癒しにぴったりの物語/読書感想文
年下のセンセイ/中村航
タイトルだけ読んで理解した気になるのは大間違い
いわゆるアラサー会社員の私にとってはとんでもない癒しの小説だった
大まかなあらすじは
28歳予備校職員、恋愛からは遠ざかっていた主人公みのりが、会社の後輩からすすめられた生花教室で花の先生の孫で助手をしていた8歳年下の"センセイ"である透と出会う…というストーリー
物語は真冬からはじまる
そんな冬の描写に、生かされ咲き誇る花たちがとても美しく、みのりと透の出会いに彩りをつける
私はつくづく思うけど
なんでもないと思っていた人がなんとなく、いい感じだなと気になる存在になり、そして恋に変わっていくという
友達として出会ってました・知り合いでした、から始まる恋ってどう始まるの?と不思議だった
(私は結構直感型で好きになりそうって思わないと進めないタイプだから)
みのりと透も劇的な出会いを果たしたわけでもなく、どちらかが一目惚れしたわけでもないけれど
この小説を読みながら少しずつ関係性を変えていくふたりが丁寧に書かれていてとてもよい
恋愛特有のもどかしさだけでなく、自分の環境や年齢を考えた上での悩みや葛藤がとても丁寧に書かれているから、よくある話だけでは終わらせないのも中村航さんの力だと思う
30歳前の契約社員と20代の大学生、惹かれあったとしても色々と考えてしまう気持ちに共感しかなかった
仕事・人生・恋愛・趣味って考えること色々あるもんね
すぎてきた自分の人生の楽しいところをこれから得ていく透に対して申し訳ないと思う気持ちが痛いほどわかる
みのりと友達と一緒に飲んでみたいってこの世代の女子ならきっと思うはず
突き進みたい読者の代わりにみのりと透の周りにでてくる人物たちはみんな、寄り添ったり、少しずつ背中を押したりしていて、気持ちのいいくらいいい人たちがでてくる
だから最後まで恥ずかしくなることなく読み進められた
私は疲れた時に多分この小説を読み返すと思う
自分一人で温泉にいって労うくらいの力を持ってる
そのくらい優しくてあたたかくて甘い気持ちにさせてくれる小説だ
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