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シンセについて聞いてみよう その7〜ウェーブテーブル編〜

南:はい!今日もシンセについて聞いてみようと思います!
(Waldorf MicroWAVE XT 画像出典)

佐々木:え、どうしたの?今日はやる気なの!?

南:はい、わたしが質問したわけだから、最後まで聞き遂げなくてはいけない使命が、、、

佐々木:おぉぉぉ、、、、それじゃ今日は説明が一番難解な、、、

南:ヒィぃぃ、、、

佐々木:あれ?使命は、、、、

南:んー、、、

佐々木:今日は長くなるので、とにかく、耐えてください。

南:、、、、、頑張ります。

佐々木:頑張りますっていう時ってさ、、まぁいいやw

えー、今日はウェーブテーブルシンセサイザーについて説明して見たいと思います。ちょっとややこしいので簡単に説明できるかちょっとわからないのですが、
今までもそうだったけど、仕組みは理解できなくても、シンセの全体像を漠然と捉えていただけたらと思います。

南:はい、もう、、ずっと漠然としていましたけど笑

佐々木:ですよねwそれで大丈夫です。
とりあえず仕組みと歴史を簡単に説明しますと、、
今まで見たシンセサイザーは大きく三つに分ける事ができまして、
アナログシンセ、FMシンセ、それと、デジタル波形を使ったシンセ。
ウェーブテーブルは三つ目のデジタル波形を使ったシンセになります。

南:ほうほう

佐々木:ウェーブテーブルシンセサイザーというのは、PCM、サンプラーの兄弟のようなシンセでして、80年代にWoldorfというドイツの会社が作ったPPGというシンセで一躍有名になったシンセサイズの方法です。この会社は本当にすごいシンセをいくつも作るのですが、経営が下手くそなのか、その後も謎の高級シンセを作ってたけど、一度倒産してしまいました。でも最近また復活して、また素晴らしい謎シンセを作っています。他の王道の会社とは常に一味違うシンセを作っている素晴らしい謎会社です。

南:謎会社w

佐々木:んで、ここから、一応仕組みを説明しなくちゃいけないのですが、厄介なので早口で行きますね。聞こえてなくてもいいです。

まずシンセサイザーは主に音の波形を作ることが重要なのですが、アナログやFMは一周期の波形(サイン波、三角波、、、)を作り出して加工して音を出す仕組みでした。
その波形の部分をウェーブテーブルはデジタル音声データを使って行います。その際様ざまな一周期の波形をテーブルにセットし、複数の波形を組み合わせてひとつの波形として使います。音を鳴らす時はその波形のどこの部分(時間軸)を鳴らすのかを選んで鳴らすという形です。
つまり、アナログやFMができなかった(やりずらかった)時間軸による波形の変化をウェーブテーブルはできるようになります。このことによって今までのシンセサイザーとは全く違う音作りができるようになったわけです。

南:、、、、、、、、、、、、、、、、、はい!

佐々木:はい!聞こえませんでしたね笑
ではここからもうちょっと具体的に見て行きますね。
まずアナログシンセで音作りするときに最初にやるのは、波形の選択ですよね?
サイン波とかパルス波とかまず選ぶ、、
ウェーブテーブルの場合も同じくまず波形を選ぶのですが、その波形がアナログに比べてものすごく複雑になっているんです。

その複雑な波形というのは、最初の一瞬はノコギリ波、そして次の瞬間は三角波、最終的にサイン波、、、というような一つの波形の中にいろんな波形が入っている、、、波形なんですね。それを時間軸でどの波形を鳴らすか選んだり、モジュレーションをかけて行ったり来たりなんてこともできます。これはアナログシンセでは全くできません。

南:なるほど、、、なんかちょっとお得な感じですね、、、

佐々木:お得、、、なのか笑
そしてこの複雑な波形の部分というのは、実はPCMシンセと同じデータが使えます。ちょっと変換しなくてはいけなかったりもするのですが、、、

南:ん、、、ということはピアノの音とかも?

佐々木:はい、その通りです。ピアノの波形は次々と倍音が変わっていくとても複雑な音なので、バリエーションが豊富な波形を生み出すことができます。

南:あれあれ、ちょっと、待ってください!
ってことはPCMシンセサイザーと何が違うんですか?

佐々木:はい、いいところに気がつきました。
この辺がこのシンセの落とし穴になりますよね、いま穴に落ちました

南:ぎゃーーーー

佐々木:救い出せるかなぁ、、、、
ウェーテーブルについて話すにあたって僕も、他の人がどういう風に説明しているかを検索して見たのですが、見事に解釈がバラバラですよね。技術の面で言えば、PCMやサンプラーとは全然違う方法なのですが、使い方によってはとても似た事ができるわけでもあります。この部分が解釈によって変わってしまう原因なのだな、と。PCMシンセとサンプラーも技術は同じで、使い方が全然違っているのも同じ様な話ですよね。

南:助けて、、、、

佐々木:なのでここからは僕も独自に考えてみます。
まずPCMやサンプラーは基本的には波形を元の時間軸のまま、発音します。
例えば、スネアの音は一瞬でものすごいたくさんの波形が変化してスネアの音に聞こえていますが、その一瞬をすごーく引き伸ばしてみると、三角波だったりノイズだったり、と変化しているのがわかります。ザー、ブー、モー、ンー、って感じで。で元のスピードに戻すとカン!という感じ。
そしてその変化している音の一箇所だけ切り取って鳴らしているのがウェーブテーブルシンセサイザーなんですね。一周期の波形というのは簡単に言えばものすごい短い時間の音、、という風に捉えればいいと思います。

