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【商工中金×アナザー・ジャパン商品開発プロジェクト】岐阜・美濃焼メーカーの新しい挑戦!お弁当みたいなカトラリーレスト「BENTO」

みなさんこんにちは!
2期セトラー・チュウブ代表の松澤です!
連載としてお届けしている「商工中金×アナザージャパンの商品開発プロジェクト」。
今回は、岐阜県土岐市で美濃焼をつくる東濃陶器株式会社と2期生セトラー松澤が共同で開発した「BENTO-美濃焼メーカーがつくったカトラリーレスト-」について、その誕生秘話をお届けします。


商工中金×アナザー・ジャパン共同商品開発プロジェクト

今回の商品開発は、アナザー・ジャパンのサポーター企業である株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)との共同プロジェクトとして進めてきました。

「アナザー・ジャパンとの出会いをきっかけに、新しい挑戦に踏み出す地方の中小企業を増やしたい」という想いから始動した本プロジェクト。商工中金がクライアントから商品開発に挑戦したい企業を募り、中川政七商店が商品開発講座を提供することで、商品開発に向けた準備を行いました。

2023年10月から11月にかけて行われた全3回の講座を経て、チュウゴクシコクエリアから1社、チュウブエリアから3社、計4社の地域メーカーがそれぞれセトラーとタッグを組み、商品開発に取り組んでいます。

東濃陶器さんのご紹介!

岐阜県土岐市、東美濃といわれる地域で、80年以上陶器づくりを続けてきた東濃陶器株式会社。

分業制で地域と深く縁を結びながら美濃焼のものづくりは受け継がれています。

中でも東濃陶器さんの強みはインクジェット技術。濃淡を繊細に表す立体的な絵付けの技術で、食卓を彩る器を届けています。

こんなに繊細に色の濃淡が出せるんです!

開発した商品をご紹介!

お弁当みたいな形のカトラリーレストを考案しました。

■BENTOの特徴
①箸だけでなく、フォークもスプーンもナイフも置ける!
②お弁当の蓋部分は小皿として使えて便利!
③作風や技法によって「黄瀬戸」・「志野」・「織部」に分類される美濃焼の多様性を色とデザインで表現!

少し長くなりますが、BENTOというコンセプトの背景をご説明します。

中高と部活や勉強に明け暮れた自分にとって、母親が作ってくれるお弁当は特別なものでした。
疲れていても元気が湧いてきて、「今日は何が入っているんだろう」という蓋を開ける時のワクワク感があって。
日々使っていくごとに、母親との思い出が積み重なって、代替のきかない宝物になっていく。
「お弁当って宝物みたいだな」って感じました。

それと同じことが、東濃陶器さんの作る陶器と東美濃地域との関係性においても成り立つのではないか?と考えたのがお弁当の形状を思いついたきっかけです。

分業制でたくさんの工程を経て作られていく美濃焼。
一つ一つの工程に関わる作り手の思いが形になり、それを手に取って使う人たちと一緒に思い出を積み重ねていく。

実際に形状も、箸置きの部分と蓋部分のセット販売になっており、蓋は小皿としてもお使いいただけます。

今までの箸置きには無いような「小さなお弁当」を表現できるよう、
細かい部分までこだわって作っていただきました!

東濃陶器さん×松澤で語る商品開発の裏側

ここからは、今回の商品開発に取り組んだ東濃陶器株式会社の山下さんと中垣さん、2期生の松澤が語る、商品開発の裏側をお届けしていきます!(インタビュアー:1期生山口)

ー今回の商品開発講座、実際に受けてみていかがでしたか?

山下さん:現状、商品開発をしようとなると、アイデアをとにかく形にしてつくってみるというやり方で行っていました。しかし、今回の講座で宿題ではターゲットを細かく設定するといった商品開発の前準備を経験させていただいて、年齢や性別といったことだけでなく、家族構成や暮らし方、趣味嗜好まで含めて自分の想像の中で架空の人物像を創り上げて・・みたいなことが、とても勉強になりました。学んだことは今の業務にも生かされていますし、つくる前の設計に時間をかける大切さを感じました。
今まではとにかく自分たちのアイデアと技術を持ち寄ってやってみる、という感じだったところから、戦略性が生まれてきたと思います。


ー講座が終わっての協業。松澤との商品をつくる過程で印象的だったことを教えてください。

山下さん:普段は商社の方だったりほかの美濃焼の作り手さんと仕事をすることはあっても、学生さんとの協業ははじめてです。松澤さんが、自分たちとだけでなく他のプロジェクトも進めているということを聞いて、このひとつでも大変だろうに複数やっているのがすごいなと思いました。そしてやはりアイデアの柔軟性には感動しましたね。自分たちの中では「お弁当」というイメージに膨らませるというのは生まれてこない考え方だったので、そこを助けていただきました。

一番初めにお弁当の形を思いついた際に書いた下書き。


年間を通して我々も商社の方と相当な商品をつくっているんですが、ものづくりで一番難しいのが0から1をつくることだと思っていて、全くないものから生み出すことがいつも苦労するポイントです。その考え方を今回商品のコンセプトを考えるうえでも松澤さんからも勉強させていただいたなと思います。
距離が離れている分、オンラインでのコミュニケーションが中心になったことも今までのものづくりと違って大変さはありましたが、協力しながら進めることができました。

東濃陶器さんの既存商品の説明を受けているところ。オンラインのコミュニケーションには難しさがあったため、常に電話などでも進捗共有をさせていただいていました。

ー松澤さんの印象に残ったところはどういったところですか?

