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15分の有名人:Anizine

ソーシャルメディアが始まった頃からの印象で言うと、ClubhouseやZOOMあたりで、Youtubeとはまたひとつ大きな変化が生まれたように思う。

簡単に言うと「手っ取り早い自己承認欲求の手段」なのかな。

誰でも、誰かに求められている人として振る舞う真似事ができるという意味。大昔にウォーホルが言っていたことの具体化なのかもしれない。当時はテレビなどのマスコミを指していたけど、今はネットという舞台が「ファクトリー」だ。

90年代後半にネットに何人かいたテキストベースのトリックスターのひとりが「法師丸」さんだった。今で言えば次から次へとバズる企画を炸裂させていたトップYouTuberのような存在。機会があってネットの人気者に実際にお目にかかってみると、当たり前だけどごく普通の温和な人だった。

法師丸さんの特徴はなんというか「平和なおふざけテイスト」で、確かうまい棒を大量に買い込んで、公園に集まった知らない人同士でただそれを食べるみたいなフラッシュモブ的なこともしていた。やっていることは今のYouTubeとまったく同じだと気づく。俺が彼を好きだったのは攻撃的でないところやヒューマニズムを感じるところだった。

すでにその頃、掲示板では攻撃的な人々が集まって「ネットとはこういうものだ」と、強調された暗黒面を確立し始めていた。法師丸さんはほのぼのさで特に目立っていたし、ネットでのインテリジェントな遊び方に大きなヒントをくれた人だった。とても感謝している。

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「誰でも15分間だけ有名になれる」というよく知られた言葉はテレビ時代のフレーズだけど、ネットではたったひとつのツイートがバズると「お前、有名人だな」と言われる。誰もが有名になりたいのだ、という欲求を手軽に満たしてくれるのがネットの便利なところなんだろう。それまでの旧来型社会は何かオーセンティックで突出した才能を持った人しか「有名」になることはできなかったが、今は「僕は有名人を目指している。何で有名なのかはまだ決めていない」というベクトルを自分で提示する。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。