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UXデザインを社内で扱う時の3つの問題点

こんにちは。ANKR DESIGNでUXデザイナーをしている大倉です。

本日は、UXデザインを社内のプロダクト戦略に活用したい人に向けて、UXデザインを社内で扱う時の問題点とそれに対する提案を書きます。UXデザインに携わっている方々にとって社内で活かせるティップスや新たな気づきが見つかれば嬉しいです!

この議論が発生した背景

黒須正明さんの著書「UX原論」の中にこのような言葉があります。

「2000年代はUXという概念が広まりだした時期でもあり、さらにデザイン思考(designthinking)という概念や方法論も徐々に関係者の間に広がる動きを見せた。しかし、こうした動きは、当初ユーザビリティを唱道していた人間工学関係者でなく、マーケティング関係者が中心になって活性化しようとした経緯があり、その結果、「ユーザのためのユーザビリティ」から「売れるものづくりのためのUX」という意味的変化が生じた。」
「ユーザビリティや後発のUXは、「良いもの」だから「売れる」というロジックになったが、結果として「売れる」ことを重視した人々がユーザビリティやUXの活動を盛んにし、さらにそれらをイノベーションやスタートアップなどの企業活動にも関係づける結果となった。この動きは、本来ユーザのためを思って、いいかえれば、ユーザの一人である自分自身にとっての便益性を原点としてユーザビリティ活動やUX活動を行ってきた著者の場合とは異なるものであり、著者はそうした動向に違和感を覚えるようになってきた。
引用元:黒須 正明. UX原論 ユーザビリティからUXへ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.764-772). Kindle 版.

つまり、日本におけるUXデザインは、「売り上げを伸ばすための手段」と言う考え方になっており、結果本当にユーザーのことを思っていないのでは?という点が社内で論点になりました。

しかし、「売り上げを伸ばすための手段」ではなく、実際にユーザーのことだけを思って社内でUXデザインを扱うとなると、障壁があることも事実です。

また、会社である以上、売り上げを出すことは大切なことですが、売り上げのためだけの施策のせいでユーザーが離れてしまい、結果的に売り上げが下がってしまうこともあります。

そこで、今回はUXデザインを社内で扱う際によくある問題点を3つほど程紹介することで、「売り上げを伸ばすための手段」となってしまっているUXデザインの在り方について考察したいと思います。

社内でUXデザインを社内で扱う時の問題点とは?

◆問題点1:
UXデザインチームがプロダクトの改善案を出しても実際の業務で活かされない

よくあるシナリオ
企画チームが口コミサイトのコメントやレビューは必死に読むが、QAチームの話は全く聞かない。

なぜそのようなことが起こるのか?
1.企画チームもQAチームの提案をどう実際のプロダクトに落とし込んだらいいのかわからない
2.致命的な欠陥ではないので、即時に対応する必要性を感じてもらえない
3.利益との繋がりが見えにくいので優先順位が下がる

どうしたら良いのか?
UXリサーチで得られた結果を数値化し、アクションプランと共に提案してみるというのは一つ手段としてあげられると思います。

リサーチ結果がどう利益につながるかを、グラフや数値と共に示す等することで、他部署の人にとってもわかりやすい資料になりますし、アクションプランがあることで、提案内容を実行しやすくなるのではないでしょうか。

◆問題点2:
利益のためにユーザビリティを悪用する企業もある

よくあるシナリオ
クレジットカード会社がユーザーがリボ払いしやすくなるようなUXデザインを考えることで、リボ払いによる手数料の利益を多く得ようとする。

なぜそのようなことが起こるのか?
1. 利益と直結する内容じゃないと社内で意見を聞いてもらえない(社内での影響力を持てない)
2. 株式会社だから利益を追求しなくてはいけない

どうしたら良いのか?
 ユーザーに対し誠実であることが、利益につながることを根拠・実例とともに社内に示すことが有効かと思います。

一例ですが、メルマガの退会をあえてしやすいようにUXデザインを変えた企業がり、結果的に多少退会者は増えたものの、結局メルマガに戻ってくるリピーターも増え、結果として登録者数が以前より伸びたという事例があります。

つまり、ユーザーフレンドリー(倫理的である)であることがユーザーの信頼に繋がり、エンゲージメント向上につながり、結果利益につながると言えそうです。

◆問題点3:
UXデザインについて勉強をしても、それをどう実務に活かしたらいいのかがわからない

よくあるシナリオ
UXデザインについて、オンラインで学んだり、資格のために勉強をしてみたけど、習ったことを実務で全く使っていない・・・

なぜそのようなことが起こるのか?
1.学問のUXデザインをビジネスに活かす方法を学んでいない、実践できていないから
2.UXデザインに限らず、他の資格についても言えること

どうしたら良いのか?
座学だけでなく、自社の商材を使ったロールプレイを含めた研修等、実践ができる場を通してUXデザインを学ぶことが大切かと思います。


まとめ

ユーザーのことだけを思うUXデザインというのは、結局利益につながらないように見えるので社内では重要視されず、意見を聞いてもらいにくいと言えるでしょう。

一方で、利益のためのUXデザインというのは、結局ユーザーに不利益を被ることになってしまうことが多いです。目の前の利益だけを追い求め、ユーザーを騙すようなプロダクトは信頼を失い、最初はよくても結局はユーザーが離れていく結果になってしまいます。

つまり、ユーザーだけを考えても、利益だけを考えてもダメで、
ユーザーとその周りのシステム(ビジネス、ユーザーの周りの人、地球環境等、プロダクト関わること・人)についても考えることが必要と言えるのではないでしょうか。

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