『シャイニング』:メモ

久しぶりにまた観た。「今までに何回も観てるのに、ネットで或る解説動画を観たら怖くて仕方がなくなった」という話をどこかの誰かがネット動画上でしているのを見て、興味が再燃したのだ。ちなみに、その「解説動画」は見てない。誰のどんなのかも知らない。

で、今回気づいた。この映画は、ホテルに取り憑いた死霊たちが、訪れた人間を「仲間」に引き入れていくホラーの「フリ」をしてみせているけど、「正体」はコメディ。輒ち、霊が見えるとか未来が見えるとか言い続ける神経疾患気味(発達障害?)の「鬱陶しい」子供と、その子供のことが「第一」で何かと予定を狂わせるメンヘラな妻に対して、遂にブチギレてしまった作家志望の夫が巻き起こす悲喜劇。劇中で、ジャックがウェンディに向かって捲し立てているセリフを聞くと、それがわかる。ジャックは、この「めんどくさい」妻と「めんどくさい」子供に、ずっと、自身の夢の実現の「邪魔」をされてきたと思っているのだ。この物語の〔心臓=エンジン〕はこれ。

しかし、そのままだと、(クリエイター以外には)共感を得られないし、読んでも観てももらえないので、「ホテルの死霊たちに取り憑かれたせいで、殺人鬼になった」ということにしている。

でも本当は違う。

「面倒くさい・足手まとい」の妻子にうんざりしたクリエイター(志望)の男が、限界に達して、暴れてまわって、自滅しているだけ。ダニーが見るビジョンも、ジャックが話をする死霊たちも、最後にウェンディが見るビジョンも、実は彼ら自身に原因がある。そもそもあの一家は全員「そういう系」ということ。ホテルは関係ない。なぜ、ウェンディの見た目が、ああいう「ムンクの叫び」みたいなのか謎だったけど、今回合点がいった。三人共に「やばい」ということ。「やばい」二人の間にできた子供(ダニー)は、二人に輪をかけて「やばい」。所謂、劣勢遺伝(今風に言えば、潜性遺伝)の発現?

以上のことに気づくと、もう、只々、ジャックが気の毒なだけの映画。ホラーでもなんでもない(別の意味ではホラーだけど)。有名な「血の洪水」や「双子」も、キューブリックお得意の「単なる」アート表現にしか見えなくなる。もう、何一つ怖くなくなってしまったが、逆に、前よりも好きな映画になった。

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