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カタチを変える不安:Anizine

ヨーロッパの友人が外出しなくなるのをネットで見ていた。日本はそれからしばらく遅れて今の状況になったけど、未知のウィルスへの恐怖は、どれだけ長引くかわからない「経済的な不安」にだんだんカタチを変えていった。

しかし冷静に振り返って見ると会社を辞めてフリーランスになって20年、何の不自由もなく生活してこられたのは不思議としか思えない。そちらの方が奇跡的な幸運であり「運の前払い」は十分もらってきた。だから俺の場合、不安を持つなんて贅沢だと思ってあきらめられる。

毎日そういった「考えてもどうにもならないこと」が何十回も頭をよぎる。でも、運の前払いはもらったのだと理解できた瞬間からは、気持ちがとても楽になった。これでいいのだ。

幸い大きな病気もせず、健康に仕事ができている。それで50代まで何食わぬ顔でいられた以上に何を求めるというのか。人の不満は、自己評価と他人の評価とのズレにあるものだ。

別に謙虚さをアピールしたいわけじゃなく、俺はカジノの床で拾った一枚のコインが増えていって生きながらえて来たようなインチキ・ギャンブラーだとよくわかっているから、自己評価は限りなく低い。他人からの評価で生かしてもらったことだけで丸儲けなのだ。専門用語で言う、ハゲ丸儲け、である。

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「生活のレベル」という問題がある。値段などを見ないで美味しいモノを注文できるとか、飛行機でファーストクラスやビジネスクラスに乗るとかにはそれほど意味がなくて、もしお金がなくなったらラクチンに移動できる方法をやめればいい。そもそも毎月外国に遊びに行かなければいいし、狭い部屋に引っ越して、財布の中にあるお金で食べられるモノを選んで食べればいい。そこで、「あの頃と比べると、俺も落ちぶれたよなあ」なんて貧乏臭いことを思わなければいいだけだ。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。