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完結「兼業小説家志望」(仮題) コラボ小説 早川編
前回のお話
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あちら側の人間は、「早川」だ。
亀井はそう結論づけた。この小説を潰されてしまっては、みんなの命が危ない。その前に、止めないといけない。
まだ、昼間だ。今ならまだ早川に追いつくことが出来るかもしれない。亀井はすぐに早川と会った喫茶店を出て、早川を探した。
しかし、早川は辺りにいなかった。
亀井は、現代討論社にすぐに向かうことにして、タクシーに乗り込んだ。
「このままでは、早川に悪しからずの真相を消されてしまう」
早川を信じ込んでしまった自分を愚かしく感じた。渡邊の部下であるからと言って、マスコミを信じてしまうとは。
マスコミこそ、国と大きな力で結託されているというのに。
「早川さん、早川さんは戻って来られていますか」
現代討論社の受付で、亀井は早口で伝えた。
「早川ですか?確認いたしますので、少々お待ちください」
内線電話で確認して、受話器を置いた。
「申し訳ございませんが、早川は社内に戻って来ていないようです」
まだ、早川は現代討論社に戻ってきていなかった。そうすると、どこに向かっているのだろうか。
そう言えば、昨日、真理ちゃんの店で『さっき、亀井さんのアパートの近くをうろつく、うちの編集局長を見たんですよ』と、早川は言っていた。
「編集局長!早川さんの編集局長はおられますでしょうか?」
「編集局長ですか?アポイントはお取りになられていないんですよね?」
「ええ、アポイントは取っていないのですが、急用で。悪しからずの亀井と言えば、伝わるかと思います」
「分かりました。連絡してみます」
そうして、亀井は現代討論社9階の応接室に通された。
「亀井さん、ですね。はじめまして、現代討論社 編集局長の上月と申します」
そう言って、上月と名乗る白髪の編集局長から名刺を受け取った。
「早川さんのことでお話があるのですが…どちらに向われたか、ご存知でしょうか」
「ええ、知っておりますよ。彼は今、渦巻ビルにいます。渡邊が亡くなったビルです、ご存知でしょう?」
上月は、窓に視線を流して、亀井の回答に答えた。
「分かりました。渦巻ビルですね。そこで、何をしているか分かりませんが、向かってみます」
亀井は、上月の言葉を聞いてすぐに椅子から立ち上がり、応接室を後にした。
編集局長の上月は、電話をかけた。
「伊香田本部長。私です、上月です。奴は、渦巻ビルに向かいました。後は、よろしく頼みます」
亀井は、渦巻ビルの下に着いた。この中に、早川がいる、そう思うと亀井は何も考えずにビルの中に入っていった。
中は真っ暗だった。いったいこのビルは何なのだろうか。普通のビジネスオフィスだと思っていたのだが、どうやら使われていないビルのようだった。
すると、上から声が聞こえる。エレベーターが使えなかったため、階段で上がることにした。
6階ほどに差し掛かった時、奥に光が見えた。その方向に亀井は向かっていく。
だたっ広いガランとしたオフィスの真ん中あたりに人が倒れていた。あの背丈や服装は、早川だ。しかし、鞄はそこに無かった。
「早川!なぜだ、なぜなんだ?」
亀井は、倒れている早川に近づいた。息をしていなかった。
そこへパトカーのサイレンが鳴り響いた。亀井は茫然として、逃げることが出来なかった。パトカーの音が渦巻ビルの近くで止まった。
今、亀井は早川の殺害の裁判を受けている。何かしらの見えない巨大な力が働いているようにも見える。
亀井は、獄中の中で真相に辿り着けず、死刑宣告を受ける日を待っていた。
了
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