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哲学と宗教と孫娘:Anizine

友人から聞いた話。

病室に宗教と哲学を研究していた90歳くらいのおじいちゃんと孫娘がいた。おじいちゃんはもうほとんど話すことができず、お迎えももうすぐだろう。仲の良かったおじいちゃんと孫娘は、最後に何か筆談でやり取りしていたようだ。

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葬儀が終わってから家族が筆談ノートを見つけ、最後のページを開く。

「さすがにおじいちゃんだね。哲学者だ」

「見せて。なんて書いてあるの」

「亡くなる直前に書いた一言が『無常観』だよ。おじいちゃんらしいよ」

孫娘は、黙ってみんなの話を聞いていた。家族の誰もおじいちゃんのことを理解していなかった。理解しようとしていなかった。

孫娘は最後の瞬間、ベッドに寝ているおじいちゃんにこうたずねたのだ。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。