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【イベントレポ】出展者の工夫にも注目したい「東京ゲームダンジョン4」レポート

新興のインディゲームイベントとして始まった東京ゲームダンジョンもついに4回目となり、出展者が増えたことに伴って2日間開催されることになりました。2024年1月21、22日に開催されたイベントの1日目に行ってきたので、気になったタイトルをいくつかピックアップしつつレポートしたいと思います。


クランク回してガトリング!Playdateがもっと欲しくなるシューティング「CRANK and SHOOT!!」

Playdateは2022年にPanicが発売した携帯タイプのゲーム機です。モノクロの液晶付きの小型なイエローのボディにクランク付きというインパクトのあるルックスで話題になりましたが、実際に購入して所有している人はまだまだ少ないです。というのも、日本国内には代理店は存在せず、Panicからドル建てで購入してカリフォルニアからの発送を待たなければいけないので少々ハードルが高いのです。

ブースでは実機で試遊できた

Playdateの特徴の一つに公式にSDK(Software Development Kit)が無料で配布されており、ソフトウェアの開発がライセンスを別途取得せずとも可能なことです。Playdate本体がそのまま開発機として利用可能なため、購入したその日から開発が出来ます。

前置きが長くなりましたが、「CRANK and SHOOT!!」はPlaydate向けにHiroshi Ideno氏によって開発されたシューティングゲームです。徐々に迫ってくる敵キャラを十字キーでエイムしてボタンで撃つべし!といえばインベーダーゲームの派生作品で終わってしまうところですが、本作は本体のクランクを銃のリロード動作に割り当てているのが個性です。

レベルが上がることで手に入るパワーアップアイテムで装弾数や連射速度は上げられますが、クランクでリロードして撃ち続けるのはなかなかに忙しい。このままでは忙しいばかりであまり楽しいゲームにはならないところですが、パワーアップアイテムの中にあるガトリングガンをバリバリ撃って画面内の敵を一掃できるフィーバータイムも用意されているのが素晴らしいです。しかも、ガトリングガンの発射はクランクを回して行うところも最高です。

会場では試遊したプレイヤーのハイスコアが記載されていましたが、筆者が頑張って147点を出したと思えば、1位には2000点を超えるモンスターが居ました。。。

体力以外のステータスも攻撃可能な戦略性「Indomitable Blade」

「Indomitable Blade」は南部休み氏が開発しているターン制SRPGです。味方チームのキャラクターをマス目に沿って動かして目標をクリアしていくスタイルは「タクティクスオウガ」や「ファイアーエムブレム」等でお馴染みですね。

中世ヨーロッパ風味のダークなファンタジー世界を舞台とした物語となる模様ですが、試遊ではストーリーに関しては触れることが出来ませんでした。ただ、シナリオについては南部休み氏は「羊たちは夢見る」や「あなたを探して」といったTRPGのシナリオを手掛けた経験もある方なので期待できると思います。

試遊をしてみて驚いたのはその完成度の高さ。基本的なUI部分が見やすくなっている点に加えて、角度やズーム倍率を変更できるユーザーフレンドリーなカメラ操作やキャラクターのアニメーションなど違和感のある部分があまりないのはインディーズの作品ではそれだけでも素晴らしいことです。

本作のゲームとして一番特徴的に感じたのはあらゆるパラメーターが攻撃対象になる点です。HPの削り合いではなかなか攻撃が通らない相手でも先に防御力を削っておくことでダメージを与えやすくなります。各キャラのスキルも活用すればより少ないターンで敵を倒すことも可能となるでしょう。効率を極めたいタイプのプレイヤーには良いシステムですね。

既にSteamのストアページも用意されているので気になる人はウィッシュリストに入れておきましょう。

コルビジェ風建築で行われる破滅に向かう研究「Culture House」

ル・コルビュジエはモダン建築の大家として知られる建築家で、上野の国立西洋美術館はコルビジェ建築作品として有名です。フツララ氏が開発している「Culture House」はこのコルビジェ風のモダン建築空間で行われるウィルス培養実験を体験するアドベンチャーゲームです。

筆者が本作に最初に触れたのは2023年前半のTOKYO INDIESだったように記憶しているのですが、その時は家を歩くことができるだけのモダン建築ウォーキングシムといった趣でした。それがウィルスを培養していくアドベンチャーに変わったことには驚きました。

