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点を線につなぐ:Anizine

「お客さん、カメラマンですか」とタクシーに乗ったときに聞かれることが多い。いつも都内の車窓から写真を撮っているからだ。今日はかなり癖の強い雰囲気のドライバーに当たった。「これね、誰にも喋るなって言われているんですけどね」と聞いてもいないことを話し始める。絶対に自分の秘密を打ち明けたくないタイプのドライバーだ。

彼が言うには、アメリカの秘密の機関が日本の芸能界を牛耳っていて、この前の事件もその機関が絡んでいるのだという。「その事件っていうのがね」こちらは教えて欲しいとも何とも言っていないのだが、彼は話し続ける。私は他人の噂話や裏話と呼ばれるものを聞くのが苦手だ。できるだけそういったことを耳に入れたくないのは、自分が知り得なかったことを勝手に知識の片隅に置かれたくないからだ。

ドライバーはすがすがしいほどに、「自分は田舎者なので東京のお客さんの話を耳に挟むとワクワクするんですよ」と言った。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。