「ドクターホフマンのサナトリウム 〜カフカ第四の長編〜」を再見
先日、NHK-BS「プレミアムステージ」で放送したケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の「ドクターホフマンのサナトリウム〜カフカ第四の長編〜」を見ました。
神奈川のKAAT芸術劇場で上演したときにも実際、足を運んでいるのですが、映像で見るとまた違う感想とかも湧いてきて面白かったです。
以前はてなブログに書いた(閉鎖中)ときの感想を転載しておきます。
ようやくまとめますが、、このあと野田地図とダルカラとキレイを打てるのか(笑)
ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作・演出で作られた新作。神奈川のKAAT神奈川芸術劇場での公演です。
元町・中華街駅から歩いてすぐですが、自分は田舎民なので、行くまでが長かった(笑)。実際はきれいな劇場で、内装が特に良かったです。
今回は珍しくパンフレットを購入。理由は袋とじという仕組みで、もともと見ることができる内容の袋とじの部分を開くと更に!という作りらしく、これはもう買わねばと。ちなみにまだ袋とじは開いていません。このまま開かずに置きたい気分です。
さてお芝居の感想ですが、プロジェクションマッピングが相変わらずうまくて、最初の列車のシーンでの役者の演技と合わせて、一気に世界観に引きずり込まれました。演出的にも二人の距離感をさり気なく列車内の座席の移動で示したり、ケラさんの演出の巧さをいつも感じます。
今回は現実世界と小説世界の行き来が起こる中、最後は小説が現実世界からの介入によって変化していき、それにともなって現実も変化していくという不思議さ。でもこの芝居を見ている観客にとっては、それがさもありなんで、そういう納得のさせ方が、ケラさんの凄さだと思います。
個人的には最後の軍靴の部分が、カフカの出自(ユダヤ人)というところにうまくつながって、そこに落とし込んだかと言う感じです。
カフカの未発表小説の発掘と発刊という話から始まるのですが、途中小説世界で起こる出来事は、理不尽だったり不条理だったりと、カフカっぽい話そのまま。創作世界なのだから、そこの道理ばかりが存在するはずもなく(現実でもそうですが)、そういう舞台上で起こる出来事をそのまま楽しむという傍観者のような視点が楽しめました。
多部未華子さんが演じる役は、特に小説世界での役柄が、非常に面白い。カーヤは控えめそうに見えて実は強引、優しそうに見えて実は強気みたいな感じで、愛する人ラパンを探しつつ、その過程で起こる出来事に対して、立ち向かう意思を見せる。そういう部分を多部さんが実に巧みに見せるので、やっぱりこの女優さんの引き出しの凄さは、、、という思いです。トークショーのときは可愛らしい感じもたくさん見せる方でしたが、スイッチしっかり入るすごい方です。
他の役者さんも皆さんすごいのですが、麻実れいさんの迫力がすごかった。冷酷さってああやってスパッと見せられるものなんだなと。特に特権階級の道楽をしているあたりは、今までかわいがっていた子をあっさりと捨てるあたりに、出来事というよりも、それが普通という空気感があることに凄さを感じました。
どんな感じになるかなあ、、という思いを持って見に行きましたが、個人的には比較的分かりやすかったし、ストーリーの中で起こる出来事は、道理がすぐに通らなくても、それも一つの出来事として受け止めるもんだと思っています。「なんで?」ではなくて、そういうこともあるんだなという感じです。あの「修道女たち」みたいなメイクも無機質さと表情を伺いにくい雰囲気が出ていて好きです。演劇は解釈はあとからでもついてくる部分はあるので、観劇中はひたすら舞台上での出来事に没頭しておくほうが良いですね。
この作品、映像化がないというのが非常に残念ですが、また再演してほしい作品です。
という感じです。
あらためて映像で見ると、もちろん違う印象も湧いてきて、面白かったのは、番組冒頭の多部さんと瀬戸さんのインタビューの中でエンディングがハッピーエンドかバッドエンドかみたいな話で意見が別れていたり、実際に映像であの顔を塗ったメイクを見ると、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出における無表情の作る空気感が、どれだけ作品世界に影響を与えているか?だったりします。
ブログの最後に映像化がない、、、と書いていたけど、こうやってあらためて映像で観ることができるのはありがたいことです。
このご時世、相変わらずの自粛の中で、次々と魅力的な舞台が公演中止になっています。
さて演劇は死んでしまったのか。
スポーツよりも上、下とか未だに意味のない論争を根に持つ人はいるのだろうか?
自分はこうやって手元に届く事があるコンテンツを楽しんで、再開したときの楽しみを増やしていこうと思っています。
スポーツも同じ。ラグビーも大好きな自分は、今年、まともに観ることなく終わってしまいました。
去年ワールドカップの喧騒が嘘のような状況です。
まあ、今はじっと息を潜めて、後でバッと騒ぎましょう。
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