この世界の片隅で(感想)
年末に原作を買ってから、1か月。
ようやく映画の方を観に行きました。
すごくいいよ!
とにかく観て!!(笑)
単に良かった、感動したでは無く、自分の中でゆっくり消化すると物凄い長文の感想が書ける内容ですw
ほんとね・・・
今回のblog書くのに1週間掛かりました(;^ω^)
伝えたいことを自分の言葉で表しきれないこのもどかしさときたら
で、今回は書きたいことを書き散らすことにしました。
そうでないと、自分がこの作品で何を感じたのか伝えきれないと思ったので
それぐらい己の中の何かに訴えかけてくる作品だと思います。
映画館で観るチャンスは今しかないですぞ。
物語の内容
広島に住む「すず」さんが、呉に嫁ぐ戦中時代が舞台の日常映画です。
時系列的に描かれており、主に昭和19年(1944年)~昭和20年(1945年)+αの中の出来事がメインストーリーとなっております。
1945年の8月6日と来れば、言わずもがな原爆投下の日であり、未来の歴史を知っている我々にとってドキドキさせられる部分が、この物語の一つのフックになっております。
結末はどうぞご自分でご覧になって観てください。
主人公について
すずさん
天然気味なおっとり系女子、絵が得意(凄い上手い)
結構他人の機微には敏感で、割と心に溜め込むタイプですが、それ以外は特別なことなど無く、至って普通の若きお嫁さんであります。
他の登場人物でもそうですが、特別な血筋や能力がある人は出ません。
戦場に行って戦う兵士が主人公だとするなら、一部を除いてほとんどはモブキャラ※となるのではないでしょうか。
それぐらい、普通の人たちによる普通の暮らしが丁寧に描かれております。
※モブキャラクター
原則として名前を持たず、「群衆」として扱われる。
漫画やアニメの中で、名前が明かされるキャラクターの背景に描かれる、偶然そこに居合わせた通行人達など。 ウィキペディア参照
作品から感じられること
①徹底的にリアルな描写
とにかくリアルです
原作の漫画であれ、アニメであれフィクションなのだから少しくらいサボっても罰は当たらないのかもしれないですが、そこを現実に忠実に描くことで、物語の内容に深みを出させております。
実際自分は、歴史資料として使えるレベルなのでは?と感じました。
・街の様子
どこを見ても細部に至るまでかなり調べられている模様
呉や広島の当時の様子がよくわかります。
風景を見て懐かしいと感じる方も大勢いらっしゃるようです。
背景に実在した方を登場させたりもしているようですね。
映画「この世界の片隅に」 こめられた思い NHKニュース おはよう日本
・音
すずさんの広島弁には癒されますが、高射砲や爆撃の音には心底ゾッとさせられます。
実際に現地で聞いていると思わされるくらいリアルです。
映画で使われるコトリンゴさんの歌もじわじわと身にしみます(オープニングの「悲しくてやりきれない」を聞いた時は泣きそうになりましたw)
・当時の世俗
若い夫婦の結婚が主題なので、恋愛ものとしても観れます。
昔の話なので、夫婦共々奥ゆかしい?というイメージでしたが、周作(すずさんの旦那)は結構ストレートに好きだと伝えてきます。
このような夫婦のあり方が当時の普通だとは思いませんが、実際奥ゆかしいか見たことあるわけでは無いので、この辺も結局は自分の想像力の偏りに気付かされます。
服装について↓
このようなツイートが、作品の世界が歴史的な出来事だけではない現実との地続き感を感じさせてくれるいい実例でしょう。
また〇月〇日の何時頃、当時の天気はどうだったかなども細かく調べられ作品に反映されております。
とにかく細かく、そしてリアルです。
徹底的にリアルに感じられるがゆえ、この作品から感じ取れる色々なものは説得力を発揮します。
それが自分の中にフィードバックして、今まで気付かなかった更なる発見に繋がるんじゃないかと思います。
②「戦時中」への新しい視点
戦時中のイメージは自分が過去教えられてきた限り、暗く重いものでした。(「欲しがりません、勝つまでは」のような)
私は戦後の「戦争は絶対やったらあかん」という命題のもとに考えられた教育を受けてきましたが、受け入れる側としてそれは辛くややこしい感情を湧き起こさせます。
「駄目だ、駄目だ」だけでは、心の奥底に届きにくいと思いませんか?
この作品は、そのような戦後によって作られた戦中のイメージではなく、「じゃあ実際の状況はどうだったの?」を考えるためような作品です。
作者のこうのさんは、原作のあとがきにおいて
戦時の生活を淡々と描き、そこに存在したであろう幾人もの「生の悲しみやきらめき」を知ることから、戦争という大きな出来事を理解することにした。
と仰ってます。
この作品が評価されることの一つに、このような今まで誰も目を向けてこなかった視点からの過去の歴史の問い直しがあるのでしょう。
終盤になるにつれ困難な状況が増していきますが、作品の中にある明るさが失われることはありません。
すずさん達の、つつましくも楽しげに過ごしている様子がリアルに感じられるからこそ、「実際、当時の人もこういう風に過ごしていたんじゃないか?」という感動があるのです。
③普通に生きることへの肯定
先ほども書きましたが、すずさんは戦争という大きな物語においてはモブキャラ同然であり、その行方を左右するような特別な力は与えられておりません。
基本的に状況に流され続けます。
同時期にやっている『君の名は。』が「きみと僕」の世界を描いているのだとしたら、この作品は「すずさんと、彼女を取り巻く世界そのもの」を描いております。
すずさんは自分が生きている困難な状況の世界において、淡々と、それでいて楽しく普通に生きようとしています。
却って現実世界の我々は、社会に出ると段々理解できますが、誰しもが物語の主役になれる訳ではないことに気付きます。
みんなどこかで妥協して、現実と折り合いを付けて生きているのです。
しかしこの作品は、「ナンバーワンでもオンリーワンでもない、ごくごく普通の日常の生き方」そのものが、物凄く愛おしく貴重に感じられるように描かれています。(それは戦時下だろうが関係ありません)
何度も言いますが、とてもリアルな作品です。
リアル過ぎて、時を経た2017年の現在と地続きを感じられる作品ですから、「かつてそうであった価値観は、現代においても同じ価値を持つのではないか?」という当たり前の感覚を思い起こさせてくれます。
ましてや、6年前には東日本大震災が起こり、日常とは簡単に崩れ去ってしまう可能性があることを私に付きつけました。
日々生きることに対して、ありのままを受け入れていいんだよと優しく諭された気分になります。
さいごに
本当にいい作品です
多くの人に、目に触れて欲しい内容だと思います。(自分は、漫画→映画→漫画→映画のループ予定)
同時に何度でも触れて欲しい。
10回は観た方がいいよっ!!(笑)
観る度に新しい発見と感動を感じられると思います。
おススメです(゚∀゚)b
何らかのアクションをいただけると、一人で記事を書いてるわけではないのだと感じられ、嬉しくて小躍りしちゃいます。