9月4日 串家物語の日
小学一年生は、少しだけ大人なのだった。
卵焼きを作りたい、ホットケーキやクッキーを作りたい、ケーキも作りたい。娘の美波は幼稚園年長の後半くらいから料理をすることにあこがれを持っていた。母としては、やらせてあげたい反面、包丁や火を使わせることが怖かった。そんな延ばし延ばしにしてきた彼女の希望だったが、今年、小学生になったことをきっかけに、少しずつ一緒に台所に立つことにしたのだ。
「私が作っていいの?!」
初めて台所にちゃんと立たせた日には目を輝かせたものだ。
以来、入学してまもなく半年が近づいているが、週に一度は卵焼きを作ってくれるようになった。
そうなると、他のいろんなものを作ってみたいと思うのはきっと自然なことだろう。煮物、焼き物、蒸し料理と時間のあるときに一緒に作っていたのだが、ついに彼女の口からそれが飛び出した。
「揚げてみたい!」
なにを?なんてことはこの際どうでもよくて。
まあそうだよなぁなどと思っては、でも油を使うのはちょっと怖いと頭を悩ませた。
その悩みが意外と簡単に解消されたのが今日だったのだ。
ショッピングモールで買い出し中である。まもなくお昼だねと言いながら、夫と娘となにを食べるか悩んでいたら、彼女は目を輝かせてそれを見つけた。その目は初めて卵焼きを作った日のそれと同じだった。
「揚げてみたい!」
少し前に聞いた同じセリフだと思いつつ、彼女の見つけた店を見るとセルフ揚げ物屋さんのようだった。
油が飛び跳ねる?
そんなことを思いつつも、彼女の熱意に押されてそこに行くことにした。思いの外家族連れが多いことに驚く。やけどの不安などはもしかしてあまりないのか。あ、ないかも。気づいたのはテーブルに案内されたときである。
4人掛けテーブルの真ん中に揚場が用意されている。それは掘りごたつのようにテーブルに埋め込まれたようなもの。そこに油がはいっているのだ。思っているよりも小振りなものであるし、油はね防止のカバーもある。安心した。
では揚げるネタはどれだろうと見回してみると、席から離れた先にバイキング形式でずらりと並んでいる。
「すごーい」
そう、目を輝かせたのは私である。
私、いろんなものを少しずつ食べたい派である。アレもコレも食べたい私に取って小振りなサイズのネタが並んでいるのは喜ばしいことだった。さっそく取りに行こうと席を立ったのも私である。
「ママ、嬉しそう」
「ね、美波より楽しそうだね、僕らも行こうか」
娘や夫がそんなことを言っているが気にしない。
オクラやヤングコーン、もちろんお肉やエビも取って。
3人が3人とも好きなように取り、テーブルに戻る。
「じゃあ揚げてみようか」
私がそう言うと、美波は目を輝かせる。
ドキドキが顔に出ている彼女がそろそろと油の中に串を入れる。ウインナーを選んだのは彼女らしい。パチパチとシュワァっと言う揚げ音が聞こえ彼女の緊張も揚がる。
香ばしいきつね色が見え、それを皿に取ってソースを付ける。熱いからね、と言いながらも私もワクワクしているのだった。
「あつっ、あ、でも・・・・・・美味しい。私が揚げたウインナー、美味しい」
満面の笑みだ。
料理をしたいと大人の顔をのぞかせる娘である。確かに成長から大人になっていくのだろうと思う。けれど、こんな風に何かを楽しむ顔はやっぱりまだまだカワイイ子供の表情である。
「君も子供みたいに楽しそうだよ」
夫に言われ、私は照れくさく思いながらも、ヤングコーンを油に入れるのだった。
自分で揚げれば、色々上がる。
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【今日の記念日】
9月4日 串家物語の日
大阪府大阪市に本社を置き、多くの外食事業を展開する株式会社フジオフードシステムが制定。自社のブランドのひとつで、材料を選び自分で揚げるシステムが全国で人気の串揚げ店「串家物語」の魅力をPRするのが目的。日付は9と4で「串家物語」の「串=く(9 )し(4)」と読む語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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