見出し画像

6ヶ月、誕生日

ずっと寂しかった。

 週に一回会えるのは嬉しかった。学校帰りに駅前で買い物をしてちょっとご飯食べて最寄り駅まで一緒に帰る。楽しかったっちゃ楽しかった。でも、わたしにとっては友達と変わらなかった。彼氏っぽいことがしたかった。1番好きなのは彼氏だけど、1番楽しかったのは彼氏じゃなかった。会えばずっとスマホしてるとか、スマホの充電なくて機嫌悪いとか、意味もなく機嫌悪いとか、自分の傘持たせるとか、ゴミ持ち帰らせるとか。彼女?もはや人に対する態度とは思えなかった。彼氏はわたしのこと好きじゃないんだなって思った。どこまでもプライドが高くて、守りたいのはわたしじゃないんだって思った。自分のこと何も話してくれなかった。話してくれないから何考えてるのか永遠に謎だった。そして、どうしてわたしが話しかけてるのに無視できるのか、機嫌悪くなれるのか、理解できなかった。聞いたところでどうせ黙るかはぐらかす。都合が悪くなるとすぐに黙るの嫌だった。この人とはきっと話し合いができないんだって思った。本人の前ではいい子でいたし、頼まれたら断れなかった。好きだから、多少のわがままは聞いてあげた。だから、わがままなフリしながらずっと顔色伺ってた。顔色伺いながら、この人が機嫌悪くならないように、ムリな要求うっかり受け入れないように警戒してた。機嫌が悪くならなかったら楽しかったし安心した。でも機嫌が悪くなったら少しも楽しくなかった。不安になった。そんな日はバイバイした後、家でずっと泣いてた。どうして好きな人の彼女であるわたしがそんな扱いされなきゃいけないのかわからなかった。散々友達に話聞いてもらって、次の日、その次の日にはわたしが悪かったな、成長しなきゃ、にまとまってしまった。彼氏がしていることはモラハラだと思った。絶対に許しちゃいけないのに、1週間後にはどうでも良くなって、また何事もなかったかの様に会ってた。いつか、されて嫌なこと話さなきゃと思ってた。

わたしには仲良い男友達が何人かいた。

 彼氏と何かあるたびに話を聞いてもらってた。彼氏に埋めて欲しかった穴を、男友達に埋めてもらってた。彼氏ができたからか、なぜかモテるようになった。わたしのこと好きな人今何人おる?とか調子乗ってた。その人たちがわたしのことが少し好きそうなのを知ってた。早く別れて欲しそうだった。付き合う気は全く無いのに愛情だけもらって、仲良くした。自分はクズだと思った。でも、好きそうなだけで本当はしらない、散々思わせぶりされてきたし、別に気にしなくてもいい。どうせ思わせぶりされたって好きになった方が悪いんだから。なんでわたしのことが好きじゃなさそうな男友達の方が、彼氏よりもわたしのこと大切にしてくれるのか、彼氏よりもわたしのことが好きそうなのか、納得いかなかった。彼氏に一番好かれたかった。男友達は、彼氏に傷つけられた分だけ優しくしてチヤホヤしてキュンキュンさせてくれた。でも、わたしは彼氏しか好きになれなかった。別れたくなかった。でもこのままじゃいけないのは知ってた。
 最初は男の子と2人で遊びにいくことはもちろん、そして男友達含めてプライベートで遊ばなかった。コース内での打ち上げ以外は断った。でもだんだん、彼氏を気遣う必要性を感じなくなった。だって、彼氏は私が誘ったところで、予定を曖昧にする。彼氏から誘ってくれることはない。会ったところでわたしに興味ない。それは、別に私のこと好きじゃないからだと思った。私が誰と遊んだって気にしないだろう。わたしが優先したいのは彼氏だったのに、サークルとか勉強はともかく、せめてわたしとのデートぐらい、わたしのこと見て欲しかった。わたしが誘わなきゃ終わる関係なんて辛かった。男友達が何回でもいつでも誘ってくれることがうれしかった。わたしだって彼氏から誘われてみたかった。気づいたら、男友達たちと彼氏に内緒で遊んでた。2人で遊んでもなんとも感じなくなった。最初は罪悪感があったのに、慣れたらなんともおもわなくなった。体の関係があるわけじゃ無いし、友達だし、こんなの浮気じゃない。そのお陰で彼氏とも付き合っていけた。連絡できなくて、構ってもらえなくて、寂しくても、他の人が構ってくれたからなんとかなった。でも、男友達じゃ埋められない穴があった。

彼氏は家に入れるのが嫌みたいだった。

 なんとか家に行く口実を作っても、なんだかんだ外出させられた。家でご飯食べる方がコスパいいのに、家じゃなきゃスキンシップもできないのに、どうして家から出すのかわからなかった。彼女のことは家に呼びたいものだと思ってた。友達に言ったら、浮気してんじゃない?って言われた。浮気なんて絶対するような人じゃないと思ったから信じてたけどほんとうは知らない。付き合った当初は家に行って一緒に寝てキスマつけて遊んでたのに、いつからかなくなった、レスってやつ?それが一番傷ついた。なにかしたくない事情があるなら話して欲しかった。このことは、この人はわたしのことが好きじゃ無いんだな、って気持ちに拍車をかけた。彼氏がしてくれないなら、セフレでも作ろうかと何度も思った。でも彼氏とじゃなきゃしたくなかった。ヤリモクという人種が一番嫌いだった、わたしのことを散々傷つけて恋愛観を歪ませたのはそいつらだから。でも、本人にしたいなんて言い出せなかった。そもそも家じゃないのにどこでいうんだ。夜中に一人でして一時的に満たされたけど、彼氏がいるのになんで彼氏とできないのか、どうして1人なのか悲しくて泣いた。付き合った時、わたしの初めては全部彼にあげようと思ってた。家にいけるチャンスを見つけて期待してはははぐらかされて、その度に傷つき続けた。いつしか可愛い下着もつけなくなった。期待するだけ無駄。彼氏にしか埋められない穴はずっと埋まらなかった。

