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7月27日 ニキビケアの日

    数えると増えると言うのは、ほくろのことだけだろうか。

「また増えてる・・・・・・」

 鏡の前、前髪をあげたおでこのそこにいるのはニキビである。昨日なかったところに表れた新参者のニキビに触れて、私はため息をつく。

 が、そのついたため息を大きく吸い込んだ。まるでそれはため息などではなくあくまで深呼吸をしたのだというように、吸い込んで、ハッと吐く。

「よし、今日も願い事が増えたってことで」

 鏡の前、私は顔のニキビを確認し笑ってみせた。前髪を手に取り頭の上に上げてピンでとめる。そうして洗顔フォームで作った泡で優しく顔を洗った。さっぱりと洗い上がった顔を見ると、妙に幸せになる。

 増えたり減ったりを繰り返しながらも、私の顔のニキビは着実に改善されているように感じる。


「おはよー!」

 教室に着くと、仲良しのサトちゃんが声を掛けてきた。

「サトちゃん!見て、ここに一つ増えました」

 私も荷物を置いてすぐに彼女に報告した。おでこのニキビ。

「おお、やったじゃん!」

 そう言って彼女はいたずらに笑う。

「で、今度は何の願いにするの?」

 その問いに私はニヤリと笑って見せた。

「今日の小テストで満点取ること!」

「すごい現実的!だけどいい!!」

 サトちゃんは顔を崩して大きく笑ってくれた。

 そうなのだ、今日の一限目の現代国語の授業で小テストが行われる(ちなみに合格点を下回ると小小テストなるものを放課後にまた受けなくてはならないらしい)。なので、その願掛けをしてみたのだ。

 何に掛けたかと言うと。

 新しく出来たおでこのニキビに、だ。


 梅雨の頃からニキビが増えてきた。毎日、小さなニキビが増えて、私はげんなりしていた。特におでこが嫌で、前髪を重めに下ろし、隠していたのである。けれど、前髪が伸びてくると、その毛先が目元やこめかみに触れ、そのあたりにもニキビが増える。

 そして私はその都度、また増えたとサトちゃんにグチってはやっぱりニキビを隠していたのだ。

『いいじゃんいいじゃん、いいことが一つ増えたと思えばむしろ嬉しいことよ』

 あまりに毎日へこむ私に、サトちゃんが提案してくれたのがこれである。ニキビが増えるとその分いいことが増える、と考えるのだ。そう考えると、不思議なもので、『いいこと』は隠さなくてもよいではないかと思えてきた。結果、前髪を上げておでこを出すようになった。多分、これでいくらかニキビは改善されている。

 そして、ニキビが増える度に『いいこと』が増えると言う考えも、『いいこと』から『願い事』に変えた。その方が自分の好きなことを願えるからだ。

 それで実際に叶うものもあれば叶わないものももちろんある。言ってしまえば、私次第なところも多分にあるのだから仕方ない。

 でも、まあ、それでも楽しくなってきたのは事実なので、ニキビもそうそう悪いだけのものではないと思い直した。

「ニキビが出来て喜ばしいこともあるもんだね」

 私は改めてそんなことを口にすると、サトちゃんは笑った。

「小テストが終わってからまた言って」

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【今日の記念日】

7月27日 ニキビケアの日

夏はとくにニキビの出来やすいシーズンであることから、ニキビケアを見直し、肌トラブルを無くす正しい手入れの方法を啓蒙する目的で、ニキビ対策、ニキビ予防のスキンケア商品「薬用アクネコントロールシリーズ」を展開する株式会社ディーエイチシーが制定。多くの女性にニキビの無い肌で毎日を楽しく過ごして欲しいとの同社の願いが込められている。日付は7と27で「しっかりと(7)ニキビを(2)なくそう(7)」の語呂合わせから。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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