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知財ガバナンス™セミナー 「企業を持続的に成長させる知財ガバナンス™戦略とは」

「知財情報を組織の力に🄬」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

本noteでも2021年6月に発表されたコーポレートガバナンス・コード改定に知的財産への投資が盛り込まれたことについて、折に触れて発信してきました。

2021年より始動している知財ガバナンス研究会にも、私もアドバイザーとして参画させていただいています。その知財ガバナンス研究会が知財実務オンラインとコラボで知財ガバナンス™セミナー 「企業を持続的に成長させる知財ガバナンス™戦略とは」を先週木曜日に配信しました。

リアルタイムで視聴された方もいらっしゃるかと思いますが、私の所感も含めてこちらの内容について紹介させていただきます。

以下のコメントは私個人の感想であって知財ガバナンス研究会アドバイザーとしての立場での意見ではありませんのでご留意ください。

1. 企業の競争力強化に向けた知財投資・活用促進について

最初は知財ガバナンス研究会のアドバイザーでもあり、内閣府知的財産戦略推進事務局で知財戦略推進を担っている参事官・川上敏寛氏です(以下のリンクは川上氏のスピーチから開始)。

私自身、知財ガバナンス研究会や知財ガバナンス関連の論考執筆のためいろいろと情報収集をしているので、既に知っていることが多かったのですが、知財ガバナンスに関して今どのような状況にあるのか?、今後どのようなスケジュールで対応していかなければならないのか?について要点がまとまっています。

まだ知財ガバナンスについて全体像を把握していない方には基礎事項を学ぶのに適していると思います。

2. 企業の知財ガバナンス™への取り組みと、知財ガバナンス™研究会の役割

次に元ナブテスコ知財部長であり現在HRガバナンス・リーダーズ株式会社のフェローで、知財ガバナンス研究会をけん引している菊地修氏。

こちらも、私が知財ガバナンス研究会に参加しており、毎月の定例会で最新の情報を入手させていただけるという立場にあるので、既に知っている情報が多かったというのは最初の川上氏のプレゼント同様です。

しかし、知財ガバナンスについてこれからいろいろと情報収集しようという方には、川上氏の国の政策動向とは違い、企業の視点からどのような取り組みが今後求められるのか?という点について菊地氏が整理されていますので、参考になる点が多いと思います。

最後の方で知財ガバナンス研究会の紹介も行っていますが、現在メンバー数が100社を超えていますので、まだ入会されていなければぜひとも入会を検討されてはいかがでしょうか。

なお、川上氏・菊地氏のプレゼンで共通して強調されていたのは、知的財産というのものを狭く特許権や意匠権・商標権のように知的財産権として狭くとらえるのではなく、知的資産・無形資産という広い枠で捉えるべきという点です。

当然、知的資産・無形資産まで範囲を拡張すると、知的財産部門だけで対応するのは難しいので、経営層や企画部門、IR部門など部門横断型で対応する必要があると思います。

3. イノベーションリーダーへの変貌を促す知財ガバナンスへの挑戦

ここからは企業知財部門の立場からの発表となります。最初に大企業の立場としてナブテスコ知的財産部長の井上 博之氏からの発表。

まず経済産業省の知的資産経営の定義をベースに、ナブテスコの知財戦略活動というものをしっかりと定義している点は素晴らしいと感じました。

「先読み」というキーワードが出てきましたが、この点は元キヤノン・丸島先生の『知的財産戦略』にも出てくるキーワードで、知財と経営がリンクしている企業の共通性を感じました。

その他にも、前任の菊地部長(現在HRガバナンス・リーダーズ)の時代から感じていたことでありますが知財活動を非常にクリアに体系化されているので、今後知財ガバナンスへの対応だけではなく、戦略的な知財活動をされる際の参考になると考えます。

また、スライド資料にフレームワーク(VRIO、両利きの経営)も登場しますが、単純にフレームワークに当てはめましたというものではなく、自社活動を咀嚼した上でフレームワークに沿ってうまくまとめているという印象を持ちました。

4. 知財情報発信と知財活用によるブランド価値の向上

企業知財部門の立場からの発表として続いて中小企業である株式会社アールシーコア 社長室 知財企画リーダーの勝間 康裕氏からの発表。

アールシーコアは連結で300名ほど、単体で160名ほどの企業規模で、知財グループは社長室に属しています。

知財という立場からですと知財ミックス(特許・意匠・商標)の活用もとても興味があるのですが、知財を各種ステークホルダーとのコミュニケーションツールとしてうまく利用し、さらには感性や感情という面を重視していることが伝わってくる発表でした。

コーポレートガバナンス・コード改定による知的財産への投資への対応はまず上場企業を念頭に置いていますが(アールシーコアも上場企業)、中小企業やベンチャー・スタートアップ企業であっても、自社の競争優位性・強みをステークホルダーの方々に認識していただくことは非常に重要なので、ナブテスコのような大企業とは違った取り組み度合いは参考になります。

ちなみに今回の配信で勝間氏とナビゲーターの加島さん、押谷さんはアールシーコアの代官山にあるBESS MAGMAにいらっしゃったのですが、こういう家欲しいなと思います(オフィスでも良いですが)。

5. 投資家の視点から見た、企業の知財ガバナンスへの期待

最後は投資家サイドからの発表ということで株式会社SBI証券 金融調査部 波多野 紅美氏です。波多野氏はチーフクオンツアナリストで、クオンツアナリストとは

金融機関の資産運用計画の基礎となる予測モデルを構築したり分析する業務。高度な数学を駆使する金融工学のスペシャリスト(出所:リクルートエージェント

です。

波多野氏の発表で興味を持ったのは特許価値評価指標YK値を用いた研究結果です。私自身、特許価値評価(レイティング・スコアリング含む)に興味があるので、とても興味深く視聴していました。

アカデミアの分野で株価や時価総額、企業価値と知財の関係性に関する研究は今までもあったと思うのですが、投資家サイドが知財に注目してきたのは最近のことだと思います(以下のGPIFのように)。

知財と株価・時価総額の関係性について研究する際に注意しなければいけないのが、相関関係ではなく因果関係までちゃんと説明できるかどうかだと考えています。

価値のある知財を持っているから株価が上がるのか?一方で、価値のある知財を持っているとしても、それが利益につながっていない企業もあるのではないか?といつも悩んでしまいます。。。

とはいえ、過去の研究結果などもいろいろと調べながら自分なりの考え方や方法論を確立していこうと再考するきっかけをもらった発表でした。

おわりに

以上、知財ガバナンス™セミナー 「企業を持続的に成長させる知財ガバナンス™戦略とは」について、私見を踏まえて発表内容を紹介させていただきました。

まだ視聴されていない方は知財ガバナンスについての最新情報を入手することができますので、ぜひとも視聴いただければと思います。

ただし、現在知財ガバナンスについては非常に目まぐるしく動いているので、内閣府・知的財産戦略本部などの動きも定期的にウォッチされることをお勧めいたします。

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