あの人にもらった種がね
芽を出したんだよ
だから私は見えないように
土をかぶせたの
水もあげずにね
それでもまた芽が出て
小さな双葉になってた
私は怖くなって
その双葉が見えなくなるまで
土をかぶせたの
なのに
いつの間にか
ものすごく伸びて
くるくると宙に舞って
空にまで届いて
雲にまでなって
とてもおどろいたよ
やがてそれは
もくもくと広がって
銀色に光って
私を上から見下ろしてた
私はそれを
ラムネ瓶の中の
ビー玉越しに
片目を閉じて
ドキドキしながら
そっと見たんだよ
それは案外
優しくて
穏やかで
ほんのちょっと
秋の匂いもしてたよ
今度は
たっぷり
水をあげるから。
#心象風景 #平成最後の夏
#盛夏 #詩