見出し画像

「風の花 しばし見交わす 恋の実を」第2話 信じてくれないよね?

前回のお話


「どうだった?テスト??」

琴実が、私に話しかけてきた。

琴実は、私が小学校からの付き合いで、
ずっと一緒にいてた友達。
だから、琴実の事は昔から何でも知ってる。

「もうっ、ぜんぜ〜っん、駄目!」

私は、息切れして、ドアを開けた瞬間を思い出した。

静かなる教室。
乱した私に対するみんなの視線が怖かった・・・

その後は、テストに集中するどころか、呼吸を整えるので必死だった。
あ〜恥ずかしい・・・


琴実 Kotomi イメージ

「ってかさぁ、ふう、何やってたの?? 」

琴実が、私の机に肘を立てて、聞いてきた。

「それがね、今日、いつものように空を見てたら、こけちゃって・・・」

私は、琴実に右膝を見せた。
今もチクチク痛む。

「まぁ、いつもの事じゃん」
「違うの。その後が、違うの」
「何が違うの? 」
「えっと、犬がしゃべったの」
「しゃべったじゃなくて、ほえたんでしょ? 」
「違うの、日本語をしゃべって、私に話しかけたんだって」
「・・・。ふう、大丈夫? 最近、おかしいかなぁって、思ってたんだけど・・・」

違うって反論しようと思ったら、後ろから肩を叩かれた。


美希 Miki イメージ

「ついに、夢見る少女が、おかしな少女、に変わっちゃったんだ」

そう私に声をかけながら、肩を叩いたのは、同級生(クラスメート)の美希(みき)。
美希は、学内でも常に1位、スポーツ万能でテニス部に入っている。
私とは、全く正反対なんだけど、なぜか私と気が合う・・・のかな?

「ひっどぉ〜!」
「だって、この間も、『雲があんぱんに見える』とか、訳の分からないこと言ってたじゃない」
「いや、そぅだけどぉ・・・」

反論できない・・・
だって、雲の形が、あんぱんのように見えたんだもん。
駅前のあんぱんより、おいしそうだったから・・・つい、ね。

「まぁ、まぁ。美希。ちゃんとさ、ふうの話、最後まで聞いてあげよ〜よ」

いつも、私が突拍子もないことを言っても、琴実が聞いてくれる。
だから、何でも琴実には、言ってしまう。

「ええっと、ええっとね。なんか、汚れた犬・・・柴犬かな?・・・が、いたの。こけた時に。」
「それで? 」
「で、顔を近づけてきて、しゃべったの!」
「なんてしゃべったの? 」
「怖い?って聞いてきた」
「怖い?どうして??」
「目をつぶっちゃったからなのかなぁ・・・」

琴実と美希は、一緒になって、「う〜ん」って考え込んだ。

「違うの、もう一回しゃべったんだって」
「何て言ったの?」
「大丈夫?って、右膝の事、心配してくれたの」

二人は、天を仰(あお)いだ。

「それは、妄想だね」
「現実逃避とも言うよね」
「それとも、擬人化・・・? 」
と、二人で話し合ってる。

「もういいよ、分かった」
と、私は、話を打ち切った。
私自身、あれは何なのか分からないから。

「それよりさ、ふう。テスト終わったら、休みじゃん。遊びに行こうよっ」
と、琴実が聞いてきた。
「駅前に、フルーツバイキングが出来たんだって」
と、美希。
「・・・別に予定も無いから、いいけどぉ。・・・ケーキあるかな??」

「あるある!」

って感じで、今朝の柴犬のことはどこかにいっちゃった。

続く


⇒ 次回のお話


★毎週、土曜日投稿中★

🐶「風の花」バックナンバー🐶
第1話 あなたは柴犬?


note vol: 68
#柴犬
#小説
#風の花
#風の花  しばし見交わす 恋の実を
#恋愛
#ファンタジー
#暗夜灯
#弧底人生

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?