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あたりまえのこと


日曜の朝、目が覚めて、いつものルーティン。
‪トイレ‪🚽に入ろうとすると、愛猫ソイ太郎が1階から階段をかけ登り、盗塁ランナーのごとく滑りこんできた。

それがなにか?と思われるかもしれないが、ここ数日間、この【あたりまえ】が、あたりまえでなかったのだ。


うちには、オスのサバトラ「ソイ太郎」(以降ソイ)という愛猫がいる。

ソイは「甲状腺亢進症」という疾患を抱えており、定期的に動物病院に行って薬をもらわなければいけない。

4カ月ぶりに、大嫌いな動物病院に行ったその翌日、ソイは10歳の誕生日を迎え、めでたく(?)高齢猫の仲間入りをはたした。

「お誕生日おめでとう🎂」と大好きなカツオのおやつをあげてお祝いをした。

そんな元気いっぱいだった2日後、ソイが体調を崩した。
お昼ごろまではいつも変わりなかったのだが、夜になって嘔吐を繰り返し、元気がない。
食欲もなく、いつもと様子が違うことは一目瞭然だった。
そして、みるみるうちにぐったりし始めた。
診察時間は過ぎていたが、急いで病院に電話して事情を説明したところ、すぐに見てもらえるとのことで病院に連れて行った。

これまで、元気がなかったのは、去勢手術の後、引越しした後、それからCTスキャンの後くらいで、その原因は明確だった。
今回のような原因の分からない、突然の不調は初めてだったため、病院に着くまでの約30分の時間はものすごく長く感じられ、車で向かっているこの間に、万が一のことがあるのではないか、と怖くて仕方がなかった。

病院に着き、すぐに診察をしてもらったところ、発熱しているとのこと。血液検査、点滴、注射(3本!)をしてもらった。血液検査の結果は、白血球の数値は上がっているが、それは熱のためで、特に緊急で重篤な状況ではないとの診断で、少しホッとした。

点滴と注射で、熱が下がれば特に問題はないだろうとのことで、その日は家に帰った。

治療が効いたのか、病院に行く前に比べると幾分落ち着いた様子だったが、食欲はないままで下痢もしていた。
明日になったら、熱もさがって、いつものソイに戻ってくれますようにと祈りながら眠りについた。

しかし、翌日になっても食欲は回復せず、下痢も続いていた。
いつもはうるさいくらいに、ご飯やおやつをねだって、ものすごい勢いでがっつく、超食いしん坊のソイ。
朝夕に、甲状腺亢進症のお薬を、好物のチュルビに埋めこんであげる時も、「はやくはやく」と催促して、飛びつくようにペロリと食べてしまう。

だけど、今日はまったく見向きもしない。
それどころか普通のフードも食べようとしない。
食べ物への執着が、人(ネコ)一倍強いソイの、そんな姿を見たのは初めてだった。

嘔吐はおさまったようだが、ご飯は食べず、下痢も続いており、話しかけても返事もおしゃべりもしてくれない。
ただただ、一日中眠そうにしていた。

その次の日も様子は変わらず、まるでネコが変わってしまったかのようだった。
ご飯をほとんど食べないので、すっかり痩せて軽くなってしまった。このままではソイが死んでしまうかもしれない!
その日の夕方、動物病院に電話をして、再度診てもらうことにした。

病院に着いて検温したところ、熱は下がっていた。
しかし一向に食欲はもどらず、状況も好転しないため、心電図、レントゲンにエコー検査と時間をかけて検査をしてもらった。
心臓、その他の内臓も特に問題はなく、何か誤飲したような形跡もなかった。

栄養補給のための点滴と、食欲が増進する注射、胃薬を投与してもらい、その際に与えられた缶詰は、少し食べてくれた。

最後に、胃腸を整える薬を3日分処方してもらい、様子を見ることになった。
もしこれでも回復しなければ、抗鬱剤のような薬の投与や、大きな病院で更に詳しい検査をして、別の観点から原因を特定することになるという。

その日の帰宅後、缶詰を少し食べてくれたものの、病院での検査疲れなのか、とても眠そうにぼんやりしていた。

次の日は、朝から雨が降っていた。
まるでソイや私の心のように、空が泣いていた。
朝夕の甲状腺の薬と、胃薬はなんとか缶詰といっしょに食べてくれたが、相変わらずおとなしく眠そうな様子が続く。。

翌日の土曜日は、朝から予定があり、心配な気持ちに後ろ髪をひかれながらも、相方にソイをお願いして家を出た。
目的地に向かう前に、朝のウォーキングコースでもある、近所のお寺に立ち寄った。
「願いが叶う万願寺」と書かれた看板が目に入る。
本堂の前に着くと、握りしめた100円玉をお賽銭箱に丁寧に投げ入れた。そして鐘をならしてから一心に祈った。もちろんソイが元気になってくれることを。

いつもはソイと相方と私、そして私の大切な人たちのことをお祈りするのだけれど、その日は、ソイのことだけを心から祈った。どうかお願いですから、ソイが元気になりますように。いつもの元気なソイにもどってくれますように。

その日の帰り、どんなネコでも大好きなこと間違いなし、ちゅーるちゅーるチャオチュール、「カロリー2倍!のエナジーチュール」なるものを買って帰った。
これで少しでも栄養補給できればいいのだけれど。。

やがて、私は確信した。やっぱりチュールは最強だと。
他のフードには興味を示さなかったソイが、チュールには反応してくれたのだ。すごいぞチュール!さすがだチュール!
久々に食いつきの良いソイの姿を見ることができた。泣きそうになった。
チュールのおかげで、夜の薬も難なく与えることに成功。
少し状況が好転しはじめたことを感じたのだった。

そして夜が明け、冒頭に戻り、日曜の朝。
いつもの【あたりまえ】が戻ってきてくれたのだった。

私はこの時の気持ちを、生涯忘れないだろう。
あたりまえのことが、どれほど大切で愛おしいものなのか、決して忘れはしない。


さぁ、「願いの叶う万願寺」に、お賽銭を奮発して、お礼をしに行かなければ!










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