【鎌倉】調香体験でととのう。癒しアイテム爆誕。
仕事を離職していたときの話。
リフレッシュできる創作体験を求めたのが先か、
ひとりでプチ遠出しようと決めたのが先か
記憶が定かではないが、
とにかく「見つけ出した私、天才か?」と今でも酔えるほど、素敵な店との出会いがあった。
enso
鎌倉の、駅前の人混みから少し外れた路地。
哀愁を含んだ風に、はたはたと手招きをするように踊る白い暖簾。
その足元からちらりと見える、どこか懐かしい古民家の店構え。
きっとここはあたたかい場所に違いない
と、直感が告げ、緊張しながら戸を引いてみた。
レストランとワークショップを兼ね備えたお店のようで、今回私は調香体験をするために訪れた。
案内された個室は、程よい光と静かな空気に包まれている。
調香体験でやることは、
30種類以上の精油から、ひとつずつ嗅いでみて好きなものを選ぶ。
自分で比率を決めて調合する。
大きくこの2つだ。
店員さんがマンツーマンでサポートしてくださるのが、おひとりさまにありがたい。
席に座ると、番号を振られたムエットが試験管に入って運ばれてきた。
実験のようなワクワクが込み上げる。
同時に、ちょっとだけ不安もあった。
素人の私が、幾つもの精油を嗅ぎ分けることができるだろうか…?
「甘橙」や「渋橙」など、似たような柑橘系だけでも何種類もあるのだ。
そんなこんなで調香体験がスタートした。
店員さんが言うには、選ぶ時は直感を大事にしたほうがいいそうだ。
その時の体調やメンタル、環境などによって
欲する香りが違うのだ、と。
どこで・どんな時に使いたいかをイメージするのもポイントだ。
私は自分自身と向き合いながら、ムエットをひとつひとつ嗅いでいった。
--冒頭でも触れたが、私は当時離職中だった。
キャリアアップを期待して転職した直後のこと。
配属先はモラハラと新人いびりで空気が不味かった。
例えるなら、下町の木造アパートから都会のタワマンに引っ越したら、ワガママセレブの住民たちがバチバチやりあってた…みたいな。
人生に関わる選択を間違えてしまったことに気づいても、前の木造アパートには戻れない。
だんだんと息がしづらくなってきて、人と関わるのが嫌になってしまって、辞めた。
他人の悪意で挫折したのは初めてだった。--
この、吸い込んでしまった不味い空気を浄化したい。
気持ちが澱んでいる時に頼れる香りが欲しい。
朝にも夜にも合う、優しい香り。
何回深呼吸しても飽きない、軽やかな香り。
都会的で大人っぽいものよりは、おばあちゃんちを思い出させるような安心感のある香り。
そんなイメージで選んでいった。
精油はどれも良さがあって選びきれないと思っていたが、直感に頼れば不思議とそこまで悩まずに決まった。
ざっくりとしたイメージでも、なんとかなるものだ。
最終的に私が選んだのは
渋橙(ベルガモット)
蜜柑
匂天竺葵(ゼラニウム)
茉莉花
トンカ豆
特にお気に入りはトンカ豆だ。
桜餅のような、優しく甘い香りで重たくないところが、嗅いでみてすぐ好きになった。
心を落ち着かせる効果があるそうで、それも私にぴったりだ。
選んだ後は、比率を決める。
トンカ豆を軸に甘さを残しつつ、柑橘類で澄んだような爽やかさを追加する。
そのバランスを、私なりに吟味しながら比率を調整した。
ここまで終えると、あとは店員さんに託して製品にしていただく。
私はルームスプレーにしてもらった。
言葉で伝えきれないのがもどかしいほど大好きな香りになって、大満足。
ラベルもシンプルで好きだ。
これにて、私の調合体験は終了。
久しぶりに心地の良い時間だった。
鼻先に神経を集中させて思い切り深呼吸する
その動作を繰り返したからか、調香体験はリラクセーションとしてかなり良かった。
私の中で、メンタル回復法のひとつとして心にメモしてある。
それに、自分の感覚を頼りに作ったモノは、当時の自分自身を投影しているようで一際愛着が湧く。
もし、また必要な時には
電車を乗り継いで時間をかけてでもまたここに来ると決めた。