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模倣犯 宮部みゆき

今更だけど、初めて宮部みゆきの本をオーディブルで聞いて見た。
5部作の長編で聴き続けられるかと不安だったけど
1部からどんどん世界に引き込まれて
家族の情景などが目に浮かぶ。
時代背景と、学校生活の様子など
ありふれた世界のありふれた学校、家庭の中で
人を殺すことの一線を軽々超えてしまう犯人たち。

物語の登場人物の中で
家族を殺されてしまい一人残された少年につきまとう
犯人の娘の言い分が、どうしても理解できない。
でも、実際に、事件や何か起こった際に、
自分勝手な解釈をして、自分以外の他者に責任をなすりつけ
心を保とうとする人はいるし、
そんな人間に何を言っても通じないし、
理解してもらうことはできないから
実生活では距離を取ることでしか対処できない。
でも少年は距離を取りたくても、向こうからくることで
自分の負い目も重なり心を疲弊していく様は
きつかった。
同じように、被害者の遺族の情景や心情も細やかで
やるせ無い気持ちで、犯人を憎む気持ちさえ湧いてきたほどの
作品だった。
ネタバレになってしまうかもしれないが
頭のいい犯人を精神的に追い込み墓穴を掘る様は痛快だった。
物語を進めていくうちで、みんな犯人にいいように操られて
悲劇に進むのが辛かったのである。
人をコントロールしようと巧みな話術を使い
利用する人が多いのだが、そんな人にいくら言われても
影響されない人もいる。それが人間社会のバランスとなって
いるかもしれないと、様々な人間模様で考えさせられた。

人間いい時だけではなく、体調や、アンラッキーな出来事で
落ち込んでいる時ほど、身近にいる人のかける言葉ひとつで
犯罪に手を染めてしまうのかもしれない。

最近、環境という言葉をよく見たり、目につくのは
人間は環境に染まるということを
実感し、その通りになっている様を経験したからである。

環境という言葉は、
本人の努力以上の価値観などを本人の自覚以上に
浸透していくものであり、
良い環境にいればいるほど
無意識にその流れに沿っていくのであり
悪い環境にいればいるほど
抜け出していくことは困難になると
模倣犯を聞いて、思った。
長編でとても長い時間の作品だけど、人物描写や
犯人に迫る緊迫した様子。
続きが聞きたくてたまらないくらい
魅力ある作品だった。
ぜひ、お時間取れた際はどうぞ。
オススメです。

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