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今年の漢字🄬に選ばれた”密”に関する今年の国内特許出願は?-新型コロナウイルス感染症対策技術に関する出願と合わせて-

日本漢字能力検定協会が毎年実施している「今年の漢字🄬」。

今年の漢字は  でした。

この今年の漢字に関連する日本国内特許出願はどんな内容が多かったのか調べてみました。

正確にいうと特許は出願されてから1年半後に公開されます。そのため、2020年に出願された国内特許は2021~2022年に発行されるので、分析したのは2020年1月1日~12月20日に発行された特許・実用新案を対象にしています。

あくまで”密”というキーワードを含んでいる特許を調べているので、新型コロナウイルス感染症の密にならないような対策技術ではありませんので、その点ご留意ください。

1. ”密”に関する国内特許・実用新案について調べる

特許情報プラットフォームJ-PlatPatで”密”に関する特許・実用新案を調べます。

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発明の名称に  を含む特許・実用新案を検索します(要約にすると件数が6,000件強になってしまったので、発明の名称のみとさせていただきました)。

その結果、406件がヒットしました。

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この406件について、企業(出願人・権利者)ランキングを取ってみると

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となりました。ダントツトップが日本初のオイルシールメーカーであるNOK(旧社名:日本オイルシール工業)でした。

発明の名称をユーザーローカルのAIテキストマイニングでテキストマイニング(名詞のみ)してみると、

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のように

密封
密閉
気密
水密
密度

などのキーワードが多いことが分かります。

ウイルス対策の密技術はないかと思い、キーワードで絞り込んでみたところ

実登3226501
【考案の名称】密着立体マスク
【要約】 
【課題】紐を無くし、マスクのふちをテープで貼ることで、マスクと顔を密着することができ、口と鼻の前に立体的に空間を作り呼吸をしやすくしたマスクを提供する。
【解決手段】和紙製または薄いゴム製のマスクのふちにテープ4を貼りつけることでマスクと顔を密着し、マスクに空気穴3をつけ、口と鼻の前に立体的に空間を作り、マスク内部には取り換えフィルター2をつけることで、外部の花粉やウイルスを吸い込まずに呼吸をしやすくした。さらに取り換えフィルターに茶のカテキンを入れることで、抗菌作用が働き、ウイルスや細菌から人体を守ることができる。

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がありました。しかし実施例中にも新型コロナウイルス感染症への言及はなく、いわゆる通常の花粉対策・ウイルス対策を念頭に置いた出願のようです。

2. 新型コロナウイルス感染症対策技術の出願は?

それでは、2020年に発行された特許・実用新案で新型コロナウイルス感染症対策技術に関する出願はどのようなものがあるのでしょうか?

今度は検索条件を

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のように変更すると、215件(特許35件、実用新案180件)がヒットしました。

日本国内で新型コロナウイルス感染症の影響が出始めたのが2月下旬~3月上旬ということで、出願月別の推移を見てみると、

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となり、3月以降から出願が増えて、6月に急増していることが分かります。実用新案は無審査ですので出願から数か月で公開されますが、上述した通り特許については出願から1年半経過しないと原則公開されませんので、上記はあくまでも参考値です(来年以降今年出願された特許が続々と公開されます)。

しかし、よくよく見ると2018年9月に出願された特許が1件今年公開されています。こちらは

特開2020-042685
【発明の名称】感染症検査結果情報共有システム、感染症検査結果情報共有方法
【要約】
【課題】本発明は、従業員が自宅においてインフルエンザの罹患状況について検査することを可能にすることで、排菌をしている状態での職場への出勤を防ぎ、且つ、排菌をしていない状態になったら速やかに従業員の復職を可能にすることで、所属企業の損失を最小限にする感染症検査結果情報共有システム、及び、感染症検査結果情報共有方法を提供する。
【解決方法】従業員計算機、所属企業計算機、及び、医師計算機等によって、自己検査結果情報等を共有する感染症検査結果情報共有システム及び感染症検査結果情報共有方法。

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という特許で、実施例中に

【0104】例えば、実施形態においては、感染症としてインフルエンザを例として挙げたが、他の感染症、すなわち他の細菌やウィルスが引き起こす疾患、例えば新型コロナウィルスによるSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)やノロ感染症等であっても良い。

のように新型コロナウイルスについても言及されています(おそらくCOVID-19を念頭においていなかったと思いますが)。

さて、それでは今年公開された新型コロナウイルス感染症対策技術に関して出願している企業(出願人・権利者)を見ると、

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のように大手企業というよりは中小企業が中心のようです。

出願内容をテキストマイニングで確認すると

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のように、やはりマスクやフェイスシールド・フェイスガード、パーティションにより飛沫感染防止に関する出願が多いようです。

キーワードの共起ネットワークも確認してみましょう。

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マスクやパーティションによる飛沫感染防止などの他に、左側にはプラズマによる空気洗浄に関するクラスターが確認できます。

特開2020-163232
【発明の名称】プラズマを用いた空気清浄装置
【要約】
【課題】新型コロナウイルスや新型インフルエンザウイルス等を含む空気中に浮遊するウイルス、病原菌、カビ毒等をプラズマで殺菌あるいは不活性化する空気清浄装置の実用化が期待されている。しかしながら、大容量の空間を対象に、確実に、迅速に、プラズマ処理することが困難であるという課題がある。この課題を解消可能な空気清浄装置を提供すること。
【解決手段】プラズマ処理対象の空気入口と吹き出し口を備えた筐体の内部に、流線形の接地電極と、線状あるいは帯状の非接地電極と、誘電体膜を備えた誘電体バリア放電ナローギャッププラズマ発生手段を配置して圧損の少ない空気流路を形成し、プラズマ処理を行うことを特徴とする。更に、該接地電極表面に凹凸を設けて電界の集中化を行うことを特徴とする。

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他にも下に運動エネルギーに関するクラスターがありますが、これは「爆発的運動エネルギーが活用できる下半身衣類」や「筋力強化運動において、性感覚を刺激し、爆発的運動エネルギーが活用できる器具」といった出願です(面白い内容なのでぜひクリックして見てください)

3. おわりに

以上、今年の漢字に選ばれた”密”に関する出願と、新型コロナウイルス感染症対策技術に関する出願についてテキストマイニングなども用いて概観してきました。

今回用いたユーザーローカルのAIテキストマイニングは無料で利用できるツールですので、皆さんもぜひ使ってみてください。

また新型コロナウイルス感染症技術に関する出願については今後もこちらのnoteの方で適宜取り上げていきたいと思います。

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