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【特許から見る】アールグレイの出願状況

「知財情報を組織の力に®︎」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

突然ですが、私はアールグレイティーが好きです。

ティーパックで飲むアールグレイも良いですが、ペットボトルだとセブンイレブンのアールグレイが最強です。

まぁ、アールグレイが好きではない方には単に癖の強い紅茶になってしまいますが。

さて今回は私が好きなアールグレイに関する特許・実用新案について、その出願状況を確認してみたいと思います。

1 J-PlatPatで分析母集団を形成する

まず、J-PlatPat特許・実用新案検索メニューの[全文]で以下のように検索してみます。

アールグレイと、中黒が入っているアール・グレイの2つをOR演算で検索します(出願日は2002年1月1日以降)。

実は[全文]で検索すると

のように出願人などに含まれるキーワードもヒットしてしまいます。そこで、

のようにキーワードを入力して、[条件を論理式に展開]すると

のようにすべてAND演算になってしまうので、マニュアルで

[アールグレイ/TI+アール・グレイ/TI]*[アールグレイ/AB+アール・グレイ/AB]*[アールグレイ/CL+アール・グレイ/CL]*[アールグレイ/SP+アール・グレイ/SP]

のAND演算の * をOR演算の + に変換します。

[アールグレイ/TI+アール・グレイ/TI]+[アールグレイ/AB+アール・グレイ/AB]+[アールグレイ/CL+アール・グレイ/CL]+[アールグレイ/SP+アール・グレイ/SP]

として、出願日を2002年1月1日以降に設定して検索しすると、

59件がヒットしました。この59件をベースに分析を行っていきます。

2 アールグレイに関する特許・実用新案出願トレンド

まずはアールグレイに関する日本の特許・実用新案出願件数推移です。

母集団自体が59件と小さいため、特に目立ったトレンドはありません。しいて言えば2010年代に入って出願件数が増加傾向にあるということぐらいでしょうか。

ちなみに、飲食分野については従来出願規模が小さいため、統計解析的なアプローチよりも公報1件1件を読んでいく分析のアプローチの方が主流だったと思います。しかし最近はフードテックというキーワードが登場しているように、デジタル技術の融合が進んでいるので、統計解析的なアプローチが重要になる場面も増えてくると思います。

3 アールグレイについて出願している出願人

続いて出願人・権利者ランキングマップです(登録は権利存続中および消滅済みのいずれも含む)。

トップはライオンです。どんな特許を出願しているのかというと、

  • 特許6667340 衣料用液体漂白洗浄剤組成物

  • 特許6575990 繊維製品用の液体洗浄剤

  • 特許5478302 液体漂白洗剤組成物

  • 特許5191640 洗濯用前処理剤組成物、洗濯用前処理剤製品及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法

いずれも洗剤関連です。どのような文脈でアールグレイが登場するのかというと、

洗浄力評価用の汚れた布を調整するためでした。ちなみに日東紅茶のアールグレイは家で愛飲しています。

2位はガネーデンバイオテック(Ganeden Biotech)というプロバイオティクス原料メーカーで、食品や栄養補助食品のメーカーに製品販売しています(2017年にKerry Groupに買収されています)。

他にランキング上位で気になったのが半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスです。なんで半導体メーカーが紅茶に関する記載が。。。?と思ったのですが、実は

なんと人の名前で「アール・グレイ」がヒットしていました。これはノイズですので、ちゃんと分析を行う場合には公報を読み込んでノイズとして除外する必要があります(検索式上で除く場合には半導体関連特許分類であるH01LなどでNOT演算する方法もあります)。

ランキング上位といっても20年間で数件程度なので、出願人別件数推移をとってもあまり有意義な結果にならそうですが、一応。。。

直近出願を増やしているのは3位の共栄化学工業と4位の三井農林でした。

共栄化学工業としてアクリル加工メーカーもあるのですが、こちらの共栄化学工業は肌科学などを手掛けているテクノテーブルと同じ住所にありました。出願も

特開2022-047468 皮膚外用剤
特開2021-172586 皮膚外用剤
特開2021-138659 プロテアーゼ活性亢進剤
特開2021-100925 皮膚外用剤

のように皮膚に関するものです。どこにアールグレイが登場するかというと

皮膚外用剤に含まれるツバキ科植物植物由来成分の1つとして例示されています。アールグレイそのものが特徴ではないようです。。。

ただ4位の三井農林は日東紅茶を抱えている企業ですので、アールグレイに特徴がある出願かな。。。と思ってみてみると

特開2022-067866 脳機能改善剤
特開2021-048795 脳機能低下抑制剤
特許6773941 睡眠改善剤

紅茶そのものというよりも脳機能改善剤の香質に対する許容性評価に利用されていました。

発明の名称・要約・特許請求の範囲のいずれかにアールグレイの記載がある特許・実用新案はないかな。。。と探していたところ、1件だけありました。出願人はレッドブルです。

特表2021-525090
レッド・ブル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【発明の名称】組成物、甘味付与用シロップおよび飲料の調製のためのその使用、ならびに飲料の調製
【要約】本発明は、スクロース、ルブソシドまたはルブソシド誘導体、およびタンニンを備える、甘味付与用のまたは甘味付与された組成物を提供する。また、本発明は、本発明に係る飲料を調製するためのプロセスにも関する。本発明はさらに、飲料に甘味を付与するための、かつ、飲料の調製における前駆物質としてのおよび改変特性を有するフレーバー物質としてのシロップを調製するための、かつ、甘味知覚の低下を本質的に呈することなく飲料中のスクロース含有量を低減するための、本発明に係る組成物の使用に属する。最後に、本発明は、人工甘味料の残留する甘味を短縮するため、かつ、人工甘味料の時間的な甘味知覚の開始を天然の糖の時間的な甘味知覚の開始へと移行させるための、ルブソシドまたはルブソシド誘導体とタンニンとを備える組み合わせの使用に関する。
【特許請求の範囲9】カルダモン、ショウガ、ガランガル、シナモン、クローブ、ナツメグ、ナツメグ油、コーラナッツ、コーラナッツ抽出物、コカ葉、ナツメグ花、コショウ、マスタードシード油およびマスタードシード、ミント、タイム、ローズマリー、エルダーベリー、マツ、メース、カンゾウ、カンゾウ抽出物、ハイビスカス、緑茶、紅茶、マテ、ワユサ、ルイボス、ハニーブッシュ、ウーロン、アールグレイ、カモミール、セージ、レモン、レモン果汁濃縮物、オレンジ、オレンジ油、グレープフルーツ、タンジェリン、ライム、ライム油、ザボン、ベルガモット、ビターオレンジ、ユズ、デコポン、ミカン、マンダリン、シークヮーサー、カラメル、トンカビーン、ハチミツ、バニラ、カカオ、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のフレーバー材料をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。

残念ながら私の好きなアールグレイそのものが発明の特徴になっている出願はありませんでした。。。。

おわりに

久しぶりの【特許から見る】シリーズでしたが、私の好きな紅茶アールグレイについて調べてみました。

統計解析グラフ(件数推移、ランキング)と何件かの公報を紹介しましたが、今回のようにヒットした特許・実用新案が59件と少ない場合、通常の分析プロジェクトであれば1件1件読み込んで分析しています。

みなさんも自分の好きな食べ物や飲み物で調べてみると意外な発見があるかもしれません。

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