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9月3日 グミの日

    私はグミが好き。

 いろんな種類があるけれど、どれも大好きだ。あの小さな粒を噛むと弾力があるのにどこか柔らかく、モッチモッチと口の中が喜んでいるのが分かる。ガムのように歯ごたえを楽しめて、キャンディーのように味わえる。だから私はグミが好き。

「グミねぇ、どれも大体同じようなものでしょう。味こそ違うけど」

 一緒に仕事中のおやつタイムを楽しんでいる同僚にそう言われた。

 どれも同じようなものだけれど、違うと思う。違うと思っているのだが、どこか何かが同じようにも思えるのだ。

 なんだろうかとよく噛みながら考えてみる。そう言えば、噛むことで脳内に幸せホルモンが放出されると聞いたことがあるが、実際にどうなのだろう。けれど私の場合、もうグミを食べていると言うそれだけで幸せなので噛もうと噛むまいと幸せなのだった。

 向かいの同僚を見ると、黙々と私のグミを食べている。どうやら気に入ってくれたようだ。

「どう、それ、美味しい?」

「うん、美味しい。歯ごたえがあるから、黙々と噛んでいたんだけど、噛む度に頭の中が整理される気がする」

 幸せになる、とかではなく頭が整理されるという。そんなこともあるのかと私はもう一粒口に入れた。ああ、やっぱり美味しい。とりあえず、私の幸せホルモンは今、また出ているはずだ。

 この幸せのまま、午後の会議に出席する。


「テーマ案、何かあるかな」

 課長がそう言うと、課員が端々に意見を出し始める。

 学生向けのオンラインイベントを検討中。当社アピールの為のプレゼンにおいてテーマを設けて仕掛けのあるものにしようと言う企画である。

 私もいくつか考えてきた。けれどどれも発表出来ずにいる。もし私の案が採用になったとして、どこかに問題があるかもしれないとか、そもそもお門違いなテーマなのかもしれない、とかいろいろ考えてしまうのだ。

「笹岡、何か出るか」

「はい、えっと・・・・・・」

 発表しようか、でも。
 しどろもどろする私を見かねたのか、課長が声をかけてくれた。

「自信がないのか」

「はい」

 そのものズバリ、である。

「確か、笹岡はグミが好きだよな」

 よくご存じで、と思うが、すでに課内では知られていることだった。

「グミはさ、大体同じ材料や成分で出来ているだろう。それにもしかしたら味も一緒のものが多いかもしれない。でもさ、みんなもイメージしてみてほしいんだけど、グミを思い浮かべろって言われるとなにが浮かぶ?多分、みんなそれぞれ違う形のグミだよな」

 そう言われ、皆がそろって想像する。

 他の人のイメージを共有出来るわけでは無いけれど、自分の頭の中だけでもグミと一つ言われても色々浮かんできているのだ。

 一つではない。

「だからさ、当社アピールって大枠が一緒であれば形は色々あって然るべきなんだよ。間違いってものはないから、むしろ違うことが正解と思っても良いかもしれない。だからね、自信を持って意見を出してみてよ」

 そう言われ、では!と発言をする私はきっと単純なんだろうな。と思いつつ、さっきグミを噛んだときに出た幸せホルモンがまだ残っているのではないかと私の胸はワクワクしていたりする。

 同じなのに違うと言うことは、それは自由であると言うことで、私も自由である。

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【今日の記念日】

9月3日 グミの日

世界中で親しまれているお菓子の「グミ」の美味しさ、素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいと、UHA味覚糖株式会社が制定した日。「グミを噛んで元気生活!」などのキャンペーンを行う。日付は9と3で「グミ」と読む語呂合わせから。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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