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京都府・京都市紫竹【私の中の街・街の中の私】

今回の企画にちなんで、自分の住んでいた街の話を文章に書くことになった。大学生まで住んでいた街、私の生まれ育った街の話を書く。

だが、いざ書こうとなるとこれといった記憶がない、なんだか覚えてない。覚えているような覚えていないような不思議な感覚だ。

でも20数年は住んでいた街だし。きっとなにかがあるはずだ。これを機に頑張って思い出してみよう。

京都市の少し北の方、紫竹という地域に住んでいた。少し北に行けば上賀茂神社が、少し南に行けばおしゃれな街、北山がある。ちょうどその間、これといったものはない住宅街。でも生活に必要なものはなんでも揃うし、賀茂川も近い。大人にも子どもにも住みやすい街だと思う。

買い物といえばcoop。
うちの家ではcoopのことを生協さんと呼んでいた。生協さんで売っていた野菜ジュースが好きだった。にんじんのキャラクターの絵が書いてあった気がする。

生協さんの向かい側にはミッキーというおもちゃ屋さんがあって、買い物帰りにちょこっと寄るのが楽しみだった。
店前にあるONE PIECEのカードのガチャガチャをでエースのキラカードが当たって嬉しかった。2階にはミニ四駆のレールがあった。夏休みには必死になって男の子たちが群がっていた。

本屋さんもあった。あんまり愛想のないおばさんが働いていた。毎月の楽しみだったりぼんを、怖いおばさんに緊張しながら買いに行っていた。

紅華という中華屋さんもあった。出前もやっている街中華。母がご飯を作ることのできなかった時によく頼んでいたが、私はあまり好きではなかった。そんなに美味しくなかったのだ。しかしまずまずだった味がある日を境に美味しくなった。ラーメンも餃子も青椒肉絲も、中でも紅華飯という丼が本当に美味しい。ぜひ食べてみてほしい。

パン屋さんがたくさんあった。グランディール、ASANO、マリーフランス。休日に母とよく書いに出かけた。焼きたてのパンの香りが好きだった。毎回、空腹に任せて食べきれないほどのパンを買っていた。グランディールのスパイシーなベーコンがぎっしり詰まったハード系のパン、生ハムが挟まったパン。ASANOのチョココロネ、レーズンパン。マリーフランスのバタ子さん。どれも大好きだった。そういえばグランディールのいちごと生クリームのサンドウィッチを食べた時、下の歯が抜けたことがあったっけ。

お皿公園もあった。
お皿の形を模した大きな滑り台がメインの公園だ。
お皿公園って京都にしかないらしいね。あんなに面白い遊具を知らないなんてもったいない。
お皿型の滑り台を使って蟻地獄。鬼が坂を駆け上がり、ヘリの部分に座った人の足を掴んで引きずり下ろす遊びだ。傷だらけになりながらも思いっきり遊んだ。

あら、思い出そうとすれば意外と出てくるものだ。
よく通っていた銭湯でお風呂上がりに飲むセブンアップ。商店街のお祭りでだるま屋というおもちゃ屋さんが出していたくじ引きの屋台。はんこ屋さんの優しいおばあちゃん。カレーうどんが美味しい昔ながらのおうどん屋さん。全部全部好きだった。

そう、好きだったのだ。私はこの街が好きだった。20数年、家族と暮らしたこの街が好きだった。「だった」というのは今はもう好きではないという意味ではなく、あー好きだったんだ〜という再認識の「だった」だ。

思い出せなかったのは、きっとそれが当たり前すぎて私の中に根付いているから。忘れていたわけじゃないことを、私がちゃんとあの街で暮らしていたことを感じて安心した。

そこから少し離れて住む今も、私の中にあの街がある。


新開地ニューあそび場の創造
安住の地「ライトシティ」



日時:2024年2月9日(金) ~ 25日(日)
場所:新開地アートひろば

あたらしい街にやってきて思うこと。
見慣れない街灯、住宅の明かり。
どれもまだ自分の街じゃない。
いつしか私は住人を名乗り、自分が「街」の一部に変わる。
気が付けばその街が「自分自身」を作っている。

本企画のテーマは「街に馴染む」
安住の地劇団員が考えた関連企画や、訪れた人の手で変わっていく展示空間、そして新作の演劇作品を発表します。
リニューアルした新開地アートひろばで、
安住の地と一緒に、新しい街「ライトシティー」を考えてみませんか?

演劇公演『あかり。』

脚本:武田暢輝
演出:森脇康貴、武田暢輝
〈あらすじ〉
そこに街があった。私たちは街の中で、街の一部として生きていた。
その街に生まれた新生児・灯(あかり)の身体は光をまとっていた。
灯は身体が発光する以外は、どこにも異常はなかった。ただ、光り続けていた。
いつしか街のシンボルになった灯は、この街の一市民になることを夢見る。

詳細はこちら▶ ライトシティー特設ページ

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