12月5日アルバムの日
「あ、これはアカリだ!」
夫の祐二が勢い良く長女の名前を口にした。
当のアカリは今の時間、小学校で授業を受けているのでこの場にはいない。
「ぶっぶー!ハルでした」
私はいたずらにそう言って笑い、彼に写真を見せた。次女のハルは幼稚園に行っており、こちらも不在である。
私と夫の平日休みが珍しく重なったので、この機会に写真を整理することにしたのだった。アカリは小学二年生、ハルは幼稚園の年中さんである。今でこそ、似ているところと似ていないところ、それぞれたくさん出てくるようになったが、生まれた当初は驚くほど似ていた。
「えー、自信あったのになぁ」
アカリだと思っていたハルの写真を見て、彼は残念がっている。私はそう言えばと、写真の束を取り何枚かめくっていくとそれが見つかる。
「これ、同じアングルだね」
「そうそう!これ、俺ちゃんと覚えているんだよ。こっちのアカリがウサギのぬいぐるみを持っていて、この写真のハルはゾウなんだよな。でも違うのはそれくらいでさ」
思い出しながら語る彼はだんだんと顔の筋肉がゆるんでいく。思い出しているその時にまるで今戻っているように愛おしそうに娘たちのあの頃を語るのだ。
「顔も場所もアングルも一緒だもんね。分からないよねぇ」
私もつられて眉尻が下がっていく。
「髪の毛がうっすいところも同じでさ。可愛いよねぇ」
もちろん、今の二人もとてつもなく可愛い。でも、小さな頃だってやっぱり可愛く、それは今の可愛さとはまたすこし違うからどうしたって顔がにやけてしまう。
「二人とも、大きくなったね」
「そうだねぇ、俺たちも年を取るわけだよ」
私が30歳になる年にアカリを産んだ。その子がもう6歳だ。私が36歳になるのも、彼が次の年には40歳になるのも必然である。
「な、年を取ったわけだ、ほら」
「あ!なにこれっ。誰が撮ったのよ」
目の前に差し出されたのはいつ誰が取ったのか知らないが、私が下を向いてかがんでいるときの横側から撮っただろう写真。お腹が段になっている。
「えーしらないなぁ。ハルじゃない?」
やめてよと言いながらも笑ってしまう。お腹が段になるほどの肉などついたこともなかったのに。そんな若い頃も遙か昔となってしまったことが悲しく、けれどその年月で娘たちが育ったのだと思うとそれさえ愛おしく感じるから不思議だ。
「さてと、じゃあ、これで大体揃ったかな」
彼が写真を整えながら言う。こんな風に昔やそれに比べた今を笑いあっていると永遠に写真たちは整理されないままである。
だから、二人で決めごとを作った。
『毎月2枚程度のベスト写真を決めてそれだけを1年のアルバムにする』
毎年アルバムを1冊だけ作る。そのほかは雑多(と言うと聞こえが悪いが)でも良しとする。
「まあ、今回は溜めすぎたね。これからは毎年一冊、一緒に作ろうね」
今回作ったアルバムは計6冊だ。アカリが生まれて、ハルが生まれて、4人家族になってからの6年分。
彼が笑い、私は並べられた写真を眺めてしみじみ思う。
「すごいね、この6冊を見ればすぐに6年を感じられる」
写真の中で皆が笑っていた。
アルバムはそのまま、人生だ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【今日の記念日】
12月5日 アルバムの日
フエルアルバムをはじめとして、製本、シュレッダーなど情報整理製品の総合企業であるナカバヤシ株式会社が制定。日付は一年最後の月の12月はその年の思い出をアルバムにまとめる月。そして「いつか時間が出来たら」「いつか子どもが大きくなったら」「いつか・・・」と後回しにされることなくアルバムづくりをしてもらいたいとの願いを込めて、その5日(いつか)を記念日としたもの。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?