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知財ガバナンス研究会第1回が開催されました-アドバイザーとして参画させていただきます-

株式会社HRガバナンス・リーダーズが主催する知財ガバナンス研究会の第1回研究会が昨日、4月8日に開催されました。

この知財ガバナンス研究会というのは、

2021年3月31日に金融庁で開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第26回)」において、コーポレートガバナンス・コードの改訂案として、企業のサステナビリティを確保するために、「知的財産への投資等の重要性に鑑み、取締役会で実効的に監督すること」や、「知的財産への投資等について具体的な情報を開示・提供すること」等を旨とした補充原則を追加規定することが提示されました。

を受けて、HRガバナンス・リーダーズが発足した研究会で、ナブテスコにおいて知財部長としてIPランドスケープ活動をけん引した菊地さんが幹事を務めています(菊地さんは現在HRガバナンス・リーダーズのフェロー)。

菊地さんは知財実務オンラインの第27回「知財戦略による企業経営・事業運営の革新と、 知財部門の組織改革・人財育成への取り組み」に登壇されています。

知財ガバナンス研究会の発足・メンバー募集について菊地さんがFacebookに投稿されていたのを見て知り、コンタクトしたところ、本研究会にアドバイザーとして参画させていただくことになりました。

本研究会でのディスカッションの詳細については、研究会メンバー内での取り扱いとなっていますが、私自身知財ガバナンスについて本研究会でいろいろと学ばせていただく身でありますので、公開情報に基づく内容や私の感じたことなどを本マガジンで共有していき、皆様にもぜひ知財ガバナンスについて知っていただき、知財をビジネスツールとして自組織を強くするために役立てていただきたいと思います。

1. 知財ガバナンス研究会の構成

研究会は、

事務局
メンバー
アドバイザー

で構成されていて、上述の通り、HRガバナンス・リーダーズが事務局を務め、幹事は菊地さん(元ナブテスコ)が務めています。

メンバーとしては大手企業の知財部長クラスの方々が参加されており、私はアドバイザーとして参画しています。

2. 知財ガバナンスが生まれた背景

昨今、ESG(E=環境、S=社会、G=ガバナンス)というキーワードをよく聞くと思いますが、営利組織である企業にとってもこれらの要素を踏まえた事業活動が求められていると同時に、投資家サイドにもESG的観点での投資が求められます。

上述した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第26回)」の資料「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(案) 」から抜粋すると(下線部は私が付加)、

3.サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課
題への取組み

中長期的な企業価値の向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会と
してもサステナビリティを巡る課題へ積極的・能動的に対応することの重要性は高まっている。また、サステナビリティに関しては、従来よりE(環境)の要素への注目が高まっているところであるが、それに加え、近年、人的資本への投資等のS(社会)の要素の重要性も指摘されている。人的資本への投資に加え、知的財産に関しても、国際競争力の強化という観点からは、より効果的な取組みが進むことが望ましいとの指摘もされている。

(中略)

また、企業の持続的な成長に向けた経営資源の配分に当たっては、人的資本
への投資や知的財産の創出が企業価値に与える影響が大きいとの指摘も鑑み
れば、人的資本や知的財産への投資等をはじめとする経営資源の配分等が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うことが必要となる。

(中略)

比較可能で整合性の取れた気候変動に関する開示の枠組みの策定に向け、我
が国もこうした動きに積極的に参画することが求められる。今後、IFRS財団におけるサステナビリティ開示の統一的な枠組みがTCFDの枠組みにも拠りつつ策定された場合には、これがTCFD提言と同等の枠組みに該当するものとなることが期待される。さらに、中長期的な企業価値向上に向けた人的資本や知的財産への投資等に係る具体的な情報開示も重要となる。

とあり、コーポレートガバナンス・コードへの追加規定(「知財ガバナンス」に関する補充原則)として

3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
4-2② 取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

という改定案が示されています(現時点ではパブリックコメントを募集中)。

経営に貢献する知財、事業に貢献する知財というムーブメントは以前からもありましたが、経営層・事業部門などへの浸透がなかなか難しい中、コーポレートガバナンスという経営層が重視すべき事項に「知的財産」という言葉が盛り込まれることは、2002年の小泉純一郎首相のいわゆる知財立国宣言(第154回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説

我が国は、既に、特許権など世界有数の知的財産を有しています。研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進します。

をより強く推進するものであり、第2の知財立国宣言と言えるのではないでしょうか。

補足:知財というのはあくまでも経営・事業を競争優位性を確保するための手段・ツールなので、知財立国という表現よりも知財活用立国といった方が良いかもしれません(この点は先日イーパテントYoutubeチャンネルのトークセッションに登壇いただいた弁理士の内山先生もそのように言及)

今後大きなトレンドとなる知財ガバナンスについて、関心度合いも非常に高いメンバー企業の方々の中にアドバイザーとして参画させていただけるというのは非常にありがたいです。

3. 経営と知財をどう架橋するのか?

コーポレートガバナンスコードで経営層、スチュワートシップコードで投資家へ知的財産の重要性を強調するとはいえ、課題として残るのが「経営と知財をどう架橋するのか?」という点です。

これは研究会アドバイザーでもあるKIT虎ノ門大学院の杉光先生が知的財産戦略本部の第3回構想委員会で指摘されています。

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その上で、

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ESG投資を前提とする長期投資指標の策定を提言されています。

同じ知的財産戦略本部の第3回構想委員会には新規事業開発 / 技術活用コンサルティング等を手掛けているアスタミューゼの永井社長もスピーカーとして招聘されていて「ESG視点からの知財活用・投資促進について」という資料で、

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アスタミューゼの取り組みについて紹介されていますので、ぜひ資料を確認いただければと思います。

4. ISOにおける知的財産マネジメントの標準化

もう1つ触れておきたいのが、ISOにおける知的財産マネジメントの標準化です。

私自身、見落としていたのですが昨年11月に

ISO 56005:2020
Innovation management — Tools and methods for intellectual property management — Guidance

が発行していることを研究会幹事の菊地さんの発表で知りました(これは既に公開されている情報なので本noteで共有させていただきます)。

Figure 1「IP management activities which contribute to innovation management」は

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のようになっており、1. IP Landscapingが記されています。

こちらの全文PDFドキュメントを購入しましたが、まだ詳細については読み込んでいないため、別のnote記事として今後取りまとめたいと思います。

補足:ざっと読んだ感じでは、知財状況の俯瞰という意味合いで使われており、今までの英語でのIP Landscape/IP Landscapingと同じだという認識です(参考:https://www.finnegan.com/en/insights/articles/ip-landscaping-creating-a-conceptual-fabric-of-information.html

5. まとめと今後

上述の通り、知財ガバナンス研究会のディスカッション内容の詳細についてはここで開示することはできませんが、経営に貢献する知財、事業に貢献する知財、そして昨今のトレンドであるESGやSDGsには知財ガバナンスというテーマは非常に重要であると感じていますので、私の所感なり、研究会で知った公開されている情報、そして研究会において今後私の方から発信させていただく情報などについてnoteを通じて発信していきたいと思います。

研究会に興味を持たれた方は知財ガバナンス研究会のお問い合わせフォームよりぜひ株式会社HRガバナンス・リーダーズへコンタクトいただければと思います。

最後に宣伝となりますが、イーパテントYoutubeチャンネルのトークセッション知財ガバナンス研究会の幹事である菊地さんには、イーパテントYoutubeチャンネルのトークセッションに登壇いただき、知財ガバナンスの最新の状況についていろいろと伺っていきますので、ぜひともご視聴いただければ幸いです。


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