保存版 ツモ和了確率をいろんなパターンで計算してみた!
こんにちは、アンモナイトです。
今日のメインディッシュは、和了確率をいろいろなパターンで計算した一覧表です。
こういう表って、今回の記事が初めてだと思います。それでは、中身をどうぞ。
1.和了確率を知りたい!
東家で、ポン・チー・カンのない6巡目に場に2枚見えている(したがって、6枚残ってる)リャンメン待ちでテンパイしたとしましょう。例えば、こんな手です。
端にかかったリャンメン待ち。それでなくともリーチで親マン。これはリーチの一手でしょう。
ポン・チー・カンがなければ、東家と南家は18回、西家と北家は17回のツモがあります。
それでは、親リーチに子は完全にベタオリするとして、残りの12回のツモで、このリーチをツモ和了できる確率はどのくらいあると思いますか?
50%くらい?30%くらい? それとも80%くらいでしょうか??
いろいろなパターンについて和了確率を計算しようというのが今日の話です。
2.さまざまな和了確率は?
ポン・チー・カン、自分→他家あるいは他家→自分の放銃、他家のツモ和了、途中流局がないという仮定の下で、任意の巡目と山に残っている枚数に関してツモ和了確率を厳密に計算することができます。
東家6巡目2枚見えだけを計算しても、ほかの場合はどうなのか、さまざまな疑問が出てきます。
6巡目じゃなくて12巡目だったら?
2枚切れ(6枚残り)じゃなくて5枚切れ(3枚残り)だったら?
東家じゃなくて(ツモが1回少ない)西家だったら?
キリがありません。
しかし、不思議なことに、筆者の知る限り、種々のパターンについてツモ和了確率を計算して一覧にしたものはありません。
3.イメージは統計学の教科書のおまけから
統計学の教科書って、たいてい最後の方に、おまけ?として正規分布とかt分布とかの表が載っています。こんな奴です。大学で統計学の授業を取った人は、見おぼえがあるのではないでしょうか。
(出典)emathWiki(http://emath.a.la9.jp/ydir/Wiki/index.php?%C0%B5%B5%AC%CA%AC%C9%DB%C9%BD)
もちろん実際には、今では上のような表をみて統計的な検定することはないでしょう。ただ、具体的な数字が並んでいるのを見ることで、確かに正規分布やt分布というものが存在するんだなーと実感できます。
本稿の表は、上のような統計表をイメージしてつくりました。
4.先行研究
ツモ和了確率の計算自体は、筆者のオリジナルではなく、すでに下記の書物で記されています。
石田滋(1985)『コンピューターが教える麻雀の勝ち方』大泉書店。
とつげき東北(2004)『科学する麻雀』講談社現代新書。
土井泰昭(2014)『最強!確率論で勝つ麻雀』マイナビ。
いちおう研究者なので、先行研究はリスペクトしておきたいと思います。
とつげき(2004)はいわずとしれたデータ麻雀の嚆矢。あとの2冊は相当にマイナーで、ご存じの方は少ないのではないでしょうか。
5.計算の理屈
計算自体は大したものではなくてエクセルが使えれば誰でもできるものです。計算の理屈は過去に一度書きました。
手短に述べると、以下、ポン・チー・カン、自分→他家あるいは他家→自分の放銃、他家のツモ和了、途中流局がないと仮定。
n枚の未知の牌の中にa枚のアガリ牌があるとき、r回のツモでツモ和了りする確率を考えましょう。
和了しない確率は、n枚からr回ツモったときにa枚の当たりが1枚も入っていない確率となります。
和了しない確率はC(n-a,r)/C(n,r)となので、和了する確率は残り、つまり1-C(n-a,r)/C(n,r)となります。C(n,r)とは組み合わせ(Combination)のことで、異なるn個のものからr個取り出す組み合わせを表します。式で書けば以下の通りです。
6.ツモ和了確率の基本表
ここからがメインの話です。
ツモ和了確率の基本表です。画像では細かいので、下の方にダウンロード用のPDFもおいておきます。スマホでご覧の方はそちらを活用していた打レバ幸いです。
エクセルの機能(カラースケール)を使って、確率の大きさに応じて色を付けています。
残り枚数に関する注意点ですが、何枚残っているかだけが重要で、確率と待ちの形は関係ありません。例えば、東家6巡目の4枚切れのリャンメンと0枚切れのカンチャンやシャンポンは同じ和了確率になります。どちらも4枚残りということで、当たり4個のボールを含む101個のボールから12個取り出して1個でも当たりが入っている確率を求めているわけですから。この確率は0.402(2021.3.9訂正 数字の誤りを訂正しました。誤0.541→正0.402。0.541は6枚残りの確率でした。)になります。
8枚残りの待ちは、ゼロ枚のリャンメンということで自明でしょう。では、14枚残りはというと、2333456のように、隣接タンキ+暗刻+順子
でゼロ枚見えです。くわしくは下記の記事をご覧ください。
メンチンを除くと、日常的(?)に目にする多門張は3334567のような暗刻+隣接ノベタンの17枚待ちですが、表のスペースの関係で残り牌は14枚から1枚の範囲にしました。17枚全部が生きているケースは少ないですしね。
7.和了確率表の見方
上掲の表はみづらいので、東家についてやや拡大した表を示して、見方を説明しましょう。
東家がポン・チー・カンのない6巡目に場に2枚見えている(したがって、6枚残ってる)リャンメン待ちでテンパイしたとしましょう。冒頭にあげたこんな手です。
このとき、リーチをかけて他家からの放銃や他家の和了がないという仮定の下で、最終の18巡目までの12回のツモで和了する確率は、表のテンパイ巡目6と6枚残りが交差する数字から0.541であることがわかります。いいかえれば、12回のツモの中で少なくとも1枚和了牌を引く確率が54.1%ということです。