このままじゃいけないのは知ってた。

 でも何を言えばこの状態が変わるのか。言いたいことを言えないまま我慢し続けて、今更何かが変わるとは思えなかった。それが彼の素の姿なのだろうから。何回も別れたいと思った、1回目はデート中ずっとスマホをされた時、2回目は傘を持たされた時、その日、あ、この人とはいつか別れるんだ、って思ってデート中に泣いた。気づいてないよね、だってわたしのこと見てないもん。どこが好きかわからなくなっていったのに、この人がいい理由があった。彼氏は真面目だから私みたいに浮気しないし、わたしが今まで出会った人みたいに、他に女を作る様な人じゃ無いから。この人はまだわたしのこと好きで、愛情表現するのが下手なだけなんだって信じていたかった。別れられない一番の理由だった。わたしが彼氏と付き合うことを決めた一番の理由は、恋愛に対する真面目さだった。今まで出会った人とは違うと思ったからだ。でも、そう信じることすら辛くなっていった。彼はそういう人なんだって受け入れてきたけど、もはやこれは価値観の違いじゃない、冷められたんじゃないかという不安の方がどんどん大きくなった。

誕生日プレゼントをもらった。

 期待してしまってた。でも、今日で終わりだと思った。もう会わない気がした。相変わらずとても高いものをくれた。でも、わたしのこと見てなかった。欲しかったのはものじゃなくて、気持ちだった。ずっと見ないふりしてただけだった。人生で一番幸せなはずの誕生日、その翌日にこんな形で泣くとは思っていなかった。プレゼントを持ってうちの近くまできた。5分ぐらい話して、バイバイしてからその後6時間ずっと泣いていた。テスト前だったのに勉強ができなくなった。誕生日の日に渡そうと思ってた、半年記念のてがみ。嘘で塗り固められた手紙。感謝を伝える手紙。全部思ってなかったと言ったら言い過ぎだけど、好きなのが彼氏だけなのは本当だった。でも、渡せなかった。向こうからの気持ちが伝わってこなかったからこんな手紙あげて、ますます舐められたら困ると思った。大体にして好意を寄せてる相手を舐めるとかどんなクズだよ。わたしのこと好きじゃないんだ、と泣きながらこれまで撮った思い出の写真を、全部非表示にした。連絡先も非表示にした。インスタのハイライトも消した。わたしの周りから彼を思い出させるものを全部遠ざけた。見つけたら泣いてしまうから。わたしは逃げた。お礼のラインで好きって言ったのに、返信は返ってこなかった。もう終わりだと思った。

友達が浮気を始めた。

 浮気のハードルが下がった。彼氏が会ってくれないなら、別に浮気してもいいと思った。浮気は絶対許せないって思ってた。でも、浮気される方だって悪いと思うようになった。わたしを傷つけなんだから、同じぐらい傷つけ返したって別に構わない。ラインの返信が返ってこないのは、このままフェイドアウトするつもりだからなんじゃないのか。それなら実質別れたものと同然じゃないか。水面下で活動してたって、浮気じゃない。今までなんとなく避けてた男友達、久しぶりに話した男友達、もはや誰でもいいから男と話して、遊ぶ約束を次々に入れた。




寂しいと伝えられたらよかった。

 でも、この人はわたしとは違う人種だった。わたしが仲良くなる人たちとは違う。わたしが当然と思うことは、ぜーーんぶ重いんだろう。伝えたら重いって言って振られるんだろうな。だから、ずっと我慢してた。

嫌だと言えればよかった。

 わがまま聞いてあげてないで、こんな扱いされてひどい!ってその場で気づければよかった。あまりにも傷つきすぎて、言える状態じゃなかった。言いたくても、本人を前にしたら圧倒されて言えなくなった。我慢するしかなかった。

 うまくいかない気がした予感はちゃんと当たってた。恋愛ごっこがしたかった。ずっと彼は推しだった。だから、推しと付き合えて、それだけでいいやって満足させてた。嫌なことがあるたびに、この人は元々わたしの推しだったんだって、言い聞かせた。恋愛ごっこに付き合ってくれてありがとね。大好きだったのに、好きな人に好きって言えなくてごめんね。きみは好きって返してくれないから、わたしも言えなくなっちゃった。なんで返してくれないの?って傷つきたくなかったの。

 君のことだから、もう二度とわたしと会うことはないんだろうね。でも、付き合ってる間だって、一番に何かを伝えたいと思うのも、一番の味方でいてくれるのも、ずっと君じゃなかったよ。

お疲れ様でした。ってなんだよ。
そーだね、おつかれ。
それってそういう意味だったのね。

そっか、君はそういう人だよね、
どこまでも逃げ続けるんだ。


でも、何も言えなかったわたしが一番悪かった。

ごめんね、さようなら。




2022.8.7

誕生日翌日に書いた文章、悲しくて泣きながら夜な夜な書いた文章、そのまま。支離滅裂で何言ってるかわかんない。そんな気持ちまで伝わって欲しかった。
でもまだ付き合ってます。その後にも色々あったのでまた今度かけたらいいな。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?