松澤:
印象深いエピソードは沢山ありますが、1番は出張で現地に伺った事です。実際に商品を見た時の美しさに感動したのは勿論、それが生まれるまでにどれだけの人の想いだったり地域の方との結びつきがあるのかということを体感することができました。
具体的には、東濃陶器さんの位置する東美濃地域というのは、陶器事業で生み出した利益を地域の公園整備だったりとかまちづくりにそのまま還元しているそうです。陶器事業自体が地域を支える根本のインフラになっており、生活に欠かせないものであることを教えていただきました。また、この地域では陶器を贈り合う文化があることを伺い、そこから「お弁当」というコンセプトを思いついたという背景もあり、出張は印象に残っています。

土岐市駅のホーム。

中垣さん:もともと東美濃の地域というか、陶器業界自体が分業制なんですよ。分業制でうちは生地をつくります、とかうちは型をつくりますとか、素焼きしますとか釉薬をかけますとか分かれていて、そしてそれを販売する商社もあって、とにかく1つの会社だけでは最終的にお客様に届けるところまでいけないんです。そういうことから地域と結びつく文化が生まれているのかなと思います。周りとのつながりがないとものづくりがうまくできないので、うちとしても、仕入れ先または客先、商社の方とかを大切にしています。

トンネル釜で焼かれていく陶器。

ーそういったものづくりの背景も踏まえて生まれたコンセプトであり、商品だと思うのですが、改めてこだわりを教えてください。

山下さん:今回インバウンド向けに箸置きをつくろうということから始まって、アイデアがどんどん膨らんで弁当箱モチーフの箸置きというあたらしい商品が誕生しました。普通の箸置きではなく「開ける」というひと工夫が加わるので、ただの箸置きとしてだけではなくミニチュア的な楽しさもあるのが面白いところかなと思っています。

中垣さん:今までは丸いお皿ばかりをつくっていたので、形自体がこれまでに作ったことのない新しい挑戦でした。形が変わるとそれを型屋さんと相談しながらまた一から作っていくことになるので、アイデアを技術で形にしていく工程で試行錯誤しました。そういった連携も東美濃の文化を感じていただけるポイントになったら嬉しいです。

松澤:出張での経験に加えて、この箸置きがインバウンド向けの商品開発として始まったこともあり、海外でもお弁当文化が広がり始めている部分でも親和性があると感じました。東濃陶器さんの強みであるインクジェット技術を生かしたデザインも、アナザー・ジャパンのデザイナーのさきちゃんの協力のもと完成しました。

絵柄の試し印刷を何度もしていただき、線の太さや色合い等を調整していきます。

日本で最も使われている陶器である美濃焼は、外国の方に手に取ってもらうときに、美濃焼としてではなくMADE IN JAPANとして、日本の大きなくくりで捉えられてしまうんです。その課題を打破するために、デザインとしても美濃焼ならではの釉薬の美しさを生かしたデザインにすることを意識しました。

最後に

ー今回の商品開発を経て、アナザー・ジャパンでの販売に期待することや、今後の展望をお聞かせください。

山下さん:まずは、どういったお客さんに買っていただけるのか、どんなリアクションをいただけるのかを知りたいです。また、今後は松澤さんがいなくなっても、今回のことを思い返しながら松澤さんならこういうアイデアを出すんじゃないかなと、自分の中にもう一人の松澤さんを誕生させて考えられるようになりたいと思います・・!

中垣さん:半年間という長い期間をかけて商品開発したのははじめてでした。時間をかけたからこそ今回新しい形をつくるという挑戦にも踏み出すことができたので、箸置きだとか長角皿とか、今回の経験をもとにさらにいろんなバリエーションの商品を増やしていきたいなと思っています。
形を変えて作った今回の経験は今後いろんな場面で生かしたいです。

松澤:まずはもちろん、私たちの接客を通してたくさんの方に買っていただきたいなと思っています。もともとインバウンド向けという事ではあったんですけど、結構私としては、日本の方にとっても美濃焼という焼き物の魅力や可能性を感じ取っていただける商品になったんじゃないかなと思うので、いろんな方に、身近な「箸置き」を通して美濃焼の魅力を広げていきたいなと思います。

「BENTO-美濃焼メーカーがつくったカトラリーレスト-」はアナザー・ジャパンのオンラインショップからもご購入いただけます。ぜひご覧ください!


今回のライター:Erina Matsuzawa

アナザー・チュウブ
開催期間 2024年6月5日~2024年8月4日
場所 〒100-0004 東京都千代田区大手町2丁目6番3号
TOKYO TORCH銭瓶町ビルディング1F
営業時間 10:00-19:00
定休日 月曜・火曜
電話番号 03-6262-1375


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