「好き」と手放しで【詩】
「好き」と手放しで
言えなくなったのは
いつからだろう
恋人や子どもには
するりと口をついて出る「好き」が
喉のくぼみに引っかかったまま
くつくつ
と鳴る
わたしの「好き」を
言葉にしなくとも
そこに在ると疑いもしない
老いた母
少なくとも
わたしが見渡せる範囲に
それは見えないのだけれど
いつか浮かび上がってくるのだろうか
ずぅっとここにおりましたとも
そんな顔して
母の背にかけ寄っていくのだろうか
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