深夜のパンと錯覚の月
5月17日(金)
よく焼けたパンのにおいで遠い国行ってしまった君を起こすよ
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引越しをするタイミングで、大学時代からもう10年近く使っていた電子レンジを捨て、奮発してヘルシオのオーブンレンジを購入した。
しかし、引越しをして早5ヶ月、未だに電子レンジのあたため機能しか使用していない。
まあ全然予想通りです。10年あたため機能だけで生きてきた奴が急にオーブンをガンガン使い始めるワケないのよ。
ヘルシオの持ち腐れ。なんかオーブン機能使いたいな。よ〜し、
パンを焼こう。
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簡単なパン生地のレシピを調べて、西友のネットスーパーで材料を購入して、Amazonでキッチンスケールを購入。どっちも朝9時くらいに注文して、夕方には家に届くんだからすごすぎる。
強力粉とドライイーストと砂糖と牛乳と卵とバターを混ぜて、捏ねる、捏ねる、捏ねる。
そうすると、まとまりのあるツヤツヤの生地になるらしいのだけれど、うちの子は一生まとまらず、ずっとベタベタしていた。
手に生地が纏わりつきすぎてちょくちょく手を洗っていたので、当初の量の1/4は排水溝に流れていった気がする。
後から調べてみると、捏ね方、手の温度、材料の温度なんかも、まとまりのある生地にするためには大事な要素らしい。パンってそんな繊細なんだ?
諦めてベタベタのまま発酵させて、ベタベタのまま成形して、ベタベタのまま焼いた。
作り始めてから約5時間。深夜12時。焼き上がり。
わ〜〜〜!ちゃんとパンだ!焼けばなんとかなった!
ひとつ食べてみると、外はカリッと中はもちっとで普通にパン。普通においしい。興奮して、近所の友人に写真つきで「きいてくれ」「人生初、パンを焼いた」とLINEを送った。
友人は今日は会社の飲み会で、家とは随分遠い場所で飲んでいて、今は帰り道らしい。酔っ払って長時間電車に乗るのは過酷すぎる、1時間後に行く、という返信とともに、短歌も送られてきた。
いくつかの国境こえてはじめてのパンが焼けたときいてここまで
これに返したのが、冒頭の短歌。
木綿のハンカチーフを思いながらよんだら、「木綿のハンカチーフみたいでいいね」と言われて嬉しかった。
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深夜1時。友人から着信。出ると、すごく興奮した声で「今日の月見た!?今日の月、どのくらいの大きさだと思う!?」と矢継ぎ早に言ってきた。
外出て!見て!と言うので、パジャマ姿のまま外に出て空を見上げると、
で、でっけえ〜〜〜!
月が大きく見えているんだろうなあ、と予想はしていたけれど、予想よりも大きくて、あとなんかすごく黄色くて、思わず笑ってしまった。電話の向こうで友人も笑っていた。
通話を繋ぎながら、月に魅入ってフラフラ歩いていると、曲がり角のむこうから人の声がして、見ると友人だった。友人もまた、月を見ながらフラフラ歩いていたらしい。曲がり角でゲラゲラとひとしきり笑って、帰路についた。
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家に帰り、おいし〜!と100点の反応でパンを食べる友人の隣で、月がなぜ大きく見えるのかを調べた。
目の錯覚らしい。
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