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完結「兼業小説家志望」(仮題) コラボ小説 歩行者b編
前回のお話
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あちら側の人間は、「歩行者b」だ。
亀井はそう結論づけた。この小説を潰されてしまっては、みんなの命が危ない。その前に、止めないといけない。
そもそも、「悪しからず」の構想を練っていたのは、歩行者bなのではないか。全ての真相を知るものは、この言葉の魔術師をおいて他にいない。
まだ、昼間だ。歩行者bは自宅にいるかもしれない。亀井はすぐに早川と会った喫茶店を出て、タクシーを拾い、歩行者bの家へ急ぎ向かった。
「えっ?お客さん、ここに行くんですか??」
「いいから、早く、車を出してくれ!急いでいるんだ!!」
「分かりました。でも、お客様…新幹線か、飛行機で行った方が早いと思うのですが…」
「そんな余裕は無いんだ!!早く、早く車を出してくれ!」
タクシーのおじさんは、困惑しながらも、関西に向けてタクシーを走らせた。
これで真相が分かる!!亀井は、そう心の中で呟いた。この「悪しからず」を書こうと思ったのも、歩行者bの記事がキッカケとなったのだ。
そこに気付かないとは、何たることか…私を産み出したのは、歩行者bなのだ。
早く真相を確かめたい。亀井は焦る気持ちをこらえて、後部座席に横たわった。
「運転手さん、お腹空かないですか?」
「ええ、ちょっと空いてきましたね」
「そこのNEOPASA静岡で、何か食べていきましょう」
この後、大変な戦いになるに違いない。亀井は、戦の前の腹ごしらえをすることとした。NEOPASA静岡で、海鮮丼を2人で食べた。アジが泳いでいて、とても新鮮な氣がした。とても美味しかった。
そして、素早く食べ終わると、車に乗り込み、走り出した。
しかし、ちょっと足らない。そんな腹の中だった。
「運転手さん、お腹空かないですか?」
「ええっ、さっき食べましたよ、海鮮丼」
「そこのNEOPASA浜松で、何か食べていきましょう」
激戦になるかもしれない。そう考えると、最後の晩餐をしたい気分であった亀井は、颯爽とタクシーから降りると、一目散にうな濱へと向かっていた。やっぱり浜松と言えば、鰻である。2人は鰻を食べた。浜松だから、鰻が美味しい、そんな氣がした。やっぱりとても美味しかった。
そして、素早く食べ終わると、車に乗り込み、走り出した。
しかし、デザートが足りない。そんな腹の中だった。
「運転手さん、甘いもの食べたいですよね?」
「あー、そうですか?私は、甘いものあまり食べないので…」
「そこの土山SAで、何か食べていきましょう」
やはりデザートは必要だ。そう考えると、甘いものを食べたい欲求が、膨れ上がった。よっこらしょと、タクシーから降りて、お店に入っていった。忍者のみたらし団子!?そんな食べ物があるのか。と、2人はみたらし団子をそれぞれ、3串ずつ食べた。甲賀が近いから、忍者なのか。そんな氣がした。甘い団子は、すっとお腹の中に入っていった。
そして、車に乗り込むと、亀井は満腹のあまり眠ってしまった。
「…お客さん、お客さん、起きてください。着きましたよ!」
亀井は、タクシーの運転手に起こされて、辺りを見回した。もうすっかり日が暮れてしまっていたが、京都駅はまだまだ人が沢山いるようだった。
「ついに、真相に辿り着くことが出来るのか!」
そう言って、亀井はタクシーから降りようとした時、声を掛けられた。
「お客さん、代金!!タクシーの代金を払ってないですよ」
「えっ?おいくらですか?」
「えっと、高速代も入れて、23万8千円です」
23万8千円か。亀井は、財布の中を見たが、残り3,000円しか持っていなかった。仕方がなく、クレジットカードをタクシーの運転手に渡した。
「お客さん、このカード、通りませんね」
「では、このカードで…」
と、3枚ある全てのクレジットカードを渡したのだが、全てカードは使えなかった。そう言えば、会社を辞めてから、生活費でカードを使い倒してしまっていた。あ、真理ちゃんのお店で、全部使っちゃったかも。
亀井は、仕方がなく、タクシーのドアをこじ開けると、外に出て走り出した。これも、真相に辿り着くためには、仕方がない犠牲だ。亀井は、タクシーの運転手が可哀想だと思ったが、その思いは振りほどいた。今は、人命がかかっているのだ。
「誰か、その人、捕まえてください。無銭乗車です!!」
タクシーの運転手は、大声で叫んだ。
その時、亀井は宙を舞った。そして、ドシーンと、アスファルトへ落ちた。
1人の男性が、亀井を背負い投げしたようであった。その顏を見て、亀井は言った。
「あ、あなたは、歩行者bさん!」
男性の眼鏡が、キラリと光った。
今、亀井は無銭乗車で京都警察に捕まった。何かしらの見えない巨大な力のせいで、タクシーで京都にくることになったんだ!と言っても、警察は相手にしてくれなかった。
結局、亀井は、獄中の中で真相に辿り着けなかったが、誰も犠牲者を出すことは無かったので、もしかしたら、これで良かったのかもしれなかった。
了
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