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甲子園を目指すな:PDLB(無料記事)


しばらく前に、何かの模様が入ったゴールドのアクセサリーを見ました。説明の動画があったのですが、アイデアが面白かったのでメモしておきました。さてこのオーダーメイドの模様は何のデザインでしょうか。

住所を指定すると地図があらわれて、選んだエリアがそのまま切り出されてできあがるサービスでした。実物を見ていないのでアクセサリーとしての精度まではわかりませんが、素晴らしいアイデアだと思いました。自宅、思い出の場所、誰かへのプレゼント。「地図情報に意味がある」という発想が出てくるのも、Google mapなどの発達によるものでしょう。

この例のように、誰でも知っている、手に取れるものであっても「製品」にする考えには簡単に至らないはずですが、ここから想像は膨らみます。

そのアクセサリーから自宅の場所を特定され、ストーカーに狙われる、記憶喪失になった身元不明の人がこれをつけていて何かの手がかりになるなどのフィクションの小道具にもなりそうです。いいアイデアは二次的な発明を生むことがあり世界が広がります。今で言えば推理小説でスマホを使ったトリックなどがたくさんあると思います。これらはスマホ以前には想像できなかったことなので、二次的な世界が広がるのは意味があることです。

昨夜は日本を代表するふたりのアートディレクターと、「同年代の我々が育った環境と現状がいかに切り離されているか」について話しました。たとえば私たちが高校球児で甲子園を目指していたのだとしたら、今の若者は甲子園を経なくてもプロ野球選手になれる可能性があり、さらに言えば、野球経験者でさえなくてもいいし、別の概念の甲子園が数百もある、といった環境なのです。

これはただの変化ですから別に嘆いているわけではありませんが、変化を見逃すと、「君たちも甲子園を目指したまえ」と、おかしなアドバイスをしてしまうことになるのでしょう。

今回はひとつの例として地図のアクセサリーの話をしました。世界中の地図がインプットされた地図などなかった、たとえあったとしても軍事機密レベルで誰もがアクセスできなかった、データから精密に金属を切り出す工作機がなかった、というさまざまな技術的な条件をクリアしている時代だから実現したことです。目の前にあるテクノロジーをいかにして使うか。それが大事なのでしょう。

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