南:んーーーーなーーーるーーーほーーーどーーー

佐々木:はいはい!今いいウェーブテーブルを生み出していますよ!
もう少し簡単に考えるとパラパラ漫画を考えるといいかもしれません。
最初はまっすぐ立っている、次のシーンでは右足をあげている、次のシーンでは一歩前に踏み出している、その次は左足をあげている、、、みたいな。
これをぱぱぱっとしていけば動画になりますよね。けど、その一瞬を止めてみればそれぞれ全然違う絵これがPCMとウェーブテーブルの違い、、ということになります。

南:ななななるるるるほほほほどどどど

佐々木:はいはい、また良いところに気がつきましたね。
ウェーブテーブルシンセサイザーの特徴として、選んだ波形のどの部分を鳴らすのかを時間軸で動かすこともできます。なので設定によっては元々の時間軸で鳴らすこともできます。ということはある程度ですがPCMシンセサイザーと同じこともできます。

南:おぉぉ便利!、、、、の様な気がする。

佐々木:これすごく便利ですw
そもそもシンセサイザーの進化は生音の複雑な波形をどうやって再現するかという目標の中で進化してきたところがありまして。ピアノの音とアナログシンセの音は何が違うのかというところに注目してみると、アナログシンセの音は時間による波形の変化が乏しいというところに違いがあります。

ピアノの音は、打鍵して、ハンマーが弦を叩いて、その音が他の弦やピアノ本体に共鳴して、だんだん鳴り止んで行く、、、という実はかなりの変化が一瞬にして起きています。これがないとピアノらしく聴こえないというわけです。さっきのスネアもそうですね。この時間軸による音の変化というのをシンセサイザーで再現しようとしたわけですね。

南:はい!また質問です!

佐々木:おぉ今日はいいですね〜どうぞ!

南:シンセサイザーが生音を目指しているのであれば、PCMでよかったんじゃないですか?

佐々木:はいはい、またしてもいいところに気がつきましたね。
まず言えるのは開発された時期が微妙に違うので、比べるものでもないのですが、じゃーウェーブテーブルシンセが過渡期のものだったのか、といえばそういうことでもないと言えます。

そもそもシンセサイザーとは何か?と考えたときに、二つの考え方が出てきます。それは、何もないところから音を作り出すこと、もう一つは生楽器の再現です。

よく考えてみると作曲家が音楽を作る時、そもそも存在している音色をイメージするのが当然ですよね。そうじゃない人も勿論いますが、だいたいはそもそも存在する、知っている楽器の音色をイメージして作曲、アレンジをしていきます。

しかしシンセサイザーというのはそもそも固有の音色はありません。初期はある程度固有の音色がありましたが、FM音源以来、音づくりの可能性はほとんど無限になってしまいました。
しかしそんな聴いた事のない音色を作曲家が想像していたわけではなかったわけですね。ほとんどが聴いたことのある音色だったわけです。
そもそも聴いたことのない音色で音楽を作ってしまったら、その楽器を開発する所から始めなくてはなりません。

南:確かに、、、、

佐々木:そこでシンセサイザーは、楽器としてのシンセサイザーと、音色開発の為のシンセサイザーの2方向に分化していった様に見えます。片方はあくまで楽器であり演奏するために作られていき、もう片方は音色をシンセサイズすることに特化していきます。
作曲家というのはあくまで音楽を作る職人であって、新しい音色を作る職人ではありませんでした。そうやって音楽業界としては、PCMやサンプラーの方が多く使われる様になり進化が進んで行きます。その分岐点と言えるのがこのウェーブテーブルシンセサイザーでした。
より簡単に捉えるとしたら、
複雑すぎて手に負えないFMシンセを発端に、よりシンセサイザーらしくなくなったのがPCMで、あくまでシンセサイズを目的に開発されたのがウェーブテーブルです。
もちろん一般的な作曲家がよく使っていたのはPCMシンセサイザーですよね。

南:ふむふむ。。。。。

佐々木:しかし、シンセサイザーの進化は止まりませんでした。少数の人たちによって(マニアックな人はたくさんいましたが)その後もシンセサイズの可能性を追求し続けています。ウェーブテーブルの他にも、同じ様な仕組みのベクトルシンセ、サンプリングを進化させたグラニュラーシンセ、FM理論の応用したフェイズディストーション、などあらゆるシンセサイズの方法が生み出されて行きました。
そうやって各会社が独自のシンセサイズの方法を開発し発売して行きますが、やはりぱっと使えてイメージ通りの既存の音が使えるPCMが音楽業界ではリードしていました。

この時点ではもはや新しいシンセサイズなどなくても、PCMが複雑なシンセサイズされた音をサンプリングさえしてしまえば同じ音が出せる、、、という状況になり、より複雑化していくシンセサイズの方法は一般にはなかなか定着しなくなってしまいました。

南:だからシンセサイザーって謎なんだ、、、

佐々木:そうですねぇ、、、まぁそもそも一からシンセサイズしたかった人がどれくらいいたのか、、、という問題かもしれないです。

南:でも佐々木さんはPCMやサンプラーより、FMシンセが好きですよね。

佐々木:はい、そうなんです。ここにいたんです。
作曲より音色作りが好きな人間が笑

南:レア!

佐々木:そうなんです。
しかしその後の時代の流れとともに、コンピューターで音楽を作る時代がきた時に状況が一変しました。シンセサイズの逆襲です。

南:逆襲のシャア、、、

佐々木:そうです、、いや、やっぱり違います。

南:がっかり。

佐々木:ということで、次回は現代におけるシンセサイザーの立ち位置を見て行きたいと思います。

南:永遠とはこういう事なのだな。

佐々木:え、なにがですか?

南:いえ!なんでもありません!





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