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完結「兼業小説家志望」(仮題) コラボ小説 吉井編

前回のお話

吉井編

 あちら側の人間は、「吉井」だ。

 亀井はそう結論づけた。この小説を潰されてしまっては、みんなの命が危ない。その前に、止めないといけない。

 まだ、昼間だ。会社に吉井はいるだろう。亀井はすぐに早川と会った喫茶店を出て、タクシーを拾い、退職した会社へ急ぎ向かった。

 会社のオフィスに着くなり、周りがざわざわとざわついた。喧噪を無視して、吉井を探したのだが、ここにはいないようだ。亀井は課長の机に向かった。

「課長!!吉井は、吉井はどこにいるのですか?」
 不意をつかれた課長は、驚いて椅子から転げ落ちてしまった。
「亀井、何だね、君は!退職代行から退職届を出してきたと思ったら、いきなりオフィスに乗り込んで…」
「課長、今は時間が無いのです、一刻も早く吉井を探さないと」
「吉井は、今日は有給休暇を取っているから、私も分からん」
 と、すると、家か。
 亀井は、スタコラサッサとオフィスを後にして、吉井の家に向かった。

 吉井のマンションの一室に向かい、インターホンを鳴らす…が出てこない。
 亀井は、ドアノブに手をかけるとすっと開いた。そして、そのまま吸い込まれるように、吉井の部屋に入った。

「吉井。いるか!俺だ、亀井だ」
 そう言って、リビングまでやってきた時に、倒れている人間が見えた。
 亀井は近づいて、顏をみた。吉井だ。
「吉井!なぜだ、なぜなんだ?」
 亀井は、吉井に近づいた。息をしていなかった。

 そこへパトカーのサイレンが鳴り響いた。亀井は茫然として、逃げることが出来なかった。パトカーの音がマンションの下で止まった。


 今、亀井は吉井殺害の裁判を受けている。何かしらの見えない巨大な力が働いているようにも見える。
 亀井は、獄中の中で真相に辿り着けず、死刑宣告を受ける日を待っていた。


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