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縦と横に動こう。

とにかく「行動と体験を増やす」しかないのだろうと思った話。

あるとき、旅行代理店の窓口で客が店員と話すのを横で聞いていた。やや複雑なルートで行く航空券を希望していたのだが、窓口の女性は理解できなかったようだ。男性の客は「言ってることわかりませんか。もしあなたが同じ場所に行くとしたらどうしますか」と言う。

女性が「外国に行ったことがないのでわかりません」と答えたので、男性客は諦めたように帰って行った。これはどんな職種にも当てはまることだと思うんだけど「売っている人が売り物を知らない」という状況は皆無ではない。

もちろん旅行会社の社員が外国の都市すべてを熟知しているべき、とは思わないんだけど、彼女は旅行会社に勤めてはいるが、旅行には興味がないんだろうと思う。仕事はデスクで「チケットを売ること」だからだ。

昨日は、あるアジアの企業に関わる仕事の打ち合わせをしていた。広告では自分が興味を持ったことのない商品とばかり出会う。家だのクルマだの、オシャレなファッションだのを「欲しい人に薦める」ためには、自分があたかもそれを一昨日あたりに買おうとしていたくらい、リアルに考える必要がある。

だから欲しくないモノであっても、日常でそれが目についたら「これはどんな人が欲しいと思うのか」を観察したり考えたりする。人の家に行ったり、誰かのクルマに乗ったり、洋服の展示会で買っている人をジロジロ見ている。

意識さえあれば興味がある人と同じくらい情報を蓄積しておくことができる。「これが今回広告してもらう商品です」と言われたときに「ではこの商品の購買層を調べましょう、よっこらしょ」なんて言っていたら遅い。それでわかることなんか何ひとつない。データのみの、いわゆる「バカ・マーケティング」にしかならない。

自分が銀座や渋谷で働いてきた数十年間は、そこにいる様々な人を見てきた時間に他ならない。だから「これって渋谷っぽいよね」などと地方から最近出てきた人に言われても、まったく違いますよ、と判断できる。

ただ、自分が所属しているクラスタにしか興味を持っていないと、ボンヤリした空気は掴みにくい。渋谷と言えばクラブでしょ、109でしょ、というクラスタにはオーチャードホールはまったく見えていないし、反対からも同じことが言える。だからできるだけ多くのモノに目にとめて、できれば関わり合いを持つ体験や行動をするのを心がけている。

バーガーキングにも、星のついたフレンチにも行く。エコノミークラスもファーストクラスも、互いが「知らないから起きる偏見」を理解するために両方乗ってみる。

外国に行ったバックパッカーはほとんどの人が同じようなことを言うから退屈だ。その都市を横にスライスした場合、ある一定の地層としか関わらないから。逆に、縦と横を移動している人の話は例外なく面白い。横はどれだけ移動してもさほど変化はないけど、縦には劇的な違いがあるからだ。

縦と横に動こう。これしかないと思ってるよ。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。