ウイルスを培養していく過程をプレイヤーは細かく体験していきますが、その際の選択次第でエンディングは変動するマルチエンドを採用しているとのことです。しかし、妖しい輝きを放つウイルスが幸福をもたらすものとはとても思えず、塵一つ無いようなクリーンな家の中で世界を破滅に導くものが造られていると考えると怖くなってきます。

会場ではゲームに登場する家について書かれたリーフレットをもらえましたが、これが実際のマンション紹介用の冊子と遜色のないデザインであることが気になって聞いてみたところ、パブリッシャーとしてサポートしてくれている講談社の担当の方が建築学科出身だったそうで、建築系の広告デザイナーの方に依頼することが出来たそうです。

世界観に沿った相互のやり取りができるAI対話アドベンチャー「_turing」

対話型のAIはChatGPTやBingAIで一般化したと思いますが、これらの技術をゲームに取り入れた作品はインディーズの界隈でも見るようになりました。竹関工房による「_turing」もまたその一つですが、会話の応答が自然であることに加えてゲームの作品世界に沿った回答となっている点が印象的です。

チューニングを加えていくことで作品世界をAIに学習させ、的確な返答をさせることはできると思いますが、当然かなりの労力を要するため、個人の規模でやり切ることができれば単純に凄いです。モバイル向けのリリースを考えているそうですが、そうなると端末内で処理を完結させることは難しいので外部サーバで処理を行うことになります。その場合は費用がどのくらいになるかが気になるところ。。。アドベンチャーゲームのキャラクターとの交流を自分の言葉でやりたいという思いから開発を始めているそうなので、アドベンチャー好きとして応援します!

キュートでポップなリズムゲーだが、このシビアさはソウル系「Pastel Parade」

まっともぉん氏が開発している「Parry King」はインディゲームイベントによく行く方ならばご覧になったことがあると思います。試遊した多くの人が傑作「SEKIRO」のボス戦におけるパリィにフォーカスしたシビアなゲームデザインにヒリついたことでしょう。

今回の東京ゲームダンジョンではこの「Parry King」に加えて、リズム天国ライクなリズムゲーム「Pastel Parade」も出展されていました。ポップなキャラクターによるリズムゲームとあってカジュアルなゲームなんだろうと思って試遊して驚いたのが、リズムへのシビアさです。

0.03秒のズレでパーフェクトを外す設定で、漫然とボタンを押しているだけでは満足に特典を出すことは出来ないでしょう。ゲームに、音楽に真剣に向き合う必要があります。ポップな見た目とゲームプレイのガチさの落差にクラクラしますが、チャレンジングなゲームは練習したくなりますね!ただ、難しくする意図はないとも話していたので、完成品では見た目通りにポップでカジュアルな楽しいゲームになっているかもしれません。

黒板消し同士を叩くアレをやっても怒られないゲーム「チョークの叛乱」

最後に紹介するのは商店街などのくじでお馴染みのガラポンをコントローラーにした「くじ引きサイクル」作者のへもん氏による新作です。

前作は単なるネタゲーかと思えば、くじ引きを引き続けるフィーバータイムと、お金を稼ぐバイトのサイクルが気持ちよくなってくる快作でしたが、今作はコントローラーに黒板消しとクリーナーが採用されたアクションゲームとなっています。プレイヤーは黒板消しとなり、反乱を起こしたチョーク軍団と戦います。チョーク軍団が放ってくる弾を打ち返し、接近してきたチョークを黒板消しで挟んで叩き潰してやりましょう!

黒板消しクリーナーを擦ってエネルギーの充填、チョークの攻撃で粉っぽくなった画面は黒板消しで消して回復するなど、多くの人が学生の頃に教室でやっていた行為がそのままゲームとなるセンス・オブ・ワンダーが詰まった作品です。

筆者の試遊の様子
めちゃくちゃミスっていますが、どういうゲームかは伝わるはず

今回は1日のみの参加のため、2日目については把握できておりませんが、SNSを見る限りは2日目も盛り上がっていた様子ですし、今後は2日開催のスタイルが定着するかもしれませんね。

これだけ出展者が多いと作品をプロモーションする意識も重要になってきます。Playdateを持ち込んだり、ブースの装飾を凝ったり、グッズを作ったり、配布物を工夫するなど出展者ごとの工夫もこうしたイベントの見どころなので、行く機会があれば是非ゲームと合わせて場の雰囲気も楽しんでいただきたいです。

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