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オカバヤシハルオの冒険

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2022年12月の記事一覧

無灯火

遅くなった帰りの寂しい道。
巡査のようなモノに呼び止められた。
自転車のライトがついてない。
無灯火で違反、というわけだ。
名前を訊かれた。
ついうっかりオカバヤシハルオと名乗ってしまった。
が、知らない名前。
家族にも知り合いにも憧れの有名人にもそんな名前はいない。
巡査のようなモノが手帳を構えた。
「どんなカンジですか?」
「それは、勿論、反省してますよ」
「そうじゃなくて名前の漢字です」

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人類最期の職業

Bは贔屓にしている個人タクシーを呼んだ。
運転手が百歳なのが贔屓の理由。
曰く、タクシー運転手としての抜群の経験値。
街の汎ゆる近道と抜け道を知り尽くしているのだ。

Bが告げた行き先は知る人ぞ知る高層マンション。
百歳ドライバーは了解の合図に鼻から変な音を出した。
滑らかに走り出す百歳タクシー。
3回ほどクルクル回ったらもう着いていた。

なるほど、抜群の経験値。

建物の「コ」の字に囲まれた住

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