和了確率は巡目によって変わります。
上記のテンパイ・リーチが12巡目(残りツモは6回)の場合には0.396、16巡目(残りツモは2回)の場合には0.189になります。
たまにツモ番が1回しかないリーチというのがありますが、6枚残りなら0.105の和了確率です。けっこうあがれそうですね。もっとも終盤で6枚残りというのはあまりないかもしれません。3枚残りなら0.053です。(ここでの本題ではありませんが、1回しかツモがないリーチは、同巡内にポン・チーがないと和了ったとき一発もつきます)
8.例1 フリテンリーチ
ツモ和了確率基本表が直接的に役立つのはフリテンリーチのケースでしょう。まさに、ツモ和了しかできないわけですから。
下の図は、くっつきのイーシャンテンで、8mをツモってテンパイしたところです。ただし、あいにく第1打で9mを切ってから、萬子が上に伸びてフリテンになってしまったとします。
45678mの3面張は369mの11枚待ちですが、自分で9mを1枚捨てているので、他家が369mを捨てていなければ残り10枚です。
6巡目にフリテンリーチをかけて、子がベタオリして最後のツモまでツモれるという仮定の下で、ツモアガリの確率は和了確率基本表から0.735となります。けっこう和了が期待できます。他家も369mを捨てていたとすると、ツモアガリの確率は9枚残りで0.696、8枚残りで0.651、7枚残りで0.599です。
9.例2 ツモスーか三暗刻確定リャンメンか
ある程度、麻雀の経験がある方は、何度か下のような手に直面したことがあるはずです。3sを切ればもちろんツモリ四暗刻、2sを切れば待ちはリャンメンになるが三暗刻。さて、どっちにとるか?
実戦では、上の手牌になった時点で、例えば7sがすでに場に2枚切られているなど、選択の余地がない場合もありますが、ここでは関連牌(1,2,4,7s)は場に1枚も見えていないと仮定します。
ここでは、子がかわし手をしかけていて、親リーチをかけて子を降ろさなければいけないとしましょう。2sと3sのどちらを切りますか?
簡単化のために、リーチをかけたら子は完璧にベタオリして、ポン・チー・カンはしないとしましょう。
3sを切ってツモリ四暗刻に取れば、残りのツモ12回で2sと7sの残り4枚のうち少なくとも1枚をツモる確率は上の表から0.402です。流局の確率は0.598(=1-0.402)です。期待値を考えてみましょう。ツモリ四暗刻に取れば、ツモって16000オール、流局ならノーテン罰符1000オールです。流局だとリーチ棒は帰ってこないことに注意してください。
期待値は
0.402×48000+0.598×2000=20492
です。
2sを切って三暗刻確定リャンメンにとれば、14sの8枚のうち少なくとも1枚をツモる確率0.651です。流局の確率は0.349(=1-0.651)です。裏ドラを考慮しない場合、期待値は
0.651×12000+0.349×2000=8510
です。期待値の話は今回の本題ではありませんが、ツモリ四暗刻の期待値は三暗刻確定リャンメンの期待値の約2.4倍になっています。4倍ではありません。これは、流局した場合に得られるノーテン罰符は、和了点と関係がないからです。
10.一発ツモの確率
一発ツモの確率は簡単です。未知の牌n枚の中にアガリ牌a枚があるとき、a/nです。
東家6巡目6枚残りならば、一発自摸の確率は0.059です。平均的には、20回に1回くらいは一発でツモれるイメージです。
11.ツモ和了確率表(Mリーグ視聴用)
通常なら、リャンメンで和了牌が場に2枚切られていたら、残りの6(=8-2)枚のうち何枚が他家に使われて、何枚が山に残っているのかは神様しかわかりません。
けれども、Mリーグだと放送席ではすべてのプレーヤーの手が見えるので、王牌を含む牌山に和了牌があと何枚あるのかが厳密にわかります。数え間違いがちょくちょくありますが。
リャンメンで和了牌8枚が場に2枚切られ、他家に使われているのが4枚だと残りは2枚になります。ただし、この2枚が2枚ともツモ山にいるのか2枚とも王牌にいるのか、それともツモ山と王牌に1枚ずつなのかはわかりません。
Mリーグ視聴用に表を作成しました。
一発ツモ確率表(Mリーグ視聴用)
12.ダウンロード用PDFファイル
PCあるいはスマホの画面ではみずらいので、印刷用/ダウンロード用にPDFファイルを用意しました。ご活用ください。
13.おわりに
本稿では、ポン・チー・カン、自分→他家あるいは他家→自分の放銃、他家のツモ和了、途中流局がないという仮定の下で、すべての巡目と残り枚数(1~14枚)に関して、東家~北家のツモ和了確率を厳密に計算し、一覧表を作成しました。
このような表は、筆者の知る限り、本やネットで公開された形ではこれまでありませんでした。
また、一発ツモの確率表も作成しました。さらに、Mリーグ視聴用に、4人の手で使われている牌がわかる状況の下での、ツモ和了確率と一発ツモ確率も表に整理しました。
実際には、他家は完璧にベタオリばかりしているわけはなく、追っかけリーチをかけてくることもあるし、降り打ちで放銃することもあります。
残された課題は、和了確率表から具体的な戦術を導くことです。これは一定の確率で他家が自分の和了牌を切る、一定の確率で自分が他家の和了牌を切る、という仮定を導入することで可能になると思われます。この方向の発展については今後、探究してまいります。
最後まで、お読みいただきまして有り難うございます。
何らかのご参考になれば幸いです。
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