて、管理装置10の記憶部12に記憶される。

とあり、アパホテルのアプリでQRコードをかざすとチェックインできるシステムについても含まれていることが分かります。

他の特許を見ても、アパホテルのアプリチェックイン専用機に関する特許は見つかりませんでした。

念のために、上記の特許にはホテルを「宿泊施設」と記載されていたので、ホテルにOR演算で宿泊施設を追加しましたが、結果としては変わりませんでした。

よく利用しているアパホテルにもこのような形で特許出願・権利化されている技術が利用されているというのは、なかなか嬉しいものです。

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