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鏡を見てね:Anizine

フリーランサーとしての仕事は「振る舞い」にかかっていると言えます。大げさに言うとセルフ・ブランディングなのですが、仕事の技術や能力とは別に、その人と仕事をすると楽しいだろうか、という部分も半分あります。半分ですよ。ただ愛想がいいとか、打ち上げの飲み会を盛り上げるとかだけでは仕事が破綻しますから。

依頼される仕事は他人から見たそのひとの振る舞いで決まっている、という事実をあまり理解していない人がいます。特に今はソーシャルメディアで自分のことを発信していますから、そこで「この人はどんな人なのか」はニョジツに知られてしまうのです。ネットで日々いろんなことを書いていると嘘がつけなくなります。ひとつずつの出来事ではなく、無意識のグルーヴが伝わってしまいます。何かにつけて文句を書く人、自慢する人、ネームドロッパー、自分のサイズとはかけ離れた対象に向かって批判ばかりの人、などは仕事を依頼する側からすると敬遠したくなるのは明白なのですが、本人はまったく気づいていません。

シンプルなのは、影響力のある仕事や素晴らしい作品を次々にアップし続けることですが、それがない場合は必然的にどうでもいいことばかり書き連ねることになります。『人格のリアル』が出るのはここなんです。

何かを表明するときは、必ずモチベーションというものが存在します。たとえばベテランのオッサンが自分より若い人がどんどんいい仕事をしているのを知ると、「ああいうのがいいと思っている人がいるけど、全然ダメだね」などと言います。これは「自分にいい仕事が来ないのは頭に来る、俺の方が優秀なのに」というネガティブなモチベーションが書かせているのは誰の目にも明らかで、同じくらいいい仕事をして引っ張りだこの人なら、そんなことを不特定多数の誰かにアピールしなくてもいいからです。自分ではバレていないと思っている僻みの感情はどんな時にも他人にバレていますから、バレていないだろうと思っている様子が痛々しいのです。

現実はつねに自分の能力の鏡です。私という人を鏡で見たときに、素晴らしい仕事を依頼したくなるだろうか、という認知能力不足です。「この人と一緒に仕事をしたら楽しそうだな」と「この人とやったら文句を言われたり、つまんない愚痴を聞かされたり、求めてもいない教育的指導をされるんだろうな」と思われるかの違いには自覚しても自覚しきれないところがあります。オッサンというのは、ものすごく気をつけて自分を律したとしても、それで「まあまあウザい」くらいの着地点しかありません。

いや、むしろ